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異世界でアイテムコレクター 作者:時野洋輔

Episode03 海上都市

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ポーション作りのための下ごしらえ

~前回のあらすじ~
クリスは混乱しているようだ。
 二時間の休憩の後、クルトが寝不足だったようなので、睡眠代替薬を飲ませ、朝から錬金術の訓練を開始した。
 朝といっても、一日中明るい迷宮の中なので、体感的に朝だろう、というだけのものなのだが。
 そういえば、人間の体内時計は24時間より少し長いそうだが、昨日地上に戻ったばかりだから朝なのだろう。
 コメットちゃんはすでに朝食を作り始めていて、タラは海へ漁にいった。
 モリを自作して張り切っていたので、止めるのも悪いと思った。まぁ、あいつなら大丈夫だろう。
 ルシルはタタミじゃないと落ち着かないとかいって魔王城でゴロゴロしている。
 あいつには睡眠は必要ないはずなので起きているはずだ。朝食の時間には帰ってくるだろう。

「よし、クルト! お前は昨日一日で錬金術レベル2になった。朝食までの間にポーションを一本作るぞ」
「ポーション……ですか? 僕に可能なのでしょうか?」
「ああ。俺を信じろ」

 正しくは、俺が読んで丸暗記した「錬金術のすすめ」を信じろ。
 丸暗記したにもかかわらず、何かあったら不安だから結局銀貨1枚も払って購入したんだぞ。
 メイベルに頼んで仕入れてもらった自分の店の商品なのに。

「まずは、この薬草をすり鉢で粉々に潰すんだ」

 錬金術の書物によると、草は乾燥させてからすり潰す、石なども細かく砕くか熱して溶かしたほうが錬成しやすくなる……らしい。

 いや、らしいっていうのは、アイテムクリエイトだとなんでも素材のまま呪文を唱えたら出来上がりだからさ。
 一瞬で出来上がるものだから。

 クルトは言われるがまま、昨日のうちから天日干し(迷宮光干し)にしてあった薬草を渡し、乳鉢と乳棒ですり潰させる。
 フードプロセッサーがあればもっと簡単なのだろうな。今度作ってみるか。
 でも、あまり魔道具を取り入れていいものなのか。
 なんて考えている間に、薬草はいい具合に粉状になった。

「よし、できたな。じゃあ、これを読め」

 俺は昨日のうちに作っておいたポーションのレシピをクルトに渡す。
 ちなみに、このポーションのレシピ、普通に買おうとしても銀貨3枚くらいで買える。
 ある程度の錬金術師なら10時間くらいかけて作ることができるそうだ。
 銀貨1枚が1万円くらいだとしたら、時給3千円は確かにおいしいアルバイトだとは思う。
 ポーションは低レベルの錬金術師でも作ることができるうえ、薬草も多く栽培されている植物のため作りやすいのだろう。
 冒険者の多いラビスシティーでは需要も高いだろうし。

 文字を読めないクルトだが、それでもレシピを習得することに成功した。
 そしてさっそくポーション作りをはじめさせる。

 まずは瓶を用意。アイテムクリエイトだと薬草と水さえあれば、瓶入りのポーションが作成できるのだが(本当に原理はわからない)、錬金術による作成なら当然瓶も用意しなくてはいけない。
 蒸留水がたっぷり入ったバケツと薬草の入った粉末。
 蒸留水200cc入った瓶に薬草の粉末を全て入れ、クルトに魔法を唱えさせる。

「アルケミー!」

 ただし変化は見られない。診察メガネで確認すると、
 鑑定スキルでも、【薬草】と見える。
 不純物が混ざったため、蒸留水ではなくなったからか、水の価値が薬草よりも低いからか、鑑定で見ることができるのは薬草だけだった。

【HP89/89 MP38/39 隷属】

【HP89/89 MP37/39 隷属】

 徐々にだがMPが減っていっている。それと、錬金術レベルが上がったために最大MPが増えたようだ。
 MPが減っている間は様子を見るか。
 そして、20分後。
 クルトのMPが残り17になったところでMPの減少は停止。
 そして――

……………………………………………………
ポーション【薬品】 レア:★★

一般的な回復薬。飲むことでHPが回復する。
ただし、味の保証はない。というか不味い。
……………………………………………………

 赤色の液体、ポーションが完成したようだ。
 鑑定でもしっかりと確認できた。
 こうしてアイテムが作られてるのか。
 薬草が10本で銅貨1枚、蒸留水なんて材料さえそろえば井戸水からだって作れるのにポーションが銅貨20枚もする理由がよくわかる。
 錬金術レベルがあがればMPの消費量も減るし、もっと速く作れるのだろうが、それでも一気に量産できるものではないな。

