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RED

作者:ロッカ
「おお、これはゼルドギア殿。今回の戦場でのご活躍、見事なものでしたな。さすがは黒縄封こくじょうほう軍。陛下の覚えもめでたく・・・」

おっさん、うるせえよ。こっちはムサイ戦場から帰って来たばっかで疲れてんだよ。わかる?家にも帰ってねえし。つうか家っつっても宿舎だけどな!男ばっかの!しかもさぁ、その陛下に今から挨拶という名の・・・
あーだめだな、だめよ俺。八つ当たりはいかんよ。当たっても仕方ないっしょ。
俺は何の罪も、しかし意味もない事も喋るおっさん貴族を「イラッときてゴメンネ」という感じで見た。あくまでゴメンネって感じね。俺的にね。んが。

「あっ、ああぁああぁ!ここここれはむむ無駄話をば。ももももも申し訳ないっ!」

おっさん貴族は俺が彼を見た瞬間、蒼白になってどもりながら礼をすると、優雅とは到底言えない動きで走って行ってしまった。
あ、転んだ。

・・・・・・・・・・またか。

「隊長、脅さないで下さいよ。・・・今夜からあの人は安眠できないですよ。悪夢を見ますね。」
「・・・・脅してなどいない。」

返事を返すと、向こうからやって来ていたメイドさんがびくんっ!として押してたワゴンを引っ繰り返した。
・・・こっちもかい。

「大丈夫?誰か呼ぼうか?うちの隊長がゴメンネ?」

え?俺のせいなの?マジで?喋っただけなのに。

「そそそそそそんんんな!滅相もございません事です!」

ちょっとオイコラ的な気分が漏れたのだろうか。メイドさんはものすごいどもりながら何かオカシナ敬語で返した。

「いいんだよ。はい。立てる?」

ディーンは横倒しになったワゴンを起こしてやり、メイドさんに手を差し伸べて立たせてあげた。
その姿は王子様がナンチャラなフラグが立ちそうな程様になってる。
メイドさんもポッなんて頬を赤らめてディーンを見ている。
なんだコレ。

「あっ、グラントン様、いいですそんな」
「いいからいいから。」
「私の仕事ですし。」
「割れたお皿だってあるんだよ?傷でもついたら大変だ。」
「でも・・・」
「可愛い女の子はもっと甘えないと。」
「そんな可愛いだなんて・・・」

だからなんだコレ。
俺は舌打ちでもしたい気分になりながらこの場を去った。「待って下さいよー」とか声が聞こえるが無視よ無視!リア充は地獄に堕ちろ!へっ男がそんな恥ずかしい事ペラペラ喋んじゃないよ。軍人だろお前。シャキッとせんかい!女の子と普通に話せるからって決して羨ましくなんてないぞコラ!・・・俺だってな!俺だって手伝ってあげたいし、何気に甘い台詞の一つや二つほざいてみたいよ!だけどな!だけど手を差し伸べるのは勿論、体の向きを変えるのも目を向ける事さえ断じてしてはならない!何故ならそんな事をしようものなら、泣きながら土下座されるか恐慌を起こされるか気絶されるかの・・・どちらかだからだ!女子の傍に近寄る事さえ俺にはミッションインポッシブル!
それに見ろコレ。
俺が歩くとすれ違う人、皆が俯き体を小さくして左右に割れていく。それを今更などと思いながら小さくため息なんかついてみる。

あの皆さん、そんなに俺・・・・・怖いですか。

****

俺ははっきりいって転生者だ。日本のとある市のとある町に住んでた普通の高校生だった。
夏休みに入って最初の週に事故で死んじゃったんだけどね。
いやーあれはとんでもない痛みだったな。死ぬほどのものだったんだから当たり前だけど、こっちの世界に来てからもあの痛みを超えるほどの目にはまだ、幸いな事にあってない。
おっ話がずれた。
そんなワケで死んだ俺が気付いてみると灰色の雲っぽいモノの中に居た。外なのか室内なのかわからん場所に呆然と佇んでいると俺ンチのペット、タマ(猫。オス。5才)が現れこう言った。

