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入部!
 あの事件から早2週間がたった。
 あれだけ絶えなかった事件についての話題も2週間もたつとほとんどなりをひそめ、今は明日から始まる部活の入部についての話題で持ちきりだった。
 机をひっつけてご飯を食べながらシンたちもどの部活に入るかといった話に花を咲かせていた。

「どうすっかなぁ、中学からやってた野球にするか、それとも陸上にするか、はたまたバスケか…、あぁきまんねぇ。」
 そう言って頭を抱えるのはシンだ。

「そんなの決まってんだろう。陸上だ。お前は俺と陸上をするべきだ。」
 そう言うのは大和、部活見学に何度も足を運んでおりもう練習に混ざっている。

「確かに。大和と一緒っていうのは癪だけど、シン君も陸上に来るべきだと思う。50メートル5秒台だったし、100メートルで全国行くのも夢じゃないよ。」

「そっかぁ。由紀も陸上だったね。私はどうしようかな。」
 由紀もシンと同じように頭を悩ます。

「ねぇ、ヒメはどうするの?」

「私は弓道部。袴を着てみたいし、何よりもあの緊張感のある静けさが心地よかったから。」

「弓道部か。ヒメのことだから演劇部だと思ってた。」

「まぁ、それでも良かったんだけど、家でもそんな感じのことはやってるし、それなら学校ぐらい何か他のことをやってみたいと思ってね。」

「椎名の袴姿かぁ……へへ。」

((((こいつは何を考えてるんだろう))))

 鼻の下を伸ばしながらいやらしい笑みを浮かべる大和にシンたちは若干引きながら同じことを考えていた。




「真生、お前はどの部活に入るつもりなんだ。」
 帰り道、ふと先ほどの会話を思い出してシンは聞いた。

「うーん、私も実はきまってないんだ。」
 
「そっかぁ、真生は何でも器用にこなすからな。どの部活に行ってもうまくいくと思う。」

「そっかな。」
 シンの言葉に照れたように頬を染める。

「なぁ真生はさ、俺にどの部活やってほしい?」

「えっ」
 真生はその言葉に驚いたように声をあげると、今度は首を傾げながら考え始めた。

「むずかしいな。シンのことだからきっとどの部活でもうまくいくんだと思う。まぁでも私的には、シンには中学校みたいに野球をやってほしいかな。野球名門校から声もかかってたし、野球やってるシンはとてもかっこよかったから。」

「そっか。じゃあ野球部にすっかな。」

「えぇ、そんなあっさり決めていいの。」

「いいんだよ。昔からずっと一緒で俺のことをよく知ってる真生がそう言うんだから間違いない。俺はお前を信頼してるからな。」
 そんなことを恥ずかしげもなく言ってのける。
 真生はというと対照的に顔を紅く染め上げて俯いている。

「……私もだよ。」

「そっか、嬉しいな。」
 シンはそう言って無造作に、真生の頭を優しく撫でる。

「……私の気持ちも知らないで簡単にこんなことして…」

「ん?何か言ったか?」

「何でもない!!バカ!」
 そう言って真生は早歩きでシンの前を歩いていく。

「はぁ、俺なんかしたっけか?」
 自覚なく頭をかきながら呟くシンであった。





 次の日、シンは野球部のグラウンドに足を運んでいた。

「じゃあ、一番左の奴から自己紹介をしていってくれ。」
 3年生らしき人が言うと、左の新入部員から自己紹介が始まった。

「うわー、こういうのなんだか緊張するね。」

「…………なぜお前がここにいる。」
 いつの間にか隣には真生が立っていた。

「なんでって、そんなの決まってんじゃん。野球部のマネージャーになるためだよ。」

「はぁ、よりにもよってなんでマネージャーなんか選んだんだよ。」

「別にいいじゃない。絶対楽しいよ。というか私がマネージャーになるのがそんなに嫌なわけ。」

「そういうわけじゃないけどさ。」
 二人で小声で言い合っていると、隣の奴が肘で小突きながら、小さく声をかけた。

「おいっ、次お前だぞ。」
 その声に顔をあげると全員の視線がこちらに集まっていた。

「す、すいません。月野中から来ました。二宮シンです。中学校の頃はキャッチャーをやっていました。よろしくお願いします。」
 名前を言った瞬間視線がきつくなったような気がした。それになんだかざわついているような気がする。

