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第三六話、権力
 機動六課は八神はやてが部隊長のままであり、隊長達には処分が下されなかった。しかし、シャーリーやグリフィスなど一般局員は追放処分となり、もはや原形など存在しなかった。
 今回はやて達が裁かれなかったのは理由がある。一つ目は地上の防衛体制の問題である。機動六課は設立前からいろいろな権力者に動いてもらって設立後地上が機動六課中心に動くようにさせたのである。これを元に戻すには時間が必要であり、その間にガジェットが襲ってきたら対処できないため裁くことができなかったのである。
 だがそれだけでは裁くのを後にすればいいだけで、罪を裁かない理由にはならない。そこで二つ目の理由が関係してくる。機動六課はリンディハラオウンなどの主流派や、伝説の三提督、聖王教会など大きな権力を持つ人物や組織が協力している。今回機動六課を裁いてしまえば彼らの権力にもキズかつき、権力闘争が激化するのが予想できる。そのため裁いても痛くない一般局員を裁いたのである。
 『機動六課は何をしても裁かれない』そういう現実を知った彼女達はどのように動くのだろうか。少なくとも地上本部の監視があるのでこれまでと同じ行動はできないだろう。そう、新たな始まりである。


〈シャーリー・グリフィス〉
 シャーリーは今回の処分を不満に思っていた。本局魔導師の補佐官である自分は、地上本部所属の補佐官より権力はあり、優秀である証拠だ。またシャーリーはフェイトと共に行動していたので、本局魔導師の考え方や問題行動をしても許される範囲を知っている。つまり、今回の行動は問題だが許される範囲ではあったのだ。
 しかし機動六課は地上本部の行動方針にある程度従わなければいけないので、規則に厳しい地上の高級官僚は許さなかったのである。それを考えていなかったシャーリーは自分の愚かさを理解はしているが納得できないのである。
「シャーリー、いつまで怒っているつもりなんだ?」
「私は怒ってない!」
「はぁ・・・」
 グリフィスはシャーリーが心配で彼女についている。ここ数日就職活動をせず、朝から酒を飲んだり、無駄と分かっていてもスカリエッティの捜査を行っていた。もちろん結果は何も知ることができずに終わっている。
「グリフィス君は悔しくないの?はやてさんがあんなに言われて!」
「悔しいけど、今の僕らでは何もできないよ。」
「そもそもなんで新人魔導師を守ろうとするのよ、なのはさん達は強いんだからそれを支えるのが新人の仕事じゃないの!」
「飲みすぎだよシャーリー。」
「良いじゃない少しくらい。それに私についてこなくても良いのよ?何もできないんだから。」
「シャーリーが立ち直ったら好きにするよ、だから後ろじゃなく前を見よう。」
 何度目かは知らないが、励ましの言葉をグリフィスは言った。しかしシャーリーは何の返答もしない。だからと言って見捨てることはできなかった。別に好きなわけではない。ただ同じ補佐官であり、補佐する相手にあこがれのような気持ちを抱いているのは同じであり、気持ちを共感できるというだけだった。逆に言えばグリフィス自信が仲間を欲していたのかもしれない。
「あ~あ、私に魔力があればな~。」
「無いんだから仕方がないよ、リンカーコアが手に入るわけでもないんだし。」
「それはどうかな?」
「!?お前はジェイルスカリエッティ!!」
 突然スカリエッティが後ろから声をかけてきた。あたりを見渡すといつの間にか人がいなくなっており、自分達以外誰もいなくなっていた。
「すまないが人払いをさせてもらっているよ。盗聴器や通信機も妨害していえる。」
「何が目的だ、一般局員ですらない僕達に価値はないはずだ。」
「興味深い話を聞いたものだから協力しようと思ってね。」
「興味深い?」
 シャーリーはスカリエッティの話に興味を持った。『少しでも情報を手に入れれば管理局に復帰できる』と考えたのもあるが、それ以上に今の自分への興味をもつこの犯罪者に興味を持ったのだ。
「シャリオフィーニーノ君、魔導師にならないかい?そして新人達へ復讐する気持ちはないかい?」
「何を言っている!リンカーコアを持たない僕達が魔導師になれるわけないじゃないか!でたらめいうのはやめろ!」
「いや可能だよ、私はレリックを利用した疑似リンカーコア製造法を確立させた。」
「「!?」」
「私なら魔導師にできる、一緒に来ないかい?」
 シャーリーはスカリエッティの言葉に心が揺れ動いていた。『魔導師になればフェイトさんと一緒に戦える』という希望が見えたからだ。それに対してグリフィスはロストロギアを使おうとするスカリエッティを信用していなかった。『必ず裏がある』と思い疑っていた。
「分かったわ、魔導師にしてちょうだい。」
「!?本気かい、絶対失敗するに決まっている、止めるんだ!!」
「魔導師になればクリス達と同等に戦える、あの子達に馬鹿にされずにすむ!!」
「歓迎するよフィニーノ君。」
「シャーリーで良いわ。」
「くっ!僕もついていくよ。」
「別に私についてこなくても良いわよ?好きにすればいいじゃない。」
「最後までついていくよ、どうなるか分からないけどね。」
「そうか、君も歓迎するよ。」
「歓迎しなくて良い、いつか必ず後悔させてやる。」
「ふふふ、楽しみに待っているよ。」
 三人は転移魔法でどこかへ移動した。しかし三人は気が付いていなかった、それを見ていた元機動六課局員がいたことを・・・


