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異世界でアイテムコレクター 作者:時野洋輔

Episode03 海上都市

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食糧運びのアイテムバッグ

~前回のあらすじ~
コーマがフリードと通信イヤリング越しに会話した。
 魔王討伐宣言の翌日の朝。つまりは一角鯨が現れるまらで残り二日。
 俺はメアリ、そしてマユ、さらに5人の海賊の男とともに南の島の北端にある町に向かった。
 そこはすでに大勢の人でごった返していた。北の島からの避難民が到着したのだ。
 彼らの顔はかなり憔悴していた。伝説の魔物、一角鯨が実在し、あと3日で襲い掛かってくる。
 そんな伝記の中でしか聞いたことのない夢物語が現実に起こるというのだ。不安にならないわけがない。
 人の波を抜けて、港へとたどり着く。
 そこに待っていたのは、執事服を着た、白髪頭の初老の男だった。
 彼が案内人らしい。

「メアリお嬢様、そしてコーマ様、マユ様皆様方お待ちしておりました」
「ブラン爺、久しぶり」

 メアリはバツの悪そうな顔でそう言った。勝手に家を出て海賊行為をしていたのが後ろめたいのだろう。
 だが、ブランはただただ笑顔でメアリを迎えた。
 俺たちはブランの案内で定期船に乗り込んだ。当然だが、乗客は俺達だけだ。
 この船もスクリューと魔石によって動くようだが、速度はボートよりは遅い。
 普通に走っているのと同じくらいの速度しか出ないが、まぁ、水蜘蛛改で北の島まで走ることに比べたら楽なものだ。

 アイテムマスターとして気になったので聞いたところ、魔石(低)1個で20分ほど船は動き続けるらしい。
 コストパフォーマンス的にそれがいいのか悪いのかはよくわからない。
 迷宮の中とはいえ、風は多少は吹いているので、帆を張って進めないのか? と聞いたところ、ブランは首を傾げただけだった。
 どうやら、スクリューという魔法道具を手に入れたせいで、当たり前の帆による航海の技術がかなり退化しているみたいだな。
 ちなみに、このスクリューは20個ほど保存されているが、新たに作ることはできないらしい。
 3年に1個くらい故障することがあるそうなので単純計算で60年経てば在庫がなくなることになる。
 スクリューは、鉄、防水ペンキ、回転装置の3つがあればアイテムクリエイトで作成できるので、全てが終わればフリーマーケット経由で販売してもいいかと思う。
 他にも需要はありそうだ。

 船は海をかき分けて進み、昼過ぎには北の島にたどり着いた。
 入れ替わりに、まだ北の島に残っていた大勢の避難民が船へと乗り込んでいく。
 客室だけでなく甲板まで人で埋め尽くされ、明らかに定員をオーバーしそうで、沈没しないか心配になる。だが、定員を守れとは言えない状況なので仕方がない。
 船のことは船員に任せ、俺達は領主の館へと向かった。
 坂を上って行く途中も、多くの荷物を持つ人とすれ違う。
 だが、あれだけの荷物、おそらく乗船前にチェックされ、最低限の荷物しか持ち込めないだろう。
 どうしても全ての荷物を持っていきたいのなら、最終便に、とか言われそうだ。
 命あっての物種、できれば荷物は置いて行ってもらいたい。それに、俺がこの島を守ったとき、もう一度持って帰るのは面倒だろう。

 他にも、子供を抱きかかえて港へと走る母親の姿や、年寄りを背負って港へと向かう女勇者の姿もある。避難は着実に進んで――

「って、クリス!? お前、何してるんだ?」
「あ、コーマさん! それにそちらはあのときの海賊さん達! 大変なんですよ、この島を一角鯨が襲うそうなので、私は避難のお手伝いをしているんです」
「……見ればわかるが……クリス、その人を港に届けたらすぐにフリードの屋敷に行くんだ。いいな」
「わかりました! では、お婆さん、しっかり捕まっていてください」
「あいよ、嬢ちゃん!」

 背の低いお婆さんはそう言うと、クリスの背をしっかりとつかむ。
 そして、クリスは全力で港へと走って行った。アグレッシブなクリスだが、それに振り落されずに掴まれる婆さんも凄い。

「コーマ、あの勇者と知り合いなのかい?」
「ああ、俺はあいつの従者だからな」
「それにしてはあんたのほうが偉そうだけど」
「俺はクリスの借金の債権者なんだよ。だから俺の方が今は偉い」

