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異世界でアイテムコレクター 作者:時野洋輔

第一部 東大陸編 Episode01 勇者試験

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畳の上の魔王様

~前回のあらすじ~
チートアイテム作成に成功しました。
 力の神薬を作ってから5日、この世界に来てから6日になった。
 いろいろなものを作ってみたが、そろそろ部屋の改造をしないとな。さすがに石の床で寝るのもきついと感じるようになってきた。
 そのために、俺は大量に草をとってきた。
 薬草と違い、本当にただの雑草だ。
 ただし、この雑草を一定量集めるとできあがるものがある。

「アイテムクリエイト!」

……………………………………………………
畳【家具】 レア:★★

乾燥させた草を編んだ床材。
草の上に寝転がるのが好きな方にお勧め。新しい方がいいです。
……………………………………………………

 一畳だけだが、畳ができた。
 い草とは違う種類の草なんだが、見た目や触り心地は日本にあるタタミと変わらないな。

「へぇ……草の床ね……」
「ちょっと待て、ルシル、そこからは靴で入るな! 畳の上は土足厳禁だ!」
「え? でも、これ、草なのよね、汚いんじゃないの?」
「お前が着ている服だって、麻や綿花なら原材料は植物だ。同じだろ?」
「私が着ているのは絹よ?」

 絹の原材料をこいつは知っているのだろうか?
 こっちの世界だとどうかは知らないが、絹は蚕の吐いた糸でできている。
 虫が吐く糸はOKで、草はNGとかそんな基準はおかしい。

「とにかく、タタミの上は土足厳禁だ」
「わかったわよ……」

 ルシルはタタミに乗るのをやめ、木の椅子に座った。
 とりあえず、タタミをあと11畳分は用意したいな。
 棚のところも、襖を用意したいし、卓袱台も作らないと。
 あと、布団と座布団、座椅子くらいか。
 それにしても、流石に腹が減ったなぁ。

 俺は日本から持ち込んだリュックサックの中をあさり、目当ての物を探すが、何故か、あるはずのものが見つからない。

「なぁ、ここに入れてあった栄養補助食品(カロリーメ〇ト)しらないか?」

 朝にはまだまだ残っていたはずなんだが、見当たらない。

「あ、あのお菓子なら食べたわよ!」
「は? 俺の唯一の栄養源だぞ」

 少なくとも数週間分はあったはずだ。
 それを全部食べただと?
 よく見たら、部屋の隅にゴミだけが残っていた。

「もう、コーマはアイテムマスターなんだから、ごはんくらい自分で用意できるでしょ」
「材料がないんだよ……てか、本当にどうするんだよ。迷宮の小麦畑の収穫なんてまだまだ先だぞ」

 あとは釣り道具はあるんだが、水汲み場の中の魚がいない。
 一週間前はいたはずなんだが、どこかに泳ぎ去ってしまった。
 小さな蟹がいて、コボルトのグーとタラはそれを食べているらしいが、一度食べたところ、殻はとても固く、身が少ない、正直食、べるために消費するカロリーのほうが高そうな気がする食材だった。

 となれば、薬草でも食べて生きるしかないか?

「じゃあ、人間の町に行ってきたらどうなの? コーマ、見た目だけならただの人間と変わらないし」
「俺はただの人間だ! まぁ、そうだよな……もう少しアイテムを作ってからと思ったけど」

 俺はそう言うと、とりあえず迷宮で拾ったゴミアイテムをカゴの中に入れた。
 その中から綿花っぽい草を取り出して、アイテムクリエイトで服と靴をアイテムクリエイトで作った。
 さすがに釣り用の防水ジャージとスニーカーは目立つからな。それに着替えていくことに。

「で、人間の町ってどういったらいいんだ?」
「転移陣を作るわね」

 そう言うと、ルシルは壁に魔法陣を描いた。

「これで11階層まではいけるわ。そこから10階層にあがって、人間の作った転移陣を使えば人間の町まで行けるはずよ」
「へぇ、便利だな……触るだけでいいのか?」
「そうよ。一応、コーマと私しか使えないように設定したから。あと10階層に行く時、人間に見られないようにしてよね」
「お前……大丈夫か? まるで凄い魔法使いみたいだぞ、キャラ設定ぶれてないか?」

