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異世界でアイテムコレクター 作者:時野洋輔

Episode02 呪いの剣

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見回り重視の監視カメラ

~前回のあらすじ~
コメットちゃんはコメ姉と呼ばれていた。
 一時間かけて、俺はクリスと待ち合わせの、冒険者ギルドの前まで歩いて戻った。
 太陽も傾き、夕方と呼べる時間になろうとしている。
 通信イヤリングを使いクリスと連絡を取ろうかと思ったが、冒険者ギルドの前で立って待っているクリスを見つけて小さく吐息を漏らした。
 なんでバカ正直に外で待ってるかなぁ。
 声をかけようとしたら、俺より先に箱を持った別の男がクリスに声をかけていた。
 ナンパか?
 まぁ、クリスは見た目は美人といってもいいからな。男に声をかけられることもあるだろう。
 そっと近付いていき、クリスの近くで聞き耳を立てることにした。

「だから、お金がないからこそ手に入れるべきなんです」
「……しかし」
「この幸運の壺を買った人は漏れなく大金持ち、家族の病気は治り、恋人も見つかるという御利益があるんです。というのも、大神官メポタミアン様が3ヶ月かけて祝福の祈りを捧げた壺なんですよ」
「あのメポタミアン様が! それは凄いです……が、銀貨30枚というのは」
「銀貨30枚がお高いと? お客さん、一生の健康とそれ以上の利益が得られる壺ですよ。あぁ、買わないなら、別の人に売りますので」
「ま、待ってください、もうすぐ私の従者が来ますから金を借りて」

「貸すかぁぁぁぁぁっ!」

 思いっきりひっぱたいてやった。
 みえみえの霊感商法じゃねぇか!


「あんたも、こんなところで詐欺をするなっ!」
「な、お客さん、詐欺なんて人聞きの悪い」
「そんなご利益のある壺をわざわざ売る人間なんていないだろうが! もしこれ以上ここにいるなら、レメリカさん呼んでくるぞ」
「ひっ、失礼しました!」

 やはりレメリカさんの名前は凄いらしく、男の顔がみるみる青ざめ、一目散に走って行った。
 逃げるのに邪魔だったのか、壺は置いていかれた。

「で、クリス。何か弁明は?」
「……この壺が本物という可能性は?」
「あるかぁぁっ!」

 俺は壺を大事そうに抱えたクリスの頭をひっぱたいた。
 いやぁ、それにしてもいい武器を作ったもんだ。

……………………………………………………
はりせん【扇】 レア:★

叩くと激しい音がなる紙で作った大きな扇。
殺傷能力はない。客寄せに使うと良い。
……………………………………………………

 これでクリスの頭もルシルの頭も叩き放題だ。

「で、俺を呼んだ用事ってこの壺のことか?」
「違います! 風の騎士団の件についてお話ししようと思いまして」
「そっか。場所を変えるか」

 道端で話す内容ではない。
 メイベルは俺に連絡する関係上レメリカさんから話を聞いたのだろうが、風の騎士団が全滅したという情報はほとんど出回っていない。
 風の騎士団が殺された理由が、暗殺なのか、それとも凄腕の通り魔の犯行なのかもわかっていない状況で、風の騎士団が全員殺されたという情報だけが与えられたら町はパニックになるだろうからな。
 箝口令が敷かれているのは間違いないだろう。

「あの、それで、ユーリ様がぜひコーマさんのお知恵を拝借したいと」
「俺の?」
「はい。ユーリ様がコーマさんと二人きりで話したいそうなんです」
「二人きり?」

 三人きりの間違いじゃないのか?
 ユーリにはルルがいつもついているからな。
 とはいえ、俺もあの二人とは話をしたかったことがある。

「じゃあ、行ってくるわ。クリスはどうする?」
「ここで待ってます」
「そっか、じゃあすぐに帰るけど、変な詐欺師にひっかかるなよ」
「はい!」

 返事はいいんだよなぁ、返事は。
 そう思いながら冒険者ギルド内へ。
 ここに来るのも勇者試験が終わってからは初めてだな。

「お待ちしておりました、コーマさん」
「レメリカさん、御無沙汰しています」
「本当にお久しぶりですね。コーマさんの作った店のせいで、私の仕事は3倍以上になっているのに挨拶もないとは一体どういう了見なんでしょうか。人間としての最低限の礼儀も持っていらっしゃらないのですか? 10文字いないでお答えください」
「ごめんなさい」

 6文字の謝罪を選んだ。だが、これがまずかった。

「ごめんなさい? 随分薄っぺらい謝罪の言葉ですね。私は理由を聞いているのであって謝罪を求めたのではありませんよ。人間としての挨拶ができないとは、あなたはゴブリンですか? なんならゴブリンのいる迷宮を紹介しますから、一緒に同棲生活でもしてみますか?」
「本当にすみませんでした」