「おっす。」

・・・・・・・・・・・・・・・。

「おっす。」
「お、おっす。」

取り合えず返しとけ。
タマはタマじゃなく俺の思念が見せているのだそうだ。違和感ありまくりだが可愛いので許す。

「これからお前の置かれている状況を説明するけど・・・最初に言っておく事がある。」
「な、なんだよ。」
「ごめんなさい。」
「どういう事!」

タマによると俺は自分の世界から別の次元とやらに魂が転移してしまったらしい。経緯はこうだ。

①たまは一生を終えた魂を集める仕事をしている。
②俺が死んだ時、たまたま二日酔いでゲロッているところだった。
③なので即死のショックでふらふらして、別の次元に落ちてった俺に気付かなかった。

「以上だ。」
「ふざけんな!」

イヤ落ち着け俺。突っ込んでる場合じゃない。まず考える事があるだろ。
―――――――これからどうなるんだろう。
・・・まっまさかこのパターンだと消滅なんて事に・・・・
事の重大さに俺が青ざめたのがわかったのかタマは、白くてふわふわの前足を肩に乗せて慰めてくれた。
・・・・・・・・癒される。ってこいつのせいだった!
タマは続けてこう言った。

「心配すんなよ。このままじゃお前は消えるしかないんだけど、(やっぱりかっ!)それじゃあまりにも不憫だからよ(お前の仕業だろ!)新しい世界と肉体をやるよ。そこでもう一回人生やり直して来い。」

え・・・・マジでー!!

「ついでにいろいろ付けてやる。お前には本当にすまない事をしたからな。」
「・・・いいよそんなモン。別の世界で地道に頑張るさ。」
「・・・・お前はもう二度と他の奴らには会えない。」
「そりゃそうだろ。死んだんだから。」
「いや、そういう事じゃない。」
「・・・・どういう事だよ。」
「前世とか来世とか聞いた事あるだろ?あれは本当なんだ。魂は何度生まれ変わっても同じ魂達と巡り合い関わり合いながら過ごしていくモノなんだ。でもそれは同じ世界に居る事が・・・」

・・・・・・・ああ、そうか。
父さんや母さん、弟達の顔が浮かぶ。
一緒にバカやってた友達や好きだった女の子にも・・・

もう会えない。

死んでもまた生まれ変わって何時か違う場所で会えるっていうのと、もう絶対会えないっていうのは・・・なかなかくるもんがあるな。
あー俺、弟達の宿題見てやる約束してたっけなぁ・・・ハハ・・何言ってんだ、俺死んじまってるだって。それどころかもう・・・
やべぇ、ちょっと泣きそうになってきた。
タマは黙ってしまった俺に何にも言わず寄り添い続けた。
ああ、タマにも会えないんだな。
辛いよ。物凄く辛い。失って初めてわかるってこういう事なんだな。
・・・でも何時までもこうしてはいられない。消滅するのが嫌なら前に進むだけだ。


「新しい世界つっても、いいのかタマ。その世界の理とかがあるんじゃ。俺みたいな余所モン行って大丈夫か。苛められないだろうな。」

シリアスな後でちっさいとか言うな。大事です。

「そこンとこは大丈夫。話しつけてあるから。うーん・・・じゃあそうだな、その世界に行ったら善行でも積んでくれよ。」

善行?
はっ!ま、まさか世界を救え!とか魔王を倒せ!とか救う世界の主な人とか勇ましい者とかがなる職業が待っているんじゃないだろうな!無理だぞ!ビビりだし、何よりそんな面倒な事!

「俺、道に落ちてるゴミを拾うとか道案内ぐらいしかできないぞ。」

牽制牽制。

「それでいいよ。」

いいんだ!

「お前のできる範囲でいいんだよ。固く考えるな。」

うっ・・タマ・・・ありがとう。こうなったのも全部お前のせいだが俺なりに頑張るよ。

「心の準備はいいか?」
「・・・ああ。あ、いろいろ付けるって何をだ?」
「今にわかるよ。じゃあな。楽しく暮らせよ。」

おう、じゃあな。
そう言って俺とタマは別れた。
俺に降りかかった事はどうにかなりそうなほど辛いものだったがしょうがない。代わり、と言っては悪いが新しい世界で繋がりを築いていこう。

****

と、まぁこれが俺の事情なんだけど・・・・・
確かにな、確かにタマはいろいろ付けてくれたよ。
頑丈を通り越して鉄のように強い体。
神速?と勘違いしそうな程の反射神経。
握力も腕力も脚力もパネぇ。
加えて調子に乗った俺はそれらを強化してしまった。いやあの・・・修行って憧れないか?君達。
このままだと俺には例のフラグが立ちそうな予感がするだろ?
が、しかし!
タマはやってくれたよ。しかもとんでもない方向にな!

