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異世界でアイテムコレクター 作者:時野洋輔

Episode02 呪いの剣

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死者の杯は魂を受け継ぐ

 私は感じていました。

 コーマ様が私の敵をとってくれたんだと。

 ありがとうございます、コーマ様。

 でも、その感謝の気持ちを私はコーマ様に伝えることができません。

 別れを告げることもできません。

 だって、私は――

《コーマ様とお話がしたいの?》

 え?

《私も、コーマ様ともっとお話ししたいです》

 あなたも?

 あなたは――一体、誰なんですか?

《私の名前は――》

 彼女は名前とともに自分の正体を明かしました。それは、にわかには信じられないものでした。

 そして、彼女が語ったのは――




   ※※※

 通信イヤリングが大きく揺れる。

 目を開けると、見慣れた石の天井が見えた。
 魔王城……そうか、俺、生きていたのか。

 通信イヤリングを握る。

『コーマさん! 無事ですか!』
「……クリス、うるさい……あぁ、頭いてぇぇ」

 クリスの声が俺の頭に響き渡る。

『頭!? 頭を打ったんですか?』
「いや、お前の声がうるさいだけ……あぁ、クリス、無事だったんだな」

 意識がぼんやりとだが回復してきて、あの時、クリスが大けがを負っていたことを思い出す。

『はい、ですが気が付けばコーマさんの姿がどこにもなくて――今どこにいるんですか?』
「病院だ……悪い、意識失ってて連絡取れなかった……」

 平然とウソをつき、

「あれからどれだけ時間がたったんだ?」

 そう尋ねた。腹の空き具合からみて、1日くらい寝込んでいたかもしれない。

『三日です』

 三日か……ずいぶん眠ったもんだ。
 その間、もしかしたらずっと看病してくれていたのかな。

 俺の身体に寄りかかるように眠るルシルを見て、俺は少し嬉しくなった。

 そして、クリスは語った。
 あの後、ギルド職員がかけつけ、ゴーリキの身柄が取り押さえられたこと。
 昨日まで事情聴取が続き、そしてそのまま死刑が執行されたこと。

 風の騎士団という町外の人間が殺された事実を重く見ての迅速な判断だった。
 結局、死んでしまったのか、そう思ったが、クリスは語った。

『ゴーリキさん、言ってました。【おかげで人として死ぬことができる。感謝する】、そうコーマさんに伝えてほしいって』
「そうか……そうか、悪い、クリス、ちょっと休んだら明日顔を出すわ……」

 今日は休ませてくれ。
 そう言い、俺は嘆息を漏らした。

 三日か。
 部屋を見回しても、コメットちゃんの魂は見当たらない。
 星に還ったのか。

 別れを告げることすらできなかったな。
 涙が溢れ出てくる。
 くそっ、笑顔で見送ってあげようって思ってたのにさ、なんだよ、これ。
 見送ることすらできなかったのに、なんで涙しか出てこねぇんだよ。

「……コメットちゃん」

「呼びましたか? コーマ様」 

 ……?

 声が……はっきりと聞こえた。
 コメットちゃんの声がはっきりと。
 でも、なんで?
 彼女は――

「おはようございます、コーマ様」

 俺は上半身を起こし、声のした方向を見た。

 そこにいたのは――少し背が低くなって、犬耳と猫髭を生やした――コメットちゃんだった。

「な、なんでコメットちゃんが」

 死んだはずなのに。転生した、というにはすでに大人の姿だし。
 それに、なんで犬耳や猫髭が生えてるの?

「私は確かにコメットです。でも、コーマ様、私の姿を見て気付きませんか?」
「姿?」

 なんだ? 耳の形、質素な服、それに髭……もしかして、

「もしかして」
「はい、グーです」
「グーっ!?」

 え? なんで?
 もしかして、幽霊になってグーに憑りついたとか? 憑依?
 俺は思わず立ち上がった。
 そのため、俺に寄りかかっていたルシルが床に倒れ、「いたっ」といって頭をさすり、俺を見上げる。

「あ、起きたの、コーマ」
「起きたの、じゃない、どうなってるんだ?」
「どうなってるもこうなってるも、コメットとかいう女の子の魂がグーと共鳴しちゃったから、死者の杯に魂と水を入れて、グーに飲ませたのよ。グーもそうしたいって言うから」

 そうしたら、こうなった、とルシルは事もなげに説明する。こうなったって。
 そもそも死者の杯は契約者の魂を封じて、その魂を力と一緒に他者に流し込むアイテムじゃなかったのか?
 しかも、魂が食い合って、残った人格しか残らない。そういうもののはずだ。
 現に、あの時俺は自分を失いそうになったというのに。

