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異世界でアイテムコレクター 作者:時野洋輔

Episode03 海上都市

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錬金術講座の蒸留水

~前回のあらすじ~
クルトを買った
 結局、コメットちゃんが用意していた夕食は突如現れた焼き魚の魔物によって全部食べられてしまったため、急遽俺がアイテムクリエイトで作成した。
 牛乳からチーズを作り、小麦粉、チーズ、トマト、干し肉からピザを2枚作成した。
 大人数で食べるならこういうもののほうがいいよな。8等分に切って並べる。
 そして、その中の一枚に赤い液体を大量に振りかけた。
 トマトソースと同じ色なので見た目だけでは区別できない。

 飲み物は、水と砂糖とレモンを使い、炭酸レモン水を作った。
 本当はコーラが飲みたいんだけどな、材料が足りないのかコーラという飲み物がこの世界にないのか(おそらく後者だろう)、レシピは表示されなかった。

「クルトも遠慮なく食え! 命令だ!」
「は、はい!」

 放っておいたら、こんないい匂いのする食べ物、僕が食べていいわけありません。と言い出しそうなので、命令をする。
 ルシルも普段はおかしばかり食べているんだが、ピザに興味を持ったのか、一緒になって食事をしている。

「あ、これおも()ろい」

 伸びるチーズの感触に、ルシルはご満悦。
 コメットちゃんとタラもおいしいと言って食べてくれた。
 そして、サイダーを飲んだときの反応は予想通り。

「あ、口の中がパチパチする」
 とルシル。思わぬ感触にこちらもうれしいようだ。
 一気に飲み干して、小さいゲップをした。もっと上品にしろよ。 

「ひっ……ひっ……吃逆がひっ……とまりひっ」
 とコメットちゃん。あぁ、いるよな、炭酸を飲むと吃逆出る人。

「これは水割りの水の代わりに入れたらよいのでは」
 と、炭酸割りを早くも発案したタラ。今は未成年だから酒は飲むなよ。

 そんな感じで俺たちはピザパーティーを楽しんだのだが、クルトだけは例外のようで、とても辛そうだ。

「クルト、どうした? まさか、俺が一枚だけに仕込んだ激辛タバスコピザを――」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ! 水、水!」
「――食べたのはルシルのようだが、どうした? 口に合わなかったのか」
「い、いえ、こんなにおいしい物、生まれて初めて食べました」

 好きじゃない食べ物を無理して美味しいと言っている。
 その可能性もあったが――

「うぅ……コーマ、一枚だけものすごい辛いのがあったの。なんなの、あれ。あれが料理なの?」

 涙目でルシルが水を飲みながら言う。

「お前が料理を語るなよ」
「それにしても、コーマの連れてきた子、本当にコーマそっくりね」

 ルシルはクルトには聞こえないくらいの小さな声で話し始めた。

「は?」

 クルトが俺そっくり?

「コーマは自分の命と私の命、どっちを優先する?」
「あぁ? そんなの決まってるだろ」

 考えるまでもない、と俺は即答した。

「ルシルの命に決まってる」
「……まぁ、コーマはそう言うわよね」

 ルシルは嘆息を漏らした。

「コーマから事情を聞いたときに思ったんだけど、あの子、自分の命よりも父親の命のほうが優先順位が高かったんだと思う」
「…………まぁ、そんな感じだな」

 例え殴ってこようとも親は親。素直ないい子であればこそ、そこは絶対に変わることはない。なのに、それなのに親を殺してしまい、彼には死罪すら与えられず生きることを選ばされた。

 もしも――絶対にあってはならないとはいえ、ルシルが俺よりも先に死に、俺が何事もなく生きながらえたら。
 俺は自害することはできないだろう。ルシルがそれを望まないから。
 でも、俺は自分自身を許すことができないまま生きていくことになる。
 ならば、自分を罰してくれる人を待つかもしれない。

 クルトにとって、その人が俺だったのか。
 でも、そんな生き方辛すぎるだろ。

「クルト、飯を食い終わったらすぐに仕事に取り掛かるぞ」

 クルトが食事を食べ終わったのを確認して俺が言うと、

「はい、すでに食事は終了しました。後片付けをいたします」
「あぁ、後片付けはコメットちゃんとタラに任せていいかな?」
「しかし……」

 片付けは自分の仕事であることを主張しようとしたクルトだったが、

「クルトくん、首輪はしていませんが、私もコーマ様の従魔で奴隷なんです。なので片付けは任せてください」
「そういうことだ。主曰く、クルト殿しかできない仕事があるとのこと。雑務は某達に任せよ」
「……わかりました。お願いします」

