第十九話、審問
リニアレール襲撃事件を解決した次の日には裁判所直属の部隊が機動六課に来ていた。彼らは武装しており、八神はやてを引き渡すよう要求してきたのだ。
機動六課は隊長陣と親しい人間が集められている、そのため八神はやてを引き渡すよう言ってくる裁判所直属の魔導師と衝突する一歩手前まで緊迫した状況になった。
特にヴィータははやての敵とみなしてデバイスを起動させ、相手は殺傷設定に切り替えるよう隊員に命令したのだ。
それをやめさせたのがシグナムであり、彼女は現状を正確に把握し、自分達が問題を起こせば最悪闇の書事件の裁判をやり直すようなことになりかねないと知っていたのである。
その後すぐにはやてが現れ、おとなしく従ったことから問題なかったが、それを見ていたクリスは機動六課の歪さに気がついたようである。
ヴィータはその後も怒りを見せていたが、誰もそれに注意をしなかった。少しずつ確実にクリスの心が離れていくのを誰も気がついていなかった。
〈裁判所〉
裁判所は管理局でも特殊な組織である。相手の階級に関係なく拒否する権力を持ち、同時に武力まで持っている。
場所は地上本部近くに存在するが、本局と地上本部の中立的な立場で存在し、そこに所属するものには階級は存在しないのである。
そんな裁判所だが、仕事は犯罪者を裁くだけではない。管理局員が問題を犯したとき、罰を決定するのも裁判所の仕事だ。
しかし殆どは部隊内で決定するような簡単なものであり、ここ数年は行われたことはない。そのため今回八神はやてが呼び出されたことに驚き、そんな制度が存在したことをクロノですら忘れていたのである。
今回の強制連行は審問会を開くためであり、裁判官のほかに陸の代表としてレジアス・ゲイズとその秘書二人、海の代表として評議会議員、そしてはやての弁護人としてなのは、フェイト、クロノ、リンディが来ていた。
当然だが普通このような権力者が集まることはない。今回は機動六課が陸と本局の規則が絡み合っているためこのようなことになったのだ。
正直クロノとリンディは今の状況がどれほど悪いか理解していた。本局ははやてを見捨てて保身のために行動しだしたのだ。
そしてレジアスもなのはとフェイトが助かったのは地上部隊のおかげであることを証拠に部隊を解散に追い込むのではないかと焦っていた。
だからといって裁判官が自分達に味方してくれるわけがない。基本的に地上と本局の意見を聞き、弁護人の話を聞いて最終的にどれくらい罪を重くするのか決めるのだ。最初から黒白が決まっていればどうしようもないのだ。
そんなことを思っていると部屋に裁判官が入ってきて審問会が始まろうとしていた。
「これより審問会を始める。まず始めに八神はやて、自分がなぜ呼ばれたか分かっているかね?」
「はい、うちが指揮官として指揮を執れず、高ランク魔導師二人を危険な状況にしてしまい、他の部隊に迷惑をかけてしまったことです。」
「それだけではない、リニアレールに爆弾が仕掛けられていると気がつかずに部隊は半分現場を離れ、復旧のめどが立たない状況になってしまった。」
「すみませんでした。」
「謝ってすむ話ではない、だが罪を認めていることは評価しよう。」
「はい。」
「ではまず地上本部側は事件の流れを詳しく時間の経過と共に説明せよ。」
「はい、まず・・・・・」
『教会本部から出撃要請が機動六課に出され、機動六課はヘリで出動。現場は山岳リニアレールで敵の目的はロストロギア『レリック』を奪うことだと予想された。
現場付近で飛行型無人兵器と遭遇、隊長二人はそれと戦うため新人達から離れ、部隊の指揮はユニゾンデバイスであるリインフォースⅡ空曹長が指揮を引き継いだ。
現場ではライトニングとスターズで別れて行動、ガジェットを破壊しながら進み大型無人兵器とライトニングが遭遇したが無力化に成功、その後列車のコントロールが回復、レリックも回収した。
事件は解決したと判断し、スターズは隊長と共にヘリでレリックの護送のため現場を離れるがハッキングされてヘリは墜落、同時に爆弾によってリニアレールは完全に破壊される。
機動六課は現状を報告し、地上部隊に出動要請を出し特務隊が出動。ライトニングは自分達でテロリストを無力化したが、スターズは特務隊がこなければ危なかった。』
映像つきで説明されたのを見て、弁護人は焦っていた。事実しか存在しないが、どう考えても自分達にとって不利なことしか説明されなかったのだ。
フェイトとなのはに問いただしたがこれが全てであり、自分達の完全なミスだと逆に理解させられてしまったのだ。
だからといって政治的な理由で部隊解散に追い込むほど裁判官は軽い存在ではない、それが唯一の救いではある。
「なるほど、状況は理解した。次に本局側今の説明に何か異議はあるかね?」
「今のところはありません。」
