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大好き!
作:七海 華



第十七話 ずっと。(前編)


 ラッキーなことに、私は一番仲の良い、香苗ちゃんともクラスが一緒になった。登下校は優希君とだけど、お弁当は香苗ちゃんと食べることになっている。友達同士の付き合いも大切だから、というのが優希君の意見だ。
 その配慮のお陰で、香苗ちゃんから、付き合いが悪くなったと言われたことはない。ありがたい話だ。
「おっ、早速スカウトに来てるわよ」
 箸を止め、促す早苗ちゃんの視線に振り返る。
 戸口の上の枠に、頭がつきそうなくらいの長身の男の子が、教室前方のドアに立っていた。
「サッカー部の人でしょう?」
「うん。小杉先輩。サッカー部の部長さん」
「あら、よく知ってるわね」
「うん」
 優希君は、小学校の時、地元のサッカークラブに所属していた。背は低いけれど、俊足で頭脳明晰なミッドフィルダーとして、区内ばかりでなく、都内でも、ちょっとした有名人だった。
「部長自ら勧誘にくるなんて、さすがだわね」
「うん」
 話したことはないけど、当然、優希君はサッカー部に入部するだろう。少しでも長く一緒にいたい私は、マネージャーとして入部することを、密かに決めていた。運動音痴だけど、マネージャーなら大丈夫だよね。
「ありがとうございます。でも、俺、サッカー部には入部しまんせんので」
 きっぱりとした断りの声に、小さな驚きの声と共に、手にしたお箸がポロリと落ちた。呆然とした面持ちで目を瞬かせる部長以上に、私の驚きの方が大きかったに違いない。

「舞子は部活、どうするんだ?」
「えっと……」
 いつもと同じ帰り道。普通に尋ねる優希君に、私は言葉を詰まらせた。優希君のいないサッカー部に入る意味なんて、勿論ない。
「まだ決めてない」
「そっか」
「優希君は、どうしてサッカーやらないの?」
「話してなかったっけ?」
「うん」
「俺、在学中に司法試験受かりたいんだ。だから、勉強に力入れようと思って」
「司法試験……」
 中学に入学したばかりなのに、そんな先のことを考えているなんて、優希君は凄いな。私なんて、同じ部活に入りたいとか、ゴールデン・ウィークは何処に行こうかとか、そんなことばかり考えていた。
「優希君は偉いな。ちゃんと将来のこと考えていて」
「偉くないよ。それに、舞子だってなりたいものあるだろう」
 私のなりたいものは、お嫁さん。優希君から比べたら、凄く子供っぽい。何だか恥ずかしくなってきたよ。
「お嫁さんだって、立派な夢だよ」
 まるで心の中を読んだかのような言葉に、私は目を見開き、足を止めてしまった。
「夢だったろう、お嫁さん」
「うっ、うん」
「舞子らしくていい」
「そっ、そうかな」
「うん」
 綺麗な笑顔で断言され、頬が赤らむのを感じた。
 優希君に言われると、不安定な心の揺れが止まるから、本当に不思議。
「じゃあ、優希君は帰宅部?」
 火照った頬を冷ますように、慌てて言葉を口にした。
「ううん。書道部に入ろうかと思って」
「書道部?」
「うん。いくらパソコンの時代とはいえ、やっぱり字は綺麗な方がいいだろう」
「優希君、今だって十分上手じゃない」
 都が開催した書初め展で、優希君が都知事賞を貰い、全校生徒の前で表彰されたのは、記憶に新しい。
「書道部、ほぼ決まり?」
「見学してみて、雰囲気がよければ」
「だったら―」
「私も一緒にっていうのは、なしだからな」
 続けようとした言葉を先に言われ、ピシャリと否定されてしまった。
「どう……して?」
 激しい動揺に、それだけ口にするのが精一杯だった。
「三年間もあるんだぞ。自分の好きなことをした方がいいだろう。それに、興味がなければ続かない」
「そうかもしれないけど……」
 優希君の言うことは正しい。
でも、好きな人と同じ部活なら、それだけで楽しいと思うのは、いけないことなのかな。
返事をしながらも、今日ばかりは、優希君の正論に納得がいかなかった。
「舞子の希望する部活が決まったら、見学は一緒に行こう」
「……うん」
 嬉しいはずの優希君の誘いも、今日は素直に喜べず、どこか寂しい思いに、視線を落とした。












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