 結局11文字の謝罪でも許されず、レメリカさんの愚痴の混じった怒りは続いた。
 横から他の職員さんに、「レメリカ、最近一週間ほどまともに寝てないの。ごめんね」と言われて、俺は仕方なく彼女の愚痴を受け止めることにした。 
 それにしても、相変わらず凄い威圧感だ。流石冒険者ギルドの懐刀だけのことはある。俺の勝手な想像だけど。

「言い足りませんが、ユーリ様がお待ちです。では、御案内します」

 従業員専用の階段を上がり、二階へ。
 その一番奥の部屋に入ると、ユーリとルルの二人がいた。
 レメリカが、「それではこれで」と帰っていく。

「よくおいで下さった、コーマ殿。先日のドラゴン退治の時には世話になった」
「いえいえ、あのおかげでうちのクリスも勇者になれたようなものなので。二人きりで話をすると伺っていたんですが」

 俺はちらりと幼い少女、ルルへと視線を移した。

「申し訳ない。ルルがどうしても離れないんだ。だが、ここでの話を他言するような子ではないのは私が保証する。彼女はいないものと思って話を続けようではないか」
「……わかりました。それで、俺をここに呼んだ理由はなんなんですか?」
「フリーマーケット。君がオーナーをしている店だね」
「なんのことでしょう?」
「とぼけるのはやめてくれたまえ。君の店の開店手続き書類にはギルドマスターである私の承認印が押されているのだよ」

 だよな。レメリカさんに情報が渡っている時点で、ユーリに情報が渡っているのは当然考えていた。

「妙な魔道具の多い君の店だ。今回の事件に関して役立つ魔道具を提供していただけないかと思ってね」
「……事件の内容を聞きませんと」
「わかった。とはいえ、私も多くは知らない」

 ユーリは語りだした。
 昨日の昼過ぎに、風の騎士団が何者かによって殺されたこと。
 凶器が剣であること。その殺され方の特異性。
 そして、同じような事件がスラム街で起きていたのに、これまで冒険者ギルドが全く動かなかったこと。

「なんで動かなかったんだ? 貧乏人は生きようが死のうがどうでもいいってことなのか?」
「スラム街にはスラム街の秩序がある。私達が介入すればその秩序が崩壊する」
「……じゃあ、その犯人はスラム街に潜伏している可能性が高いんじゃないか?」
「その可能性はある。だが、前後の事件が関連していない可能性も高い」

 確かに、スラム街の犯行を通り魔的なものと置くなら、昼間にわざわざ風の騎士団をターゲットに選んで殺すのは腑に落ちない。

「アイデアとしては見回りの強化しかないですね」
「そうか……いや、すまない。何かあったらと思っただけだ」
「見回りにもってこいのアイテムがありますから、貸しだしますよ」

 俺が用意したのは、日本の防犯システム上お約束のアイテム。映像送信器と映像受信器。
 とどのつまり、監視カメラセットだった。
 もちろん、調整は加えて映像受信器にはルシルの迷宮に配置してある映像送信器の映像は受信されないようにしてある。
 魔王城に置いてある映像受信器からは全ての映像送信器の映像が受信できるが。
 さらに通信イヤリング。
 トランシーバー代わりに使える。
 実は、昨日の時点からこうなることを予想してアイテムを作り続けていた。

 試しに室内で使ってみると、ユーリは大いに驚き、

「これは凄い。さっそく町中に配置しよう」

 料金はレンタルということで控えめに請求した。
 あぁ、銀貨5枚くらいでいいか。
 ただし、壊したり、無くしたりしたら弁償してもらう。
 その場合の値段も伝えた。たぶん、かなりの高値だと思ったが、ユーリは顔色一つ変えずにそれを受け入れた。

「喜んでもらえてうれしいです。俺の用事も片付いたし、帰りますね」

 最近はまともに寝ていないからな。
 たまには魔王城に戻ってタタミの上でだらだらと休みたい。
 ルシルの料理もそろそろ魔王城を抜け出し、地上を目指している頃だろう。
 10階層に到着するまえに、また適当な空き巣を見繕わないといけないけど、今日一日はゆっくり寝よう。
 フリーマーケットの裏口も鍵を閉めてもらうか。
 なんて思っていたら、ユーリから、

「あぁ、夜の見回り、期待しているよ」
「……夜の見回り?」

 思いもよらない言葉を賜った。
 なんですか? それ。

「勇者クリスティーナの提案でね。君たちは今日から毎日夜、町を見回りするそうだね」

……あの超絶お人よし勇者め! 俺を巻き込むなぁぁぁっ!

 どうやら、まともな睡眠というのは俺に与えられるものではないらしい。
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スライムに人外転生した男がダンジョンのボスになり、いろいろと面白おかしく生きるファンタジーコメディーです!
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