****

「おはようレッド・・・っうわっああぁああ!」

これはこの世界での俺の父親の悲鳴。
親父殿、わざとじゃないのはわかるが朝の挨拶に悲鳴はないだろ。毎朝毎朝。つうかいい加減慣れろよ。もう17年の付き合いなんだし。
でもまぁ・・・仕方ないか。こんなんじゃなぁ・・・・

俺の顔ってさぁ・・・超絶怖いんだ。
最初はな、子供だし、なかなか鋭い眼をしているなとか思ってたんですよ。それが大きくなるにつれて目付き悪いなぁからあれこれガン飛ばしてない?睨んでるつもりないけど睨んでる?眉間の皺って常時あるもんだっけに変わるまでそう時間は掛からなかった。
とにかくね、ほんと怖いの。
もうどれくらい怖いかっていうと声を掛けた人からまともに返事返ってきた事ないほど怖い。
俺が暮らしているところは田舎の方の小さな町なんだけど、俺が歩くと人が割れる。子供が引きつけ起こす。視線があった事もない。皆俯いてるんで旋毛つむじしか見た事ない(俺は背が高い。大体2m越え。・・・・タマよ、悪意を感じるんだが?)。もちろん女の子と喋った事もない。
しかもしかもだ。誰とも友好的な関係を築けずに父親だけを話し相手に(母親だが俺が2歳の時に他界してしまった)していたせいなのかコミュニケーション能力が皆無と言っていいほどないのだ!
中の俺はこんなに友好的なんだけどなぁ。
口下手、無口、無表情、鉄仮面。
おまけに俺の色彩といったら。
頭髪は真っ赤な鮮血色、肌は浅黒い。そして何より・・・目だ。目が怖い。俺の目は黒なんだが何故か虹彩が黄色。いわゆるキラービー色なんです。DNAおかしくね?これ絶対上の方の意図を感じるんだけど?
うーむ、このままでいくと逆に勇ましい者の職業の人に討ち取られるフラグが立ちそうだ。
やべぇ。

どうにかしないとと人知れず焦っていると(表情にでないからな)父親が倒れた。
昔から滅茶苦茶な生活してるなと思っていたがとうとうその無理が祟った様だ。決して俺の顔が怖いから、それを見続けたから寿命が縮んだって事ではないはずだ!
死期を悟った親父殿は俺を枕元に呼んでこう言った。

「相変わらず顔が怖いなレッド(死にかけにそれか親父殿・・・)いやそう言う事を言うために呼んだのではない(当たり前だ!)。私はお前の今後の行く末だけが心残りだ。このままだと周りから悪魔だの魔王だのと恐れられ、勘違いした野郎に言い掛かりを付けられて退治されそうなのを逆に返り討ちになんかしちゃってさらに悪の伝説を築いてしまいそうなお前に提案がある。」

親父殿・・・一応親なんだな、俺の事をよく知ってる。だがもっと言い方があると思うぞぉ。

「・・・・聞きましょう。」
「相変わらず地獄の底からやって来たような声だな(おおおお!)それ地声だよね?(いいいい!)んでな、私の知り合いに国王軍の指揮官をしているお方がいる。紹介してやるからお前軍隊に入れ。」

なぬ!?

「お前の極端に怖い顔と人間離れした肉体を生かすにはこの職業を置いて他はない!」
「いや・・・俺は親父殿の跡を継いで園芸家になり」
「今こそ!お前の天賦の才を開花させる時だ!その類を見ない恐怖な顔面と反則な腕力で人々を守る壁となれ!準備はしてあるから!そこ!その箪笥の二番目くらいに入れといたはず!じゃ!頑張れよ!」

がくっ・・・・
親父殿は言うだけ言うと力尽きた。
「じゃ!」じゃねぇよ!あと一々怖い怖い連呼するな!気にしてんだからな!ったく最後の最後までそんな調子でアンタは・・・・・・もっと長生きして欲しかったよ親父殿。俺もう一人ぼっちじゃねぇか。ぐすん。
俺と同じく(真逆な性格だったが)、人付き合いの悪い親父殿の葬儀にはそれでも幾人かの方達が来てくれ、周囲に人家のない、葬儀の仕方も分からない俺は手伝って貰いながら何とかやり遂げた。有り難い事です。しかし礼を言ってるのに卒倒はないんじゃないでしょうか。

