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異世界でアイテムコレクター 作者:時野洋輔

Episode03 海上都市

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通信イヤリング越しの決意表明 & ゴブリン王誕生秘話

~前回のあらすじ~
雷の武器を複数作成した。
「そうか、あんたがフリードさんか。そうだ、俺がコーマだ。そこにいるクリスの従者をしている」
「フリードだって!? コーマ、今、フリードと話してるのか?」

 横でメアリが驚きの声を上げた。そして、俺が耳に当てている通信イヤリングにメアリも寄せてきた。
 かなり密着し、大きな胸が俺の二の腕に押し当てられている。
 そのメアリの声はきっちり通信イヤリングにも届き、とうぜんフリードにも伝わった。

『そこにメアリが居るのか!? ならマユさんも一緒か』
「……ああ、ここにいる。全て聞かせてもらった」
『そうか……よかった。本当によかった』

 なぜか、フリードは安堵していた。

『コーマくんといったね。全てを聞いたというのなら頼む。彼女をそこで保護していてくれ』
「ちょっと待て、どういうことだ!? あんたはマユを監禁していたって聞いたんだが」
『そうだ。五年前。一角鯨が復活する予兆があるとわかったとき、彼女は魚の魔物、そしてアイランドタートルを従わせる能力を使い一角鯨と戦おうとしていた。
 だが、そんなの無謀でしかない。だから私は彼女を監禁した』

 その後、彼は最後の手段として、アイランドタートル本体を毒の身体にし、その身体を食べさせるという手段を使うようにマユに命じたという。
 彼女は最初はそれを拒否したが、マユの友好の指輪から漏れ出た声をアイランドタートルが聞き、その提案を勝手に実行したという。
 また、マユに罪悪感を持たせないため、ランダという、マユの世話係として新たに雇った少女を養女として迎えた。
 彼女はすでにアイランドタートルの呪いにかかっており、マユが勝手に逃げ出せば彼女を治療しないと脅したそうだ。

 マユが言っていた、友好の指輪が万能なものではない、というのはこのことを言っていたのか。
 だが、住民全員が南の島に避難したら食糧難で多くの死者が出る。
 そのため、彼は薬を高値で売り、その金で当面の食糧を購入した。
 本来は呪いで動けない人を無理やり島とともに犠牲になってもらい、人口を減らすための選別をしていたと語った。
 だが、それはクリスが配った、俺が作った薬のせいで失敗したという。

「……そんな……なんでそのことをあたいに話さなかった!」
『……メアリ、お前が知れば、お前も私とともに島と運命を共にしただろう』

 通信イヤリングの向こうで、フリードはため息を漏らした。

『お前は母さんに似て優しい子だからな』

 その言葉に、俺はようやくメアリがフリードの屋敷の構造を熟知し、マユを攫うことが成功したのか理解できた。
 単純な話だ。彼女は屋敷に住んでいた――つまりはフリードの娘だったということか。

『こうして話すのはメアリが治療薬を持って家を飛び出して以来だな……その声だと元気なようだ。本当によかったよ』

 フリードはさらに語る。
 本当は、クリスにメアリを連れてきてもらい、マユとともに避難してもらう予定だったらしい。
 クリスはそのことをすっかり忘れていたのだろう。

「フリードさん、北の島の人の避難はどうなってる?」
『先ほどから開始したよ。島が沈む可能性があるからと言ってね。一角鯨については話していない』
「……このまま北の島……アイランドタートルが一角鯨に食われたら、多くの人が餓死するのか?」
『南の産業と貯えを考えたところ、私が用意した食糧は島民全員分3ヶ月、よくて半年で尽きる』
「……なら、もう少し抗ってみないか? 北の島を救うために。そのために、マユは俺に声をかけた。戦う人間を最低30人用意してくれ。もちろん、全ての事情を話したうえで戦ってくれる人間をだ」

 30人。
 化け物鯨と戦うには決して多い数ではない。
 一応、最後の手段は用意しているが。

「武器は俺が用意する。一角鯨がどんな化け物かわからないが、俺を……俺を選んだマユを信じてくれ。蒼の迷宮35階層は俺とそこのクリスが救ってやる」

 暫し、通信イヤリングの向こうから声が聞こえた。

『マユさんと……変わってくれないか』

 俺は「わかった」と返事をし、マユに通信イヤリングを渡した。
 そして、俺はメアリに声をかけた。

「あたいは……ずっと父さんは変わってしまった。守銭奴になった。病気を餌に金を稼ぐだけの悪徳商人だと思ってた」
「違うだろ、そう思わせようとしたんだ」
「わかってるよ、そんなこと。それでも、昔の優しかったあの父さんのことを信用できなかった自分に腹を立ててるんだ」

 メアリはそう言い、握った拳をテーブルを叩きつけた。コメットちゃんが置いた花瓶が倒れ、水が零れる。
 花瓶はテーブルの上を転がっていき、床に落ちて音を立てて割れた。