「そうか、では弁護人に発言を許可する。」
「ありがとうございます裁判長。」
発言台に足を進めたのはクロノである。今の状況で話しを聞いてもらえるのはクロノとリンディだけだと考え、クロノが代表として出てきたのである。
「まず始めにスターズが自分の力で脱出できなかったのは高町なのはにかけられたリミッターのせいが考えられます。少なくともなければ敵を無力化するチャンスが多くあったと考えられます。」
「ふむ、しかし部隊には規則がある。認めるわけにはいかんな。」
「はい、・・・・・次にリニアレール爆破を防げなかったのは事前に担当部隊と意見交換ができなかったためだと考えられます、時間がなかったので。」
「確かにそれはあるだろう。」
「次に新人の教育に時間がなかったことも言えます。使えるレベルにはなっていましたが、緊急時の対応能力は低かったと考えられます。」
「それでも新人を選んだのは機動六課だが?」
「それは新人しか集められなかったからです。」
「まあいいだろう、他にあるかね?」
「ありません。」
クロノは後ろに下がったが、なのはとフェイトは不満を見せていた。自分達がリミッターをはずして自由に戦えればこんなことにはならなかったと言いたいのだろう。
だがそれは『自分達は特別だ!』と言っているようなものであり、当然聞き入れてもらえるようなことではない。
リンディは地上と本局がどのように動くかに集中しており、今の裁判官の判断に何も言うことはなかった。
「では次に部隊の責任者である本局はどう考えているか聞こう。」
「はい、裁判長。議会で機動六課の解散は厳しすぎると考えております。しかしこれ以上本局側は支援をしないことをすでに決定しております。」
「では判断を地上本部に任せると考えて良いのだね?」
「はい、そうです。」
「分かった、では次に地上本部の判断を聞こうか。」
「地上本部としてはリニアレールの復旧費用を本局側に持ってもらいたいのが一つ、現状ではAMF対策がないため機動六課の存続は認めるが部隊の隊長陣に地上本部の人間を入れることを要求する。」
「なるほど、両者共に部隊存続を認めるか。しかし裁判所としてはこれだけ大事にして無罪にすることはできない。そこをどう考える八神はやて。」
「はい、私にできることなら責任を取ります。」
「そうか、では少し休憩をとる。判決はその後とする、一時休廷。」
裁判長がそういうと地上と本局の代表は席を立った。
〈はやて・弁護人〉
判決を待つ間、5人は集まって話をしていた。裁判所に入るとき、デバイスを取り上げられたため無力化は簡単だと判断されたのだ。
「どうやら部隊解散にはならなそうだな。」
「ほんまにそれはありがたいで。」
「ごめんねはやて迷惑かけて。」
「私達が油断していたから・・・・・」
「いや、認めたうちにも責任がある。私に謝るのは間違いや。」
「ありがとうはやて。」
「私達これまで以上に頑張るね。」
「二人ともありがとな。」
三人は百合の花が見えそうなほど仲が良い雰囲気を見せていたが、そこに険しい顔のリンディが水をさした。
「三人とも安心するのはまだ早いわ、おそらくこれから支援ができなくなるからあなた達だけで高官相手に政治をしないといけないのよ。」
「そうだ、それに地上から人を送るのだから誰か部隊から追い出されるだろう。」
「!まずいでそれは、新人には散々迷惑かけたし隊長陣も必要やで!」
「クリスに言われていたのに・・・・・」
「落ち込んでる暇はない、何とか機動六課に呼ぶ戻す方法を探すんや!」
「うん!」
そしてついに判決がやってくる・・・・・
〈判決〉
「判決を言い渡す、リニアレールの復旧費用は本局が払うこと、機動六課の存続を認める。ただしこれ以上の本局や支援者からの支援を受けることを禁止する。また機動六課に地上の人間を受け入れることを存続の条件とし、副隊長ヴィータを機動六課メンバーからはずすことを命じる。」
「!?なぜや、何もしてへんで!」
「彼女はここにくるまで裁判所の魔導師と戦闘する一歩手前にまで緊迫した状況にした。これは特殊部隊の局員としてふさわしくないと判断した。」
「ですがそれでは戦力が!」
「それは地上本部と相談してくれ、我々にはそこまでする権力はない。当然だが出向などで彼女を呼び戻すのも禁止だ。」
「そんな・・・・・」
「以上で審問会を閉廷する。」
審問会は終わったが、はやての顔色は悪かった。家族を一人だけ追放するのが辛かったのである。
それに機動六課を追放処分になったとなれば評判も悪くなるだろう。これからのヴィータの人生を不安に思ったのだ。
しかし現実は変わらない、すでに判決が出されたのだから・・・・・
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