「・・・・行くか。」

数日後、家や土地の事を知り合いの人に託し俺は王都に向かった。
親父殿の言う事も一理ある。
本当は軍隊なんて殺伐とした職業やだけど・・・正直向いてるだろう。
やってみるかと軽い気持ちで出てきた俺だが今は軍人という職業を真剣に考えている。
何故なら王都に至るまでの町や村の盗賊等や山賊、強盗とみられる悪な方々が俺を見た瞬間、

「すいませんでした!どうかっどうか命ばかりはお助け下さい!もう悪い事しませんから!!」

腰を抜かしながら改心したから。見ただけで。俺を。俺をね。
・・・・・いいんだ。地域の人々にとってよかったじゃないか。何か言ったわけでもしたわけでもないのに。この顔面も役に立つじゃないか。うん。遠巻きにお礼だって言われたし。震える手から賞金だって貰えたよ。は?泣いてねぇよ。いや全然泣いてねぇよ。空は快晴だが俺の心は豪雨じゃねぇよ。うっうっ・・
そんなこんなで王都に着いた俺は国王軍に入り、持って生まれた(顔以外は)チートな能力と鍛錬による鍛えた体で瞬く間に頭角を現し、気付けば13年の月日が流れ軍の一つを任されるまでになった。
そして今、陛下に戦場から帰還した挨拶って奴をしている。
と言ってももっぱら喋っているのは副官のディーンで俺は黙って跪いているだけ。

「時に陛下恐れながら言上したい事があります。」
「ふむ・・・・珍しいな。申してみよ。」
「は・・・・」

ディーンは下げていた顔を上げ陛下を見据えた。

「・・・・此度の戦い・・・もうお納め下さい。」
「なに!」

陛下が驚いて玉座から立ち上がった。周りに居る臣下の皆さんもどよめきを隠せない。

「戦争が始まって早1年になります。長引く戦いは多くの命が失われ、兵士達の士気も著しく低下、戦場になっている地では荒廃頻り、復興にも時間が掛かりましょう。隣国との戦いはもう潮時にございます。」

おおー言い切った!えらいぞー噛まなかったし。
俺だったら噛みまくってるね、言い切るまで10分は掛かるね。
とか何とか思ってると

「このっ・・・・無礼者が!分を弁えぬか!愚か者!」

臣下の一人・・・えーと名前知らん。その人が白い髭を波立たせ、顔を真っ赤にしながら怒鳴った。

「フェルナン伯爵。」

おっそういう名前かー伯爵って一番偉かったけ。

「無礼は百も承知です。しかし今のこの状況を陛下にいや、皆さまにも知って戴きたいのです。これ以上の戦いは無益なばかりでなく双方の国にとって甚大な損害にしかなりません。しかるべき使者を立て、和平への道を」
「黙れ青二才が!軍人如きが我らの何を知っているというのだ!この戦いには歴とした理由が」
「その歴とした理由ですが少々おかしな点があります。」

ディーンが遮られたのを遮り返した。お前スゲーよ。俺には無理よ無理。遮って何か言うより黙って嵐を過ごす派だからね。それにしても伯爵、頭の血管切れないかしら。国の何を知ってるか知らんがご自分の健康具合は知ってるんだろうか。
俺が余計な心配をしている間にディーンが淡々と陛下に言上していく。

「この戦いの始まりはセルト王国が我が国の国境を犯した事が発端となっています。」
「いかにも」
「しかし、何処其処どこそこの、という事はわかっておりますが他の詳細な部分はあやふやで当時の資料もなく、また関係者も全員行方不明か戦死、または事故により死亡しています・・・・何か意図的なものがあるように感じますが。それに、戦いが始まるとまるであらかじめ準備があったかの様に白縄戒はくじょうかい軍が参上していますが、国境の件では彼らが討伐隊として出張っている事はご存知ですか。また、軍隊が留守なのをいい事に国内では違法な薬品が出回り国民に害を及ぼし、組織化された賊が徘徊しています・・・主にある特定の領地で。」
「・・・・何が言いたい。」

