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異世界でアイテムコレクター 作者:時野洋輔

Episode02 呪いの剣

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勇気の証は木のブローチ

~前回のあらすじ~
クリスとコーマ、心に火がつきました。
 通り魔事件の被害の拡大により、町を出歩く人は少ない。
 夕方にもなると尚更だ。
 メイベル達に連絡を取り、映像送信器の多い帰り道を指示、事件が終息するまで店は臨時休業にするように命じた。
 あの寮内なら水も食糧も十分にあるし、建物も頑丈だ。万が一にも襲われる心配はないだろう。

 俺はアイテムバッグから、さっき作ったアイテムを取り出す。
 材料をそろえるのにかなりの手間がかかった。特に「風切羽」というアイテムが品薄のため目的のものが10個しか作ることができなかった。

……………………………………………………
魔法模型(鳥)【魔道具】 レア:★★★★

鳥の形をした魔法模型。命令した場所を飛ぶ。
稼働時間は3日。魔力の補給か魔石の交換で再度飛び立つ。
……………………………………………………

 つまりは自動で動くラジコンヘリみたいなものだ。
 あまり重いものは運べないが、小石程度の大きさの映像送信器なら楽に持ったまま飛べる。
 映像送信器を足に括り付けて、鳥の模型を空へと放った。

「ルシル、いけるか?」
『うん、見える。空から町を見下ろすって面白いわね』

 面白がってる場合じゃないんだが。
 映像受信器も9個新たに用意した。
 それで、空からの映像を、わざわざチャンネルを切り替えることなく見ることができる。
 ゴーリキは頭に獣の骨をかぶっているから動けば目立つだろうからな。

 俺は町中を駆けずり回り、魔法模型を空へと放った。
 地上から見上げるその模型の姿は本物の鳥と見比べても遜色のないものに仕上がっている。
 ちなみに、稼働時間が少なくなれば、フリーマーケットの屋上に軟着陸するように命令を加えているため、どこかに落下する恐れはない。

 十羽目の鳥の模型を空へと放ったところで、俺はクリスとの待ち合わせの場所に向かった。
 場所はいつもと同じ冒険者ギルドの前。
 約束の時間より少し早いが、すでにクリスは待っていた。
 そして、賞金稼ぎのスーも一緒にいるようだ。
 一緒に行動していることはクリスから聞いていた。
 今回の事件は少しやばいということで、シーは宿で待機しているということも聞いている。

「お待たせしました。すみません、スーさん」
「いや、私も先ほど来たところだ。それより、昨日は助かった、改めて礼を言うよ」

 昨日の? あぁ、あの薬のことか。
 気にしなくてもいいんだけどな。ただのアルティメットポーションだし。

 ていうか、聖杯のせいで絶賛量産中だからな。消費できてこっちは助かったくらいだ。

「気にしないでください、余ってた薬なんで」
「余ってた? 効き目がよくてシーも不思議がっていた。私も同意見だ。余っているなら売って欲しいんだが」
「困りますよ、この戦いで使うかもしれないんですから」
「そうだな、確かに」

 スーはそう言って頷く。納得してくれたようだ。
 戦いが終わったら譲ってほしいと言われるだろうが、断ることにしよう。
 使い切ってしまったとか適当に言って。

「それより、クリスティーナから伺ったのだが、あなたの本職は鍛冶職人で、多くの武器を所蔵しているとか」
「え?」

 鍛冶職人?
 ……………………あぁ、そうだったそうだった。
 クリスにプラチナソードや鋼鉄の剣を売ってやった時に、俺が作ったみたいなことを言ったんだった。
 てっきりその設定を忘れていた。

「あぁ、はい、そうです」
「ならば、今回の戦いに役立つような武器はないか?」
「ちょうどよかった。俺もスーさんに使ってほしい武器をいくつか持ってきたんです」

 そう言って、俺はアイテムバッグから作ってきたアイテムを出す。

……………………………………………………
毒刃短剣【短剣】 レア:★★

毒を仕込みやすい形状の短剣。
毒液に3分浸すと完成する即席暗器。
……………………………………………………
プラチナダガー【短剣】 レア:★★★★

白金で作られた、魔法攻撃をも切り裂く短剣。
芸術性もさることながら、その威力に多くの者が虜となる。
……………………………………………………
麻痺毒【薬品】レア:★★

麻痺毒の液体。血液の中に入ることで身体を痺れさせ、動けなくする。
蛇毒ベースなので、飲んでも害はないが、おいしくないです。
……………………………………………………

 さらに、もう一本。合計3本の短剣を取り出した。

「へぇ、変わった形の短剣が……え? これプラチナダガーじゃない!?」
「ええ、まぁ、貸しますんで使ってください」

 使って、って言われても……と、スーはちょっと困ったようにプラチナダガーを見た。

「この()本の短剣、いつ作ったんですか?」

 クリスが俺に尋ねた。
 それに答えるのもやぶさかではないが、それより面白い実験結果が得られた。

「……クリス、やっぱりお前には短剣は2本に見えるか」
「え? 2本ですよね?」

 クリスが真顔で言うと、スーは困った顔になる。

「3本……あるわよね?」
「あぁ、スーさん、これ、3本目の短剣の効果」

 俺は3本目の短剣の説明文の書いた紙を渡し、俺自身も鑑定眼で3本目の短剣を見る。
 スーは3本目の短剣の説明文を見て、かなり複雑な顔をした。
 そして、説明文とクリスとを見比べる。