 だが、ルシルが言うには、アイテムの効果を一つに纏めて考えるのはダメだと言う。契約者の魂を封じる能力、そして魂を他者に移す能力、二つの能力が存在するのが死者の杯なのだと。だから、後者の能力だけを使ったそうだ。
 本来なら食い合うはずの魂が、共鳴したことで融合していっていると話した。
 魂の共鳴は滅多にあることではないそうだが。

「じゃあ、生き返ったのか?」
「グーとコメット、二人で一人になったという感じですね。グーはコーマ様と人間の言葉でお話をしたかったとずっと願っていました。コメットはもう一度コーマ様と会ってお話がしたいと願っていました。二人とも幸せな共存関係です」

 コメットちゃん、そしてグーは両手でVサインをした。
 今でこそ、頭の中に二人がいるような感じだが、あと半月もすれば二人で一つの人格として形成される。
 でも、それは自分が自分でなくなるというよりかは、新しい自分になる、そういう感覚だろうと語った。

「そうか、よかった」

 そう言い、俺は彼女を抱きしめた。
 壊れてしまいそうなガラスの宝石を扱うように、大切に抱きしめた。
 形はどうであれ、もう一度こうして会うことができてよかった。

「はい、コーマ様。あなたにまた会えて、本当によかったです。これはコメットの気持ちです。本当に……本当に幸せです」

 彼女は俺を抱き返す。

「コメットちゃん……グー……って名前なんて呼べばいいかな」
「あ、それはコメットでお願いします。グーは正直自分の名前には不満がありましたから」

 そう言ってコメットちゃんはルシルを見る。俺もルシルを横目でみる。
 うすうす勘付いてはいたんだけど、やっぱりあの名前、嫌だったんだ。そりゃ、あれだけ真面目に働いていてグー・タラはないよな。

「でも、本当にうれしいよ、コメットちゃん……また会えるなんて」
「私もです。コメットの私からしたら、コーマ様が魔王だということは驚きですが、でも、優しい魔王様って、コーマ様らしいと思いますよ」

 あぁ、優しい魔王様の下りはもちろん知っているんだな。

「そっか。でも、流石にその姿だと地上に戻るのは難しくなるな」
「ですね。あっちじゃ私、死んだことになってるんですよね」

……俺が無言で頷くと、やっぱりコメットちゃんは少し寂しそうに、

「メイベルさんたちや孤児院のみんなに会えなくなるのは寂しいですけど、こっちにはコーマ様がいますし、ルシル様やタラもいますから」
「そうか、そう言ってもらえてうれしいよ。でも、タラのやつも驚いただろ、グーが人間の姿になるなんて」
「あ、その点は大丈夫です。タラ、入ってきなさい」

 大丈夫?
 何が大丈夫なんだ?

 そう思うと……見知らぬ少年が室内に入ってきた。
 獣耳と猫髭はコメットちゃんと同じ。
 褐色の肌に、紫の髪のかわいらしい少年だ。それだけなら、女の子と間違えそうなほどなのだが、上半身裸で……どこで手に入れたのかワニのような獣の骨を頭からかぶっていて……

「お前、まさか」
「某はあなたに仕えさせて頂いているタラです。人間だった頃の無礼をお許し願いたい。コーマ殿を主と仰ぎ、永久の忠義を誓う所存です」
「いや、待て! 落ち着け、俺。落ち着け。お前がタラだということは百歩譲ってわかった。なら、教えてくれ。お前が人間だった時の名前はなんだ?」

 俺の予想が正しければ、いや、予想なんてもんじゃない。
 むしろ確信でしかないんだが、万が一ということもある。 

「ゴーリキです。ですが、某のことはタラと――」

 やっぱりかぁぁぁぁっ!

 こうして、俺の魔王軍に新たな、いや、身体のベースはグーとタラだから新たじゃないんだけど、それでも仲間が加わった。
 魂の共鳴って滅多にないんじゃなかったっけ?
 そんなことを思ってしまう。
~死者蘇生アイテム~
死者蘇生アイテムとしては世界樹の葉(もしくは花)や、フェニックスの尾(本来の意味での死者蘇生アイテムではないけど)などが有名ですが、これらの道具を使っても、仲間以外の人間が生き返ることは少ないです。

 一番死者蘇生としてのイメージでいえば、やっぱりドラゴ○ボールですね。

 私は死者蘇生アイテムというのはあまり好きではありません。
 死が軽くなります。死んでもあれがあるから別にいいや、みたいな。

 でも、どうしてだろう。
 コメットちゃんを殺したままなのは、もっと嫌だった。
 作者のわがままでもいいから、コメットちゃんには本当に幸せになってほしかった。
新作紹介 そのスライム、ボスモンスターにつき注意
スライムに人外転生した男がダンジョンのボスになり、いろいろと面白おかしく生きるファンタジーコメディーです!
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