あ、陛下ちょっと怒った?
でもね、俺らが戦場に行くのを見計らったようにそういう悪な方々が増えてんのは事実だよ。しかも一番頻繁なのは王都だよ。



「この戦い―――謀られたものかもしれませぬ。」



「・・・何をっ!」
「おのれグラントン!貴様・・・何を言っているのかわかっているのか!」
「たかが軍人如きがあらぬ言い掛かりを付けおって!」
「臆したか黒縄封軍!」
「これ以上の戯言は陛下のお耳汚しだ!衛兵!この者をひっ捕ら」

よっこいしょ。
俺が跪いた体をゆっくり起こすと口角泡を飛ばしてディーンを糾弾する声が一斉に止んだ。
俺は左右ずらりと並んだお貴族様達をひとーり一人、余さず見渡す。
サァーと血の気が引いていく音がね聞こえたよ。確かにね。中には俺と目が合った瞬間グキッと音がしそうなほどおもくそ首を横向けた奴もいた。
ていうかディーンよ。何故お前まで青ざめてるんだ?何気に傷つくぞ。
俺は最後、陛下をさっきのディーンと同じ様に見据えた。
うむ。さすが陛下だ。上に立つ者として俺から目を逸らさず顔も俯けず気絶する事もなく俺と目を合わせている。顔、蒼白だけど。目も潤んでるけど。口も戦慄いてるけど。体も小刻みに揺れてっけど。
・・・・・上に立つってさ、辛い事あるよね。俺がその原因だけど。てへ。
たっぷり1分間は見詰め合った後 (陛下は今にも気絶しそうです)、俺はこの、キンキラキンの謁見の間に入ってきて初めて口を開いた。

「陛下・・・ご決断を。」

結果はね、うん。無事終戦の運びとなりましたよ。よかったよかった。前線の兵士達の命が掛かってるからね。俺も一隊長として頑張らんと。

「さすがですね、隊長。案の定私がどれだけ言っても無駄でしたが、隊長の一睨みで万事解決でした。いろいろ妨害工作もありましたがこれで無駄に戦死者が出なくて済みます。」

ちょ、おまっ、失礼だな!睨んでなんかいねぇーよ!見ただけ!見ーたーだーけ!

「陛下の英断だ。」
「いやいや、それを言わせたのは絶対隊長ですよ。周りの馬鹿共が石化しないのが不思議なくらいでした。いやぁ、いい睨みっぷりでした。」
「睨んでなどいない」
「いや睨んでましたよ。がっつりやってました。ジェノサイドされるんじゃないかと思いました。」
「・・・・・・・。」

まっいっか!


