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第九話、変化した世界 2
〈クリス・エスティマ〉
 私の両親は魔法医学を使って最前線で活躍していました。最前線では急いで治療する必要がある患者が戦闘のたびに増えます。
 父は外科医として、母は看護師として働き多くの命を救ってきました。二人は最前線で神の手を持つ夫婦と呼ばれていたそうです。
 ですが戦闘が激しくなり管理局は後方の拠点まで撤退しなければいけなくなり、私の両親も撤退準備をしていました。
 でも敵を抑えていた魔導師が負傷し、多くの患者が危険にさらされると知り、魔導師として戦う覚悟をしました。
 結果として撤退は成功、抑えていた部隊と私の両親の死という対価を支払ってですがね。全体指揮をしていた魔導師は私の両親のおかげで多くの命が救われたと感謝の言葉をかけてくれました。
 しかし、本局の偉い人は違いました。現場を知らない本局の高官は『無能な陸の魔導師と医者が無駄死にした、我々なら事件を解決できた。』とテレビで言っていました。
 恵まれた魔力量、高性能な機械、優秀な後方支援部隊、全てが一流の人間でそろえている本局の部隊には言われたくありません!
 私はそれを知ると行動を開始しました。魔法医学学校の短期コースを卒業し陸士訓練校に入校しました。
 私の目的は戦場での医者がどれだけ大切な存在か本局の人間に理解させることです。高ランク魔導師が怪我をしても治療せず、苦しんでいる姿を皆に見せれば理解するでしょう。そのためには身を守る力が必要です。
 私の医術は自分の目標を叶えるための力、利益なしでは誰も治療しません。医者が戦場で仲間の命を握っているということを分からせます。それが医者として間違った行動だとしても・・・・・


〈スカリエッティ〉
 今日また最高評議会が研究を急ぐよう言ってきた。私も頭がいかれているがあいつらは私のさらに先をいっている。
 私が生まれたころ疑問も持たずに命令に従って生きてきた。しかし研究所を管理局が見つけたとき逃げることに成功した。
 その時知った、世界がどれだけ広いのかを。自分がどれだけ理不尽な扱いをされていたのかを。私はそれが許せなかった。
 私はフリーの技術者として就職先を変えながらお金を稼いだ。やはり私の頭脳は研究しないと欲望が満たされないようになっているらしい。本当に私を生み出した研究者はいかれていると思う。
 私は犯罪だと知りながら戦闘機人の研究を続けた。それが仕事だという理由もあったが、自分を理解してくれる仲間が欲しかったのかもしれない。
 私が生み出した娘達は成長し続けている、何人か不安なのがいるが皆同じ性格をしているより楽しくて私は満足だ。
 だが楽しい時間は続かないものだ、そろそろ私も覚悟を決める必要がありそうだ。最近私を調べている魔導師がいる。誰かは知らないが研究施設を発見していることからかなり優秀な執務官だ。
 だが私は捕まるわけにはいかない、犯罪の証拠を消され実験を続けさせられたら私は完全に存在する意味が失われてしまう。
 私の心が完全に壊れる前に戦闘機人の未来を確かなものにしなければ!娘達を作り出した責任を取る必要があるからな。


〈最高評議会〉
「時間だ、これより評議を始める。」
「まずは『ランスター警備保障について』だ、違法な事は何度も調べたがやっていない。管理局法の抜け道を利用している。」
「おまけに管理局に資金提供してくれている企業と仲が良いため下手な行動ができん、よく考えたものだ。」
「低ランク魔導師を後回しにしたことが今になって問題になり始めたか、これは我らの油断じゃな。」
 最近では陸士の戦力増強を考えてコストをダウンさせた量産型ハイブリットデバイスを開発している。そのテストのため本局魔導師を派遣しているが、陸戦魔導師と空戦魔導師が互角に戦えるという結果をだしたのだ。
 当然陸戦魔導師は空戦魔導師に頭を下げるのをやめ、理不尽な命令には逆らうようになり、抗議にも耳を貸さないという行動をとるようになったのだ。
「いまさら開発をやめさせることなどできん、少数生産で特殊部隊のデバイスとして利用する以外認めなければ良いだろう。」
「それが良さそうだな。」
「賛成じゃ。」
 解決策が簡単に見つからないのだから今はそれが限界だろう、しかし早いうちに解決策を考える必要があるのも確かだ。
「次だが、今まで埋めて隠していた『聖王のゆりかご』についてだ。」
「すでに聖王の遺伝子サンプルは回収してある、後は人造魔導師を作り、それを利用して技術解析をするだけだ。」
「だが誰に任せる?スカリエッティは最近怪しい行動をしている、他の研究者を探す必要がある。」
「それにいつまでもミッドチルダにおいて置けないのも事実じゃ。」
 最近ミッドチルダは地下開発が進んでいる。テロリストが無計画に地下を掘り進むので地盤を強化する目的で開発が進んでいるのだ。このままだと建設業者が発見してしまう危険があるのだ。
「起動さえできればなんとかできる、とにかく今は動かせるようにするのが一番だ。」
「そうだな、転移魔法でどこかに動かせば良い。」
「賛成じゃ。」
 この後もいろいろな問題を話し合ったがそれほど大きな問題ではなかった。陸と本局の対立から起こる問題が殆どなのだから。
「最後になるが、『量産型夜天の魔導書開発計画』についてだ。」
「確かメインプログラムは開発に成功したのだったな。」
「ああ、今は守護騎士プログラムの解析作業をしているところじゃ。」
「八神はやて、幼いころから一人だったから操るのも簡単だった。少し親切にすれば何も疑わないのだからな。」
「だがおかげで研究が進んでいる。」
「データの収集だけなら後数年で完了する、その後は用済みじゃな。」
「彼女にはこれまでいろいろ良い思いをさせてやった、だから最後に犯罪者として死んでもらおう。」
「ロストロギアを個人に預けておくわけにはいかない、当然の結果だな。」
「賛成じゃ、悲劇を繰り返すことはやってはならんのじゃ。」
 管理外世界出身の彼女達はミッドチルダの魔法格差社会を知らずに生きてきた。そしてその対価を払ってもらうときがきたのかもしれない。しかし本人達はそれを知らずに生活しているのである。
 平和な生活は終わりに向かっていたのである・・・・・