「よくやった、クルト。ポーションの完成だ。飯を食ったらもう一本作るぞ」
「はい……ご主人様」

 クルトは疲れ気味に言った。
 まぁ、昨日は不味いマナポーションを飲み、睡眠もとれていない。
 マナポーションでMPは回復できるし、睡眠代替薬を飲んで睡眠不足の心配はないとはいえ、疲労は残っているだろう。
 だが、クルト、もう少しお前には頑張ってもらわないといけない。

「コーマ様、朝食の準備が整いましたよ」
「主よ、大物が獲れたぞ」
「コーマ、ごはんできたぁ?」

 ちょうどコメットちゃんも料理を作り終えたようでテーブルには魚介スープとパンが並んでいる。
 タラは、巨大なカジキを背負って現れた。魚のような名前なだけに漁はお手の物ってか?
 ルシル……お前はもうあれだよな。うん、ここまでくるとむしろ清々しい。

「じゃあ、飯にするか。タラ、そのカジキは流石に俺達だけじゃ食べきれないから、俺達の分だけ切り分けて、残りはこの島の人に分けてくれないか?」
「了解した」
「あ、じゃあ私が持っていきますね」

 コメットちゃんが150キログラムはあろうかというカジキを楽々と受け取り、厨房へと持って行った。
 彼女も、力の超薬で筋力がかなり増しているからなぁ。あのくらいは余裕だろう。
 クルトはその二人の筋力に驚いているようだが、「そういうもんだと思え」とクルトに無理やり納得させた。

 朝食後、流石に島の人に調合中の姿を見られるのも現段階では避けたいと思い、クルトをつれて持ち運び転移陣に移動した。

「あの……ここは?」
「あぁ、俺の本当の家だ。ここのことは誰にも言うなよ」
「は……はい」
「じゃあ、ポーション作りを始める。MPが無くなりそうになったらマナポーションを飲んでもらうからな」

 そう言って、俺は昨晩のうちにすり潰しておいた薬草粉末を詰めた小袋を60袋置く。
 アイテムクリエイトでなく乳鉢ですり潰した。最初は面白かったが面倒なことこの上ない。
 なんで、薬草粉末をアイテムクリエイトで作れないのかと思うほど面倒だった。

「まぁ、ポーションを60本作るころには錬金術レベル3になってるだろ……では、はじめろ」
「は、はい!」

 普通なら20時間かかる計算だが、コツさえつかんでくれたら速くなっていくだろう。
 そんな期待のもと、クルトの「アルケミー」の掛け声で調合作業が開始された。


 真剣な表情で作業を開始したクルトを見て、俺は自分の耳につけられたイヤリングを見る。
 クリスのやつから連絡が来ない。
 昼前には連絡が来ると思っていたが、クルトが12本目のポーション調合を開始しても連絡は来なかった。
 まぁ、無事だとは思うが、そろそろ連絡を取ってみるか。
 通信イヤリングで念じると、すぐにつながった。
「クリス、お前、連絡くらい――」
『すみません、コーマさん。今潜入中なんで、またあとで』
「おい! おい、クリス!」

 通信イヤリングはうんともすんとも言わない。
 これが携帯電話なら「ぷー、ぷー」と機械音が鳴っているだろう。

 ぐっ、クリスのくせに意趣返しか?

 それにしても潜入って……まさか……?
 まぁ、クリスなら問題ないか。
 とりあえずは生きていることに胸をなでおろし、コメットちゃんが昼食を持ってきたので休憩することにした。


   ※※※


「すみません、コーマさん。今潜入中なんで、またあとで」
『おい! おい、クリ――』

 仕返しとばかりに、私は通信を切りました。
 昨日の通信だけではなく、魔王の調査だということを黙っていたことへの仕返し込みです。
 これで許してあげます。
 それに、潜入中だというのは本当ですから。

 海賊の住む島。
 その北側から上陸した私は、海岸沿いに島の南側を目指しました。
 そして――海賊の住む場所らしきところにたどり着いたのですが……何故なんでしょう?

 海賊のアジトらしい家にいたのは、12歳くらいの銀髪の可愛らしい女の子と、同じ年くらいの褐色肌の獣人の少年でした。
 少年のほうはどこかで会ったことがある気がしますが……気のせいですよね。
 まだ子供のような二人が海賊とは思えませんが、まずはあの二人と接触を取ってみましょう。

 そう決めて、私は二人に近付いていきました。
新作紹介 そのスライム、ボスモンスターにつき注意
スライムに人外転生した男がダンジョンのボスになり、いろいろと面白おかしく生きるファンタジーコメディーです!
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