〈ヴィータ〉
 ヴィータはあの後本局航空隊第1321航空隊に戻った。仲間の視線が気になることもあったが、仕事に問題が出るレベルではないので無視して仕事を続けていた。すると仲間も元のような対応をするようになり、ようやく部隊に復帰できたと言える。
 ヴィータの仕事は特別忙しいというわけでもなく、定期巡回を行い、たまに緊急出動するが数人で対応できるレベルで終わることが殆どである。むしろ機動六課のような危険な任務が続くことが異常なのである。
「ん?お前は確か機動六課の事務員じゃないか、なんでここにいるんだ?」
「ヴィータ三尉、お久しぶりです。再就職して配属されたんです。」
「再就職?お前管理局を一度辞めたのか?」
「いえ、じつは・・・」
 事務員は機動六課で起こった事を説明した。ヴィータには機動六課の情報がいかないように情報統制が行われていたのである。そのため機動六課の現状を知り目を見開いて驚いたのである。
「おい、なんでそんなことになってるんだ!?」
「皆なのはさん達に憧れているので追放の原因を作った新人達を恨んでいたんですよ。」
「何やってるんだお前達は!なのは達は人間だ、間違いもする。神じゃないんだぞ!」
「すみません、ただ、皆極端な事を言って止まらなかったんです。」
「ちっ、集団効果か、厄介な・・・まぁ終わったことは仕方がない。その後退職した人達はどうしているんだ?」
「管理局に再就職したり、民間企業に就職したりしています。ただ・・・」
「ん?何かあるのか?」
「はい、グリフィスさんとシャリオさんが就職せずにいるのですが、ついさっき怪しい男と一緒にいるのを見かけたんです。」
「どんな男だ?」
「白衣を着た男で狂ったような目をしていました。年齢は30代後半から40代半ばくらいだと思います。」
「白衣の男ねぇ、分かったあたしが調べてみるよ。」
「お願いします、それでは自分はこれで。」
「おう、これからもよろしくな。」
「はい、こちらこそ。」
 事務員がいなくなると顔を険しくして考え始めた。『白衣の男』それはジェイルスカリエッティの可能性が高い。しかしグリフィスとシャーリーにそれ程価値があるとは考えられない。なら別の誰かかと考えていた。
「そういえばなのは達は賞金稼ぎに命を狙われていたな・・・」
 賞金稼ぎが情報を得るため二人を襲ったと考え始めたが、それはないと思った。なぜなら白衣という怪しい姿をする必要がないと思ったからだ。
「なら誰なんだ?・・・くそ、そもそもなんで機動六課が崩壊したんだ?機動六課に行くことはできない、どうすれば・・・」
「ん?なのはは辞めたんだよな、今どこにいるんだ?」
 ヴィータはなのはに連絡を取ることにした。


〈なのは〉
 家に帰り自分の部屋に戻るとヴィータから通信が来た。なのはは通信に出た。
「なのはです、どうしたのヴィータちゃん?」
《どうしたじゃねー!!なんでお前辞めてるんだ!》
「ええっと、知らなかったの?」
《知るわけねーだろ!はやて達と連絡取れないんだぞ!》
「そっか、忘れてたよ、ごめんねヴィータちゃん。」
《はぁ、良いけどよお前今どこにいるんだ?》
「私?ランスター警備保障だよ。」
《はぁ?なんでそんなところにいるんだ?》
「いろいろあってスカウトされたんだよ。」
《いろいろって、まぁ良いが近いうちに会えるか?》
「うん、会えるけど何かあったの?」
《それは会ってから話すよ、それじゃあまたな。》
「ちょ、ヴィータちゃん!?もぅ。」
 突然通信が切れて少し怒ったが、久しぶりにヴィータに会えると知り顔に微笑みが浮かんでいた。やはり、しばらく会えなかったので心配していたのである。しかしなのはは自分がミスをしたことに気が付いた。
「そういえば明後日から潜水艦に戻るんだった。それに明日はティアナと食事の約束があったね。・・・まぁ良いか、ティアナに頼んで三人で食事にするよう頼めば。」
 その後、通信をティアナに入れて三人で食事をすることになった。自分でも失礼だと思ったが、ティアナも聞きたいことがあるようで少し安心した。そして次の日を迎えた。




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