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この手を伸ばせば...
作:あみ


伊丹空港
丁度今、平次は東京に向かおうとしている。
空港には彼の両親、少し遅れて見送りに来た大滝警部が居た。
和葉は平次に「さよなら」を言うのが怖くて太い柱の裏に隠れている。
その張本人は全く彼女に気付かず、工藤新一にメールを打っている所だった。

平次・・ とうとう行ってまうんか・・・

和葉は切ない眼差しで平次をそっと眺めた。
こうやって彼を見る事が当たり前だと思っていたのに。
これからはもうこうする当然の事も出来なくなる。

「平次、しっかりしぃや。何かあったらちゃんと連絡するんやで?」

静華が平次にそう叩き込んでいる。
こうやって、母親の言葉をダルそうに聞いている彼の姿も 当分見られない。

「(あーあ・・ こんな後悔するなら、アタシも東京の大学受けとくんやった・・)」

和葉は、自分が受験の際にした決断に少し後悔した。
あそこで平次と同じ学校を受けていれば・・
どうせ夢も無いのだし、それなら取り敢えずでも彼に着いていけば良かったと思った。

空港にアナウンスが流れる。
平次はもうあと10分もしないうちに行ってしまう。
和葉はギュッとお守りを握りしめた。

「(そういえば平次の奴、ちゃんとお守り持ってるんやろか・・)」

其の事が、和葉は心配になった。

目の前に見える、幸せそうな家族。
その隣には、重そうな荷物を引きずって歩く恋人達。
夢を抱えて旅立つこの場所で、こんなに溜息ばかり付いている女の子は和葉位だろう。
振り返ると平次達が見える。

「あれ?和葉ちゃんは・・どうしたんや?」

大滝警部に自分の名前を出され、和葉はドキっとした。
其の言葉を聞いて、平次が返す返事を早く聞きたかった。

「ああ・・・あいつ・・何も言わんかった」

「どういう事なん?・・平次」

平次の答えに静華が直ぐ口を加えた。

「俺が大阪に行く言うてから ずっと口利いてへんっちゅー事や」

「何で?何かあったん?」

「別に・・オカンが心配するような事ちゃうから・・。」

この二人の遣り取りは和葉にもしっかりと聞こえていた。
口を利いて無いのは、ただ和葉が話し掛けないだけ。
平次から、東京に行く と聞いてから、寂しすぎて喋っていない。
学校を卒業し、話す機会が減ったというのも、理由の一つだった。

「平次・・」

平蔵が彼を呼び止める所までは、和葉にも聞こえた。
ただ、その後に空港のアナウンスが再び入ったため、彼女には何も聞こえなくなった。

「(・・・ま 人の話立ち聞きなんて、やる方がアカンのやからしゃーないか・・)」

和葉は柱に靠れかかって、遠くに見える時計で時間を確認した。
アナウンスが言った通り、そろそろ平次と別れの時間だ。


「ほな、行ってくるわ。見送りは此処まででええから」

平次はそう言って、三人の元から離れた。
そんな彼を引きとめたのが、静華だった。

「平次、ちょっと待ちぃ」

平次が振り返ると、深刻そうな顔で問い掛けた。

「あんた、和葉ちゃんの事・・本間はどう思てんの・・?」

真っすぐに息子の事を見つめる。
平蔵と大滝警部も、答えを求めるような眼で平次を見た。

「そんなんオカンには言われへんな。あいつにしか言わへん。」

「・・・あんたも成長したなあ」

そて静華は平次をじっと見る。

「オカンが言うなら そうなんちゃうか?」

帽子を被り直して平次は去って行った。


“平次が帽子かぶり直したらスイッチオン!エンジン全開なんやねん”
自分が言った言葉が、和葉の頭を駆け巡る。

「(何でスイッチオンやねん・・)」


そう思った瞬間、和葉は走りだしていた。
自分でも驚いてしまう位 平次への想いの様に、真っ直ぐに・・。
三人の側を通り過ぎると、静華は微かに笑みを浮かべた。


「平次!!!!!!」

和葉の声に、平次は振り返った。
彼の視線の先には、最後に一番逢いたい人。

「遅いわ! 何しとったんじゃ、ボケ!!」

ボケ アホ は二人の隠れた想いを現す言葉。
お互いに其れはもう分かり合っていたのかもしれない。

「ずっと其処におった。」

「盗み聞きしとったんか、お前も太刀悪いやっちゃなあ」

「そんなんちゃうもん!」

―・・言えへんかっただけやもん。
怖かったんや・・平次が離れていくのが・・・―


「あたしにしか言われへん事って・・・何なん?」

和葉はさっきまで聞いていた、静華と平次の会話を思い出して言った。
彼は聞かれているとも思っていなかったので、返事のしようが無い。

「ほら! 飛行機乗らなアカン時間になってしもてるやん! 何なん・・?其れ」

「あー・・それはやなあ・・その・・・」

平次は言いづらそうにしていた。
しかし和葉は絶えず問いかける。

「其れは、お前が東京来た時にでも教えたるわ!!そろそろ行くさかいな」

「何やねん其の言い草!もう東京者みたいな言い方して!」

「どこ行っても俺は東京者にはならへんで・・。」

和葉の戦意は喪失した。
どれだけツッコミを入れられても、アホと言われても 其れが二人の在り方。
今みたいに、たまに平次が見せる真面目な顔に、和葉は何度言葉を失っただろう。

「ほな! またメールとかしたるから」

「したる て何やねん。したるって・・。」

和葉の呟きは平次に届かなかった。
其れでも良い。
この一言が平次に届いていれば。










「行ってらっしゃい!!!」


告白は出来なかったけど・・それでも良かった。

和葉と平次は「好き」という言葉では無く
普段の一言一言で繋がっているのだから。








平次...
アタシはまだ側にあんたがおると思てんで..
だって、この手を伸ばせば……
平次に届くような気がするから。


駄作ですみませんorz
初めての短編、初めての純平和で、下手すぎますね;
やっぱり、短い中で全てを書き尽さないといけないので、短編は難しいです。
あと、普段純平和を書いていない者ですので、これも苦労しました。
この小説は、普段のギトギト(?)してるあたしの小説と違うので
軽い気持ちで読んで頂けたら嬉しいと思って書きました。
また短編も書こうと思ってますので、よろしくお願いします。笑













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