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大好き!
作:七海 華



第十三話 合格発表。


 合格発表当日、六年生は自宅待機となる。プライバシーを考慮して、担任から直接、合否の電話が自宅にかかってくるのだ。そんなまどろっこしいことをせずに、サクサクと掲示板に番号を張り出して、チャッチャと終わりにしてくれればいいのに。
 もっとも私の場合、チャッチャと終わるかどうかが問題だ。
優希君のおかげで答案用紙は全て埋めることができた。だからといって、正解というわけではない。もちろん普段から比べたら格段にできたと思う。でも、皆も同じようにできていたとしたら意味がない。
「早く電話かかってこないかな」
 出席番号順だから夢野の姓を持つ私は、かなり後ろの方。何で相川とか相田とかいう苗字じゃなかったんだろう。
 恨みがましい思いで電話を見つめていると、インターフォンが鳴った。取り次ぎに出たママの、悲鳴に近い声が消え終わらないうちに、居間のドアが開いた。
「優希君!?」
 なんのきなしに振り返った私は、戸口に立つ優希君の姿に驚き、ソファから立ち上がった。
「どうしたの!」
「気になって」
「優希君だって連絡まだなんでしょう」
 優希君の出席番号は私の二つ前だ。
「母さんに携帯に電話くれるよう頼んできた」
「心配して……来てくれたの」
「別に……心配はしてないけど」
 頬を染め俯く優希君の姿に焦りは消え、穏やかな気持ちが心を満たしていった。
 入試の時もそうだった。塞ぎ込む私をさりげない優しさで救ってくれた。そのおかげで、私は自信を持って試験に臨むことができたのだ。
「ありがとう」
 心の底から零れた感謝の言葉に、優希君は柔らかく微笑んだ。その時、優希君の携帯が着信を知らせた。
「母さん? 俺。うん。今、舞子の家。わかった。ありがとう」
「どうだった!?」
 電源を切った優希君にすかさず問いかける。
「合格だって」
「おめでとう!」
「ありがとう」
「まあ、優希君なら受かって当然だよね。問題は―」
 舞子と言う前に、自宅の電話が鳴った。思わず身体がビクリと跳ねた。怖くて電話に出るどころか、会話するママの顔すら見られなかった。
 現実逃避に固く目をつぶり両耳を塞ぐ。
 小さく肩を叩かれ、ゆっくりと顔を上げた。優希君の手が両耳から私の手をそっと外す。
「おめでとう。合格だって」
 音楽を奏でるかのように心地よく響く声に心が震えた。
「本当……に?」
「ああ。また一緒に通えるな」
 一緒という言葉が、とても素敵な言葉に聞こえた。頬を伝い落ちる温かなものが涙の雫だと理解する前に、優希君の真っ白なハンカチが優しく拭ってくれた。
「これからもよろしくな、舞子」
「うん」
 合格できたら感謝の言葉をたくさん言うつもりだった。けど、言葉なんてなに一つ思い浮かばず、ただ涙が溢れるだけだった。
 そんな私を、優希君は微笑みで優しく受け止めてくれた。












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