 ルシルといえば何も食べなくても平気なのに大飯喰らいで、なのに料理が超下手。さらに、自信過剰なのに実力に見合わないドジっ子設定のはずだ。

「私は凄い魔法使いよ、コーマのバカっ!」

 頬を膨らませて悪態をついてくる。
 彼女が凄い魔法使いなのが嘘ではないのは知っている。
 俺を異世界から召喚した張本人だしな。なのに俺を元の世界に戻すことができない。それには理由があって、俺が悪いんだけど。
 まぁ、日本に戻れと言われたところで、今は戻る気はないが。

「じゃあ、行ってくるわ」

 作ったアイテムを入れたカゴを背負い、俺はルシルに一時的な別れを告げる。

「うん、お土産よろしく!」

 椅子に座ったまま手を振る彼女に……絶対何も買ってきてやらないと決意した。
 それにしても転移陣に触ったら地下11層までいっきにワープするのか。
 確か、ここって地下200層だとか言ってたよな。
 とすれば、一気に189層も上がるってことか。
 それって、もしかして音速を超えてないか?
 いや、ワープならば光速レベルなのか?
 ルシルの魔法でそこまで高度な魔法――失敗はないか?

「うん、やっぱり歩いて登るわ」
「私を信じていきなさい!」

 後ろからドロップキックをくらい、俺は頭から転移陣へと突っ込んだ。

 そして、気が付けば、俺は迷宮の中にいた。

「おぉ、凄いな、成功したぞ、ルシル……っていないか」

 目の前に蒼く輝く転移陣がある。
 これに触ったら元の部屋に戻れるのか。
 あと、階段……ではなく梯子が横にあった。
 梯子の上にある天井が大きく上に凹んでいる。
 あそこだけ天井が薄くなっている、つまり10階層の床が薄くなっているということだ。
 あそこから10階層にいけってことか?

 梯子を触ってみると、鉄の冷たい感触が伝わってくる。
 手入れがされているのか、素材の問題か、錆びている様子はない。
 迷宮に固定されているものはアイテムとして認識されないため、素材とかは調べることはできないが、鉄じゃないのかもしれないな。
 とりあえず強度を確認して、俺は慎重に梯子を上って行った。

 天井を押してみると、案の定動くようだ。
 押し上げるタイプではなく、横にずらすのか。

 とりあえず天井に耳をあてて、足音や話し声が聞こえないことを確認してから天井をずらした。
 そして、俺は10階層へと到着。
 隠し梯子は、空の宝箱の下に隠されていたようだ。
 そして、周りが壁に覆われている。隠し部屋なのだろう。

 隠し部屋を開けて、空の宝箱があれば、他の誰かがすでに探索を終えたのだろうとあきらめて帰るということか。
 床に固定された木製の宝箱をもとの位置に戻し、壁を触っていく。
 押すと、壁は扉のように動いた。まるで忍者のカラクリ屋敷だ。

 迷宮の中はどこも明るい。一部には、暗黒地帯という闇に覆われた場所もあるらしいが、そういうところを除くと明るいので、松明などを用意する必要もない。
 壁と天井、そして床もほとんどの場所が迷宮壁という特殊な材質で作られており、それが光っているらしい。
 光るだけならいいのだが、とても頑丈で掘ることも壊すこともできない。
 魔王城の周りの地面はただの土だが、それでも3メートルも掘れば迷宮壁に達する。
 せめて砕くことができたら、アイテムとして回収して素材として使えそうなんだけどな。

 とりあえず、地上へと続く転移陣を探さないとな。

 ここで改めて迷宮について、ルシルから聞いたことを思い出す。

 迷宮には3つの区域があるらしい。

 地下1階層から地下9階層までの一般階層。
 魔物も出るしアイテムも生み出される。

 地下10階層。ここは特殊な場所で魔物もでないしアイテムもでない。
 隠し部屋に宝箱はあるかもしれないが。

 最後に、地下10階から下なのだが、下に降りる入口というのが一つや二つではない。
 人間側が発見しているだけで42、実際には72の入り口があり、それら全てが別の迷宮になっている。

 そして、それらの迷宮にはその迷宮を管理する魔王が存在するらしい。
 まぁ、今は俺もその魔王の一人らしいのだが。

「おい、あんた、そんなところで何をしてるんだ?」

 声をかけてきたのは、赤い腕章をした若い男だった。

「すみません、転移陣を探してて――」
「転移陣なら地下9階層から階段を降りたところにあっただろ……怪しいな、密