 その表情には苦悶のそれが浮かんでいる。

 通信イヤリング越しでも友好の指輪で話せるのか?
 と思ったが、どうやら話はできるようだ。
 通信イヤリングの向こうから『そうなのですか』などとフリードの声が聞こえてきた。二人の間で会話は成り立っているようだ。

「そうか……それは辛いな」
「……あたいの辛さなんて、父さんのそれに比べたら」
「フリードさんは、島とともに死ぬつもりだった」

 だが、さっき話した時にそう語っていた。
 決意に満ちた意志のようなものがあった。

「なぁ、コーマ。あたいも一緒に戦えないか?」
「メアリには、できれば南の島の護衛を頼みたい。一角鯨が来るとき、魔物が活性化して襲い掛かってこないとも限らない」

 実際に、メアリたちは先ほどシーダイルに襲われたばかりだ。
 だが――そう言ってもメアリは納得しないだろうな。

「頼む」 

 そう頭を下げたメアリに、俺は嘆息を漏らす。

「じゃあ、島の護衛はコメットちゃんとタラに任せる……が、危険だぞ」
「わかってる」

 本当に、あの親にしてこの子ありってことか。
 そして、暫くしてマユから通信イヤリングを返してもらった。
 話が終わったのだろう。

『コーマ殿、頼みます。我々とともに戦ってください。できる限りの人数をこちらで用意します』

 そう言うフリードに、俺は頷いた。

「ああ、大船に乗ったつもりで任せてくれ」

 大亀に乗った領主に向かって、俺はそう宣言した。

「一角鯨を……35階層の魔王を俺が倒してやるよ」

 ついでに、一角鯨を魔王に仕立て上げることにした。
    ~閑話・ゴブリン王生誕編秘話~


 海から魔王城に還った私は、コーマが簡単に作成したシャワーでお湯を浴びたあと、タオルケットを敷いてそのうえに寝ていた。
 コーマが作ってくれたこの水着っていう服は少し窮屈だけど、泳いだ後にここで寝るととても気持ちがいい。
 数々のアイテムの中でもこのタタミは素晴らしいと思うのよ。
 本当に気持ちいいわ。

 このまま晩御飯まで寝ていようかなと思うくらい。
 気持ちがいい。

 スピー。

「ゴブゴブゴブ(失礼します)!」

 私の安眠を妨げたのは、ゴブリンだった。
 私が召喚したゴブリンのリーダーの雄ゴブリンだ。
 最初は7体召喚したんだけど、コーマが、「どうせならもっと数を増やしてゴブリンの村を作ってみるか?」と言ったので、今では50体のゴブリンが150層に住みついている。
 直通の転移陣がないので、彼は150層から歩いてここまで来たのか。

「何? つまらない用事なら……わざわざここまで来ないわね。私の手料理でも食べに来たの?」
「ゴ……ゴブゴブゴゴブゴブ(い、いえ、滅相もございません)」

 ゴブゴブうるさいけど、まぁ、召喚者の私なら言葉は理解できる。
 つまり、彼は私の料理を食べたいって言ってるのね。

「待ってて、今から何か作ってあげるから」
「ゴゴブゴゴブ(ワシの妻の命が危ないのです)!」

 ゴブリンのリーダーの奥さんの命?
 でも、侵入者はいないし、ミノタウロスを含め他の魔物は決まった階層にしかいないように言ってある。
 危険なことなんてないはずだけど。
 詳しく事情を聞いてみると、なんてことはない。
 出産予定日まであと3月もある彼の奥さんが苦しんでいるというだけらしい。

「全く、お父様の時代なら、そんなことで魔王軍元帥の私の時間を浪費するなんて考えられないことなのよ。でも、まぁ、いいわ。助けてあげる」

 コーマなら絶対にそうするから。
 私はそう言い、コーマが作り置きしていた薬瓶を渡す。

「じゃ、これを持って行きなさい」
「ゴブゴ(ありがたき幸せ、この恩は命に変えて、返させてもらいます)」
「150階層までは私が転移で送ってあげるから」

 迷宮内の転移なら、今の私でも十分に可能だ。
 何しろ、迷宮内は全て私の家と同じなんだから。

 私は魔法を唱えてゴブリンを150階層に送り届けた。
 うん、なんていい魔王軍元帥かしら。
 さて、もう一度昼寝しましょ。

 スピー。

「おおい、ルシル……って寝てるのか」

 スピー。
 夢うつつの状態でコーマの声が聞こえてきた気がしたけど、覚醒できない。
 せめてチョコレートでも用意してくれたら目を覚ましてあげるんだけど。

「ま、あとでいいか。あれ? ここに置いてあった魔物強化薬……どこにいったんだ? あとで調合に使おうと思ってたんだけど」

 ううん、そんな薬は私は知らないから、もう少し寝ましょう。

 こうして、私はそれから3時間ほど寝た。
 起きたときには、コーマが耳元で何か騒いでいた気がするけど、その内容はすっかり忘れていた。

 ま、いっか。

~~~~~~~~~
 どこかに続く。
 感想欄にちょっと多くの質問が寄せられたので。
 ゴブリン女王 ではないです。ゴブリン王です。
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