 自分で言って、変な関係性だとは思わなくもない。
 それでも、メアリは怪訝な顔をしながらも納得はしてくれたようだ。
 俺とクリスが35階層に来たとき、二人は剣を交えたという。
 メアリは幼いころ、母親から英才教育で剣術を学んできたのだが、クリスには手も足もでなかったそうだ。
 男に負けるならまだしも、同じ……しかも年下の女に負けたのが少なからずショックだったと語った。
 まぁ、クリスはただでさえ強いのに、俺の力の神薬や反応の神薬で強化してるからな。
 俺と出会う前のクリスだったら、勝負の結果は変わっていたかもしれない。
 ブランの案内で俺はさらに坂を上り、フリードの屋敷へとたどり着いた。

「正門から入るのは久しぶりだよ」

 メアリが感慨深げにつぶやいた。そして、仲間の海賊達に、ここで待つように伝えると、俺と一緒に門をくぐる。
 秘密の抜け道からは何度か忍び込んだことがあるんだろうな。
 メアリが玄関の入り口を開けると、恰幅のいい男が待っていた。
 彼がフリードなのだろう。

「父さん……そんなにやつれて……」
「やつれてっ!?」

 メアリが手で口を押さえ、目に涙を浮かべてとても悲しそうに言う。
 え? 恰幅のいいとても健康そうな男に見えるけど。

「以前は山と見間違えるくらいの巨体だったのよ」
「いろいろとあってな。体重も70キロ減った。おかげで腹の皮が余って困っている。ところで、メアリ、その目は……」
「ああ、彼に治してもらったんだ。とても効果のいい薬を貰ってね」
「おぉ、それはそれは、本当に娘が世話になりました」

 フリードはそう言い、俺の手を握った。

「できることなら今すぐお礼をしたいのですが、もうこの館に金に換えられるものはほとんどなく……そうだ、島の領主の地位を」
「要りません。ていうかそんな大事なもの軽々しく人に渡すな」
「いえ。もしもコーマ殿の作戦が失敗したらこの島は消えてなくなるのです。仮に島が残ることがあれば、コーマ殿こそこの島の領主に相応しい」

 そう言われたらそうかもしれないが、俺はこの島の領主になんてなるつもりはないぞ。
 領主とかってかなり面倒そうだしな。
 なんて思っていたら、

「フリード様……」

 奥からそう言って、鞄を持った可愛らしい女の子が現れた。

「ランダか……準備はできたか?」

 ランダ……確か、フリードの養女の少女だ。
 クリスにマユを誘拐するように頼んだ女の子だ。

「フリード様、申し訳ございません。私、フリード様のことを勘違いしていて」
「いや、お前のことをマユさんへの人質にしていたのは事実だ。だが、それでも君も私の娘だ。全てが終わったら、また戻ってきなさい」
「はい……フリード様」

 彼女はそう言うと、鞄を持って出て行った。
 あの鞄、どこかで見たことがあると思ったら、俺が作ったアイテムバッグじゃないか。
 なんでこんなところにあるんだ?

「あの鞄は冒険者ギルドから借りているものです。中には小麦粉が2トン入っている」
「……冒険者ギルドに行かれたんですか?」
「ああ。島の者なら全員知っているんだが、この島からさらに北に行ったところにある壁に転移陣があってね。そこから33階層に転移できる」
「え? そんなところあったかな……」
「隠し部屋にあるからね。一部の人間しか知らないはずだ。ギルドマスターは知っているはずだが、聞いていないのかね?」
「聞いてません」

 その転移陣さえ知っていれば、34階層から落下せずに済んだってことじゃないか。
 くそ、あのギルドマスター。説明くらいしっかりしてくれ。

(34階層より上では、私が許可書代わりの珊瑚のネックレスを首からかけていれば襲われることはありません)

 マユが思念で追加の説明をしてくれた。
 フリードさんはギルドから特別な許可を貰い、10階層から蒼の迷宮へ入ることも許されているのだろう。
 となれば、食糧も地上で買い集めていたってことか。

 それと、もう一つ。
 こうなることを、あのギルドマスターは知っていたことになる。
 まんまと乗せられた感じがするな。
 まぁ、乗ったものは仕方がない、乗り掛かった舟だ。
 沈没するまでは付き合うって決めたからな。

「コーマさん、お待たせしました」

 クリスが帰ってきた。よし、役者もそろったな。
 さて、作戦準備といたしましょうか。
~なかがき~
おかげさまで評価ポイント15000突破しました。
これもひとえに皆様のご支援のおかげです。

さて、気付いている方もいるでしょうが、3章、なんか文量がおかしいです。
1章と2章で40話、3章は現在41話~69話ですが、まだ物語も中盤って感じですね。最低80話まではいきそうです。今月中には3章は終わると思いますが、終わらなかったらごめんなさい。

1章2章は急ぎ気味で書いていたので、のんびり書こうと思ったらこれだ。

3章が終われば、1章や2章よりも少し短めの話をいくつか投下していくと思います。
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