〈フェイト〉
 今日新しい違法研究所を見つけた、しかしもう逃げた後だったようで、証拠は何も残っていませんでした。
 今までにどれだけたくさん見つけても結局分かったことは名前も知らない誰かがかかわっているかどうかだけでした。
 あの人がかかわっていない違法研究所はどれも酷い実験ばかりしていました。『生物兵器』、質量兵器が使えなくなったので戦闘機や戦車に変わる量産型兵器として研究開発が続けられているのです。
 その中には私と同じ人造魔導師もいました。最近ようやく心を開いてくれましたが、やはり心の傷は深く、他人に対して強い警戒心を抱いているようです。
 他にも竜召喚のレアスキルを持つ女の子が薬物で頭をおかしくさせて捕らえられているのを発見しました。最新の薬物治療で回復に向かっていますが、脳へのダメージが大きく、無事に大人になれるか分からないそうです。
 なぜここまで酷いことをできるのでしょうか?私はこれ以上生きていても苦しむしかない犠牲者を殺傷設定の魔法で安楽死させてあげたことがあります。それを思い出すたびに思います、『必ずこうなった原因を見つけ出す』と。だから必ず探し出します、違法研究者のあの人を・・・・・


〈地球〉
 なぞの科学者JSよりマスドライバーの設計図と建設機械の設計図が届けられた。もちろん専門家に調べてもらったがアメリカが設計していたのより性能が優れているという結果がでたのだ。
 そのため建設作業を始め、10年以内に完成するという報告を世界中に発表した。当然世界はアメリカの技術力の高さに驚いたが、本当は他人の作品だと報告しなかったのである。
 だがJSという科学者がかかわったのはそれだけではない、日本には新型月村家に宇宙服の設計図を、日本政府には高性能AI開発技術を、中国には無人ロケットの小型化技術を、ロシアには有人ロケットの輸送技術を渡したのであった。
 突然おこった技術力の変化にグレアムは驚き、管理局に報告しようとしたが不審に思い調べていた政府に見つかり、管理世界に逃げることとなってしまったのである。
 管理局は調査団を派遣したが魔法技術が存在しないため深刻な事態ではないと判断し、調査団は地球から撤退することにしたのである。
 だが科学について知識があるものが見れば判断を変えただろう、科学は魔法と違って簡単に宇宙には行けないのだ。それを短時間で一般的な技術にまで成長させるのは現在の地球の技術では不可能であり、それを可能にしたのは管理世界の人間が技術を教えたという結論しかでないのである。
 だが日本にとって悪いことではなかった、量産型宇宙服は世界各国の政治家を黙らせる材料として効果的であり、安全を確保するのに成功したのである。
 中国は日本より進んだロケット開発技術が手に入ったので日本を攻める理由が無くなり、低コストで量産化を目指して研究を続けているのが現状である。
 この状況を利用しようと動き出した企業があった、『月村重工』である。月村重工は量産型宇宙服の特許を世界中で取得し、日本政府ではなく自分達が政治的パイプを作り対等な存在へと成長するのに成功したのである。
 当然日本政府は抗議したが、アメリカが『企業に責任を任せて楽をするなど民主主義国家のすることではない。』という援護をし、月村家の日本政府からの圧力を減らすことに成功したのだった。
 バニングス家もアメリカへの資金提供を利用して技術提供を得ることに成功、この技術を、対管理局戦を意識した研究を始めたのである。
 世界は変わった、管理局の存在を知らなくても戦う準備を整え始めたのである。管理世界が荒れている状況でこの変化は何をもたらすのであろうか。
 ただ言えることは一つだけある、第97管理外世界『地球』は存在を知られていない田舎の世界ではないのである。


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