「あいつがあの月中の?」
「まさかこの学校に来てるとはな…」
「即戦力だな。」
「キャッチャー志望だったけどもう俺降りるわ。」

「なぁ真生、ヤバいみんな怒ってるよ。」
 そんな噂をされてるとも知らず、張本人はやや怯えている。

「シン…あんたってホント鈍いわよね。」

「何のこと?」
 キョトンとして聞き返す。

「はぁ、もういい。」
 
「なんだかちょっと今の発言には頭にきたぞ。俺はどっかの漫画の主人公みたく鈍くないぞ。俺はちゃんとラブ臭をかぎわける自信がある。」
 頭を痛そうに押さえながら言う真生にムッとしたようにシンが言い返す。

「はぁ…」
 最早言葉を発するのもだるそうに溜息をつく真生であった。



「それじゃあ、今日の練習はここまで。一年はグラウンドの整備をしろ。下校時間が近いから急げよ。」
 野球部の練習が終わった。今日は新入部員との交流が目的だったためキャッチボール程度の軽めの練習で終わった。それにしても高校生ともなると野球のレベルは一気にあがるもんだな、とシンは思っていた。何気ない先ほどのキャッチボールだけでもそれがよくわかる。シンの相手の先輩はどんどん距離が離れていってもシンの胸の位置からボールが逸れることがほとんどなかった。それに一球一球ボールが重い。夏も近いというのに冬にキャッチボールしているように手がジンジンと痛んだ。

(こんなレベルの高いところで野球ができるとは……魔法が目的で来たところだったけど、これは嬉しい誤算だったな。)

 自然と笑みがこぼれてくる。
 ただシンは気付いていない。そのキャッチボール相手が偶然にもプロ注目の投手であり、もちろん他の選手はそれほどの技量をもっていないことに(とはいってもある程度のレベルはレギュラー全員が持っているが)。
 
「二宮!ちょっと待ってくれ。」
 整備も終わり、真生と一緒に帰ろうとしているところに声がかかる。後ろを振り向いてみると先ほどキャッチボールをした先輩である榎下光一とキャプテンの高橋誠治が立っていた。

「一緒に帰らないか?」
 誠治が声をかけてくる。シンはその言葉を聞いて真生に視線を動かし、真生と目で会話をすると頷く。

「じゃあ行こうぜ。お前らもこっち方向だろ?」
 そう言うとシンたちと肩を並べて歩きはじめた。

「早速だが聞きたいことがあるんだが…」

「なんです。」
 シンはその質問に少しだけ身構えながら返す。自己紹介のときに私語をしていたのを怒られると思ったためだ。

「二宮、お前はなんでこの学校に来たんだ?お前ほどの選手なら名門校から誘いがたくさんあったんじゃないのか?」
 怒られなかったため若干安堵する。

「それは高校には魔法を学ぶために来たからです。なんで野球推薦の話は全部断りました。」

「シンは魔法の才能もあるからねぇ。」
 真生が自分のことのように自慢げに話す。

「本当は勉強に集中すると野球の方が中途半端になっちゃいそうなんで入るつもりはなかったんです。でも必ずどこかの部活に所属しないといけないっていうのを聞いたんで、それなら野球をと。真生の後押しもありましたし。」
 真生が嬉しそうに頷く。

「あぁ、もちろんやるからには野球を中途半端にするつもりは毛頭ありません。やるからには本気でやって魔法と野球の両立をしてみせます。」
 力強く言うシンに対して先輩2人組は

「「当然だろ。」」
 と笑みを浮かべる。

「高校と中学じゃ練習量が全然違う。ついてこれるか?」
 挑発するように光一が問う。

「これでも体力には自信があります。それに先輩たちも通ってきた道でしょう。」
 
「そう言われればそうだな。」
 シンの指摘に光一は苦笑する。

「二宮は知らないかもしれないが、今年は月桂冠野球部史上最強と呼ばれるほどチームのレベルが高い―」
 誠治はそこで一旦言葉を切り

「今年こそ頂上テッペンをとる。」
 と不敵に笑った。それにつられて光一とシンの顔にも笑みが広がっていく。
 そうして無言で不敵に笑いあう3人と1人流れについていけない真生であった。
 
 
 









 久しぶりに更新しました。相変わらずの駄文ですみません。これからは時間があったらどんどん更新していきたいと思います。お読みいただきありがとうございました。
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