……………………………………………………
裸の王様ダガー【短剣】 レア:★★★★

バカには見えないダガー。バカじゃない人には見えます。
判断の基準は短剣の気分で決まります。 
……………………………………………………

 ネタアイテムだ。本当にネタアイテムなのだが、今回の戦いには役立つ。
 何しろ、ゴーリキはブラッドソードのせいで知能を奪われているからな。この短剣は見えないだろう。
 ルシルにはしっかり見えていたから不安だったんだよな。
 つまり、馬鹿のボーダーは、ルシルとクリスの間ということなのか。
 まぁ、ルシルはああ見えて魔法の技能は天才的だからな。
 もしかしたら、短剣から見る賢さの基準なら、俺よりルシルのほうが賢いかもしれない。

「コーマさん、私の新しい剣とかはないんですか?」
「ない。お前は使いなれた剣を使え。ただし、こっちは用意してある」

 俺は緑色のスカーフを取り出す。

「コーマさん……これ」

 クリスも気付いたようだ。コメットちゃんの葬儀の日、疾風のスカーフを一緒に埋めた話はメイベルから聞いている。

「俺が昨日、コメットちゃんにあげたものと同じものだ」
「あのスカーフ、コーマさんがあげたんですか」

 隷属の首輪を隠すためにプレゼントした。
 最初で最後のプレゼントになってしまったけど。

「身のこなしがよくなるスカーフだ。少しは戦いの役に立つと思う」
「……ありがたく使わせてもらいます」

 クリスもコメットちゃんのことを思い出したのだろう。
 寂しそうな笑顔でスカーフを首に巻き付けた。
 装飾装備は2種類まで装備しても効果がある。
 3種類以上の装飾装備をつけた場合、弱い力のものから効果を失うらしい。

 最後に、恒例となった、力の妙薬をスーとクリスに渡す。
 スーは俺から受け取った数々の品を見て、

「あの、もしよかったら私の従者にならない?」
「は?」
「私、今のところ従者はシーしかいないから枠に余裕があるし」
「いや、待て、なんでそうなる?」
「あなたの鍛冶の特性は、私の元でこそ発揮できると思うの!」

 なるほどな。
 確かに、変わった武器を作る俺の実力はスー相手なら発揮できるだろうな。
 バカ正直に剣一本で戦うクリスは猪突猛進、アイテムの特性を活かしきれるとは思わない。
 ちらっとクリスを見ると、かなり慌てた顔をしている。
 なのに、引き止められない、という表情だ。
 バカな勇者のクリスには、俺の気持ちを尊重したい、なんて考えもあるんだろうな。
 ま、あまりいじめるのも可哀そうだしな。

「悪い、俺はクリスの従者だからな」
「……コーマさん」

 クリスは感激のあまり目をうるうるさせているが、

「このバカを面倒みないと、こいつは絶対財産全部騙し取られるだろうからな」
「え?」

 クリスは涙をふき取り、「そんな理由はイヤ」と呟く。
 スーも、俺の渡した「裸の王様ダガー」の説明文を見て、納得したらしい。

 だが、この勝負、最後の鍵はやっぱり俺のあのアイテム。

 勝負はあの一瞬で決まる。
 だが、失敗したら俺は絶対に無事では済まない。
 やべぇな、少しビビってきた。

「あ、そうだ! コーマさん! これ」

 クリスが俺に渡したのは……木のブローチだった。
 いびつな形をしていて、鑑定眼がなければそれがブローチかどうかもわからない。

……………………………………………………
木のブローチ【装飾】 レア:★

木製のブローチ。木片をブローチの形に削っている。
特別な効果はない。
……………………………………………………

 ただ……このブローチの書かれた剣のような模様……どこかで。
 ふと視線をずらす。
 すると、これのモデルになったアイテムがあった。

……………………………………………………
勇気の証【装飾】 レア:★★★

勇気を持つ者に贈られるブローチ。
僅かだが腕力がアップする効果がある。
……………………………………………………

 正式名称勇気の証。
 だが、そのアイテムは多くの人にこう呼ばれている。
 勇者のブローチと。

「それ、孤児院の女の子から、勇者のお兄ちゃんに渡してほしいって頼まれたんです」
「……勇者のお兄ちゃん……ね」

 ったく、俺の本業は魔王でアイテムマスターなのにな。
 副業ですら勇者の従者でしかないっていうのに。

 それでも、これを付けたら、もうビビってはいられないな。

「さて……準備も終わったし……テンプレ展開だとそろそろ」

 予想通り、通信イヤリングが反応した。
 ルシルからだ。

『コーマ、7番鳥が発見したわ。』

 7番鳥……北西の方角に飛ばした鳥か。

「二人とも、情報屋から情報だ。ゴーリキを見つけたらしい」

『ちょ、誰が情報屋よ!』

 ルシルが文句を言うが、俺はそれに取り合わない。
 今度こそ、決着をつけてやる。
クリス、最初はちょっと不幸なお姉さん、というキャラ設定のはずだったのに。
完全なおバカキャラになってます。
この場合のバカの基準は曖昧なんですが。
+注意+
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