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大好き!
作:七海 華



第五話(後編) ずっと一緒。


 放課後、人気の少ない図書館の一番奥の席に、俺は舞子と向き合う形で座った。
「国語は今のままで問題ないと思う。ただ、つまらないところでのミスが多い。問題をよく読んで、もっと簡潔に答えるようにしろ」
「うん」
 神妙な面持ちの舞子に、A四の用紙を差し出す。
「それから社会。おまえ、日本史はいけてるけど、世界史がだめみたいだからな。冬期講習で教わった、今年出そうな箇所を流れに沿ってまとめてきた。それと地理も。とにかくこれを覚えろ。いいな」
「これ……舞子のために」
 受け取った用紙を見つめる舞子の瞳が、みるみるうちに潤んできた。
「気にするな。自分の復習もかねてだから」
「ありがとう、優希君! このプリントを暗記すれば完璧だね。舞子頑張る!」
 満面の笑みで、舞子は胸の高さで握り拳を作った。
「まだ算数があるだろう」
 間髪入れずに告げた言葉に、身体が硬くなるのがはっきりと分かった。
「でも、今からやっても算数は……」
 言葉を濁す舞子の目線の先に、答案用紙を滑り込ませる。
「舞子、問八やってみろ」
「無理だよ! 問七が解けなかったんだよ!」
 顔を上げた舞子は、驚いた表情で否定の言葉を口にした。
「いいからやってみろ」
 幾分低めのトーンに、舞子は今にも泣き出しそうな表情で、渋々問題にとりかかった。
 待つこと数分。
「できた!」
 歓喜の声と共に、晴れやかに顔を上げた。得意げに差し出された答案用紙を受け取り、答えを確認する。
「正解」
「本当に?」
「これでわかっただろう」
「えっ?」
 疑問符を浮かべる舞子に、俺は小さなため息をもらした。
「おまえ、順番通りに問題解いてるだろう」
「うっ、うん」
「そして問七でつまづいた」
「うん」
「だから問七から先の問題には手をつけていない。違うか」
「……うん」
「いいか、舞子。できなかったらとばせ。なにもばか正直に、順番通りに解く必要はないんだからな」
「わかった」
「算数と理科は、放課後と休日を使って俺が教える」
「理科だけっていうのは……だめかな」
「だめだ」
 恐る恐る尋ねる舞子に、きっぱりと言い切る。
「もしこのままにしておいたら中学で困るだろう。そして三年後。今度は高校入試で同じ事態に陥る。そうならないための勉強だ」
「優希君……そんな先のことまで考えてくれてたんだ」
「あたりまえだろう。舞子とは、ずっと一緒にいるんだから」
「ずっと……一緒」
「そうだ」
 そのためなら、俺はどんな努力も苦労もいとわない。
「ずっと一緒だ」
「うん」
 繰り返した言葉に、舞子は眦に涙を浮かべ嬉しそうに微笑んだ。
 その微笑みは、真夏の太陽に向かって咲く向日葵のように鮮やかで、そのまっすぐさに、心から大切にしたいと思った。












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