****

終戦したから戻ってこーいと通達やらして後片づけ中です。

ここで俺の部下・・・超ハイスペックな部下さん達を紹介しよう。
まず、副隊長のディーン・グラントン。
実はある王国の第二王子なんだが俺と御前試合をした際、「貴方のような方を待っていました。私を貴方の配下に加えて下さい」と血迷った事を言われ、断っても断ってもストーカーのように付け回され、俺んちの前で一か月居座りこまれ、根を上げた俺が隊に入れた変わり者だ。
王子様なのにすごく気さくで顔も凛々しさと爽やかさが同居している。俺の隊でも(主に女性に)1、2を争う人気者だ。でもこいつの腹が魔ックロクロスケなのを俺の隊は知っている。ちなみにコイツの本当の身分を知っているのは俺だけだ。
次にバイゼン・バック。
元は大きな山賊の頭だったんだが俺が討伐した際「あんたの強さに惚れたぜ!きっと役に立って見せるからよぉ!俺を仲間にしてくれ!」などと迷惑千万な事を言われた・・・。
コイツも断っても断ってしつっこく食らいついてくんの。しかも自前の配下連れてきやがった。俺にどうせよと。いやこっち見ないで?そんなごついゴリラ顔でお願いされてもドンドン引きだから。俺にお願いポーズしていいのは女の子だけ!
まぁ、結局負けたんだけどさ。だって泣くんだもん。ちなみにこいつらの罪はディーンが裏から手廻して1年の禁固刑と多額の罰金で済ましたよー。
次にロウコ。
コイツは元暗殺者です。俺の命を狙ってきたのを10回ぐらい撃退しました。すると「依頼主リチャード・サインスを殺してきました(あんにゃろ、お前だったんか。・・・・あれ?殺した?)。もう暗殺者としてやっていけないので貴方の隊で雇って下さい」と無茶ブリかまされました。
いや知らねぇよ。野となれ山となれよ。俺んとこには来んじゃねぇよ。暗殺者って暗殺する人でしょ?そんな怖いの・・・と渋い顔してたら「貴方の隊に入れてくれるまで他人を暗殺しに」よっしゃ許す!入ってよし!ディーンがいいように使うだろ!丸投げだが致し方あるまい!
次に・・・・前川兵馬。
視察中に川からどんぶらこしてた。そのままスルーするわけにもいかず助けたら「命の恩人でござる。拙者貴方の様なお方を探しておった。我が主君になって戴きたい」なんて言われた。嫌です。
速攻で断ったら腹切るとか言い出した!・・・・仕方ないので虚ろな目で入隊を許した・・・。
もうわかると思うけど・・・なんとなんとコイツは戦国時代の侍だ。そう異世界トリップって奴だ。すごいなーこんなんほんとにあるんだね。でももうちょっとテンパッてみようとか思わんのかな。すぐ主君みつけるとかってどうなの。なんでそんな馴染みいいの。えっもうこの世界の言葉覚えた?・・・俺がテンパリそうなんですが。
というか、タマ・・・またお前の仕業じゃねぇだろうな?断じて違うよな!なっ!・・・・なっ!
次にアレクシア・スフィア。
女性です。高位貴族のお嬢様でしたが幼いころから武芸に秀でていて、周囲の反対を押し切り身一つで軍隊に入ったは変りも・・・ゴホンゴホン、思ったよりも軍隊が男性社会で、どうにも馴染めず苦悩していたのを俺が隊に誘いました。
いや、下心ないよ。ないっつったらないよ。いやちょっとあるかもしんないけどどうこうしようとは思わない。振られたら気まずいじゃん。いいんだ俺。愛より和を取るんだ。
誘ったはいいけど一分隊 (一般的に7名ないし10名の隊)連れてきやがった。
いやあのね?確かに誘ったのは俺だよ?でもお友達連れてきていいとは言ってないよね?全然言ってないよね?ていうか君達いいのか?この俺の隊だよ?見ろ部下達の凶暴そうな顔を。迷いはないのか。いやあってくれ。「ゼルドギア様。わたくし達ゼルドギア様に拾って戴き感謝の念に言葉もありません。これからは身命を賭して貴方様のために戦います。」いや国のために戦おうよ。俺しがない園芸家の息子なんです。コラコラ君達も頭上げなさい。此処どこだと思ってんの。往来ですよ?王都のド真ん中、中心街!周りから俺が、この俺が、どんな目で、ミラレテルトオモッテンデスカァァァアアア

まぁ、これが俺の部下の一部です。他にもどこぞの騎士長様とか(自国はどうした)余所の隊の軍師 (いくら上官がバカだからってアンタね)とか、名うての賞金稼ぎ(俺の首には掛かってないぞ)とか奇妙奇天烈、いや斬新、えーと個性的過ぎるのがいるんですけどもう説明したくない。

俺は!俺はね!本当はこんな仕事辞めて田舎帰りたいの!親父殿の後を継いで園芸家になりたいんだ!そこでね!?可愛い奥さんと可愛い子供2人くらいでさ!普通にね!普通にだよ!?静かに暮したいんだ!そこ!無理無理とか言うな!俺の夢なんだぞ!実現率200%不可能でも男は誰でもドリーマー!!
・・・・・・ハァ。自分で言ってりゃ世話ねぇよな。

タマ・・・・元気か?
俺は何とかかんとか生きてるよ。
想像してたのとはかなり違った人生歩んでっけどな。
でもまぁ、それなりに楽しんでるよ。
しかし超個性的な部下さん達より目立つ俺の怖さって何スペックなの。
そこらへんお前と膝詰めで話したいからそこ座んなさい。
・・・・・現実逃避って楽しいよな。空しくもあるけど。

タマが正座している場面を思い浮かべ、内心ニヤニヤしている俺が執務室でズズッと茶を飲んでいる時だった。
バターン!!
執務室のドアが乱暴に開けられ、必死の形相で現れたバイゼンが言い放つ。

「たいちょぉおお!男色家ってマジですか!!!」

タマ・・・楽しく暮らしてるってアレ・・・撤回していいか。
息抜き・・・かな?

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