 うんうん、コメットちゃんもタラもいい先輩だな。
 そして、俺は空いているテーブルで作業を開始することにした。
 まずは診察メガネでクルトを調べる。

【HP89/89 MP32/32 隷属】

 奴隷の首輪をしていると、隷属という状態異常になるのは知っていた。
 装備による状態異常なので薬を飲んでも回復できない。

 これから錬金術のスキルレベル上げを行う。
 ちなみに、錬金術についておさらいすると、錬金術とはアイテムからアイテムを作り出す技法。
 例えば、薬草と蒸留水からポーションを作る、みたいな感じだ。
 それはアイテムクリエイトとあまり変わらない。
 アイテムクリエイトとの違いは以下の通り。

・アイテムによって作成時間が異なる。
・アイテムを作成するにはレシピを修得する必要がある。
・錬金術レベルが低いと作れないアイテムがある。
・MPを消費する。

 の四点だ。錬金術師のフリをする必要もあるだろうから、錬金術についてはいろいろと調べてある。
 ちなみに、レシピだが、白紙スクロール単体から作ることができ、レシピの内容によってレア度が変化する。

……………………………………………………
レシピ(レベル1)【巻物】 レア:★

錬金術のスキルを持つ者が読むと特定のレシピを覚えることができる。
読み終わると、白紙スクロールに姿を変える。レベル1のレシピ
……………………………………………………

 レベル1、つまり錬金術レベル1でも覚えて、作ることのできるレシピということだ。
 これで覚えたレシピアイテムを作成したら経験値が溜まっていき、レベルが上がる。
 内容は蒸留水。
 材料はほぼ無限に近い量がある。
 なぜなら、蒸留水は水、海水だけでなく、作成した蒸留水を材料にしてさらに純度の高い蒸留水を作ることができる。
 錬金術のレベル上げにはもってこいらしい。

「よし、クルト。バケツに海水を汲んで来い」
「はい、わかりました」

 クルトはダッシュでバケツを持って走り、いっぱい入った水を持って帰ってきた。
 タイム、17秒97。いや、ノリで言っただけで、計っていないが。

「別にそんなに急がなくてもいいから。じゃあ、これを読め」

 俺はクルトにレシピを渡した。

「……申し訳ありません、僕は文字をまだ学んでいなくて」

 そういえば、クルトは基礎勉強を受ける前の奴隷だったな。
 でも、レシピは確か文字の意味とか関係なかったはずだ。

「いいから読め。内容なんて気にしなくていいから」
「わ、わかりました」

 読むこと3分。レシピの文字が消えたとクルトが言ったので、成功のようだ。

「よし、クルトにはまずは海水から蒸留水を作ってもらう。手をバケツの上におき、アルケミー! と叫ぶんだ」
「…………わかりました。【アルケミー】!」

 声が響いた。
 クルトの大声に、ルシル、コメットちゃん、タラの注目も集まる中――それはできた。
 クルトの手のひらから水滴が一粒。

……汗じゃないよな?

 診察メガネで確認すると、

【HP89/89 MP17/32 隷属】

 おぉ、しっかりMPが減っている。
 ということは成功してるのか。

「よし、クルト、成功だ! もう一度やってみろ」
「は、はい! アルケミー!」

 先ほどより控えめな声だが、やはりクルトの手のひらから水滴が零れ落ちた。

【HP89/89 MP2/32 隷属 MP枯渇】

 新たな状態異常が現れた。
 確か、MP枯渇状態で魔法を使えばHPが減るんだったかな。
 HPが減っていなくても脱水症状を起こしたみたいにふらつき状態になるはず。

「よし、よくやった。次はこれを飲め。不味いが我慢しろ」
「はい」

……………………………………………………
マナポーション【薬品】 レア:★★

MPを小回復する青色の薬。魔術師の必需品。
ちょっと不味いのはご愛嬌。
……………………………………………………

 俺も飲んだことあるが、そこそこ不味い。
 でも、クルトは躊躇せずに飲み干した。
 流石は過酷な環境に身を置きたがる少年だな。

「よし、じゃあもう一度、アルケミーだ!」
「はい! アルケミー!」

 こうして、途中でトイレ休憩をはさみながら、俺とクルトの錬金術練習は続いていった。
 本来は3ヶ月はかかるという錬金術レベル2への道が一晩で終わった。そのころには、クルトもさすがにへばっていたが、一度も文句を言うことなく蒸留水を作ってくれた。

 さて……クルトは頑張ってるが、クリスは頑張ってるかね?

 離れ離れになった女勇者に思いを馳せる。
 そろそろ連絡が来ると思うんだが。
 あいつはきっと順調に――

「誰かに騙されているだろうな」

 確信をもってそう呟いた。
まさにパワーレベリングですね。

ストックも少し減ってきたので、ストック溜まるまで1日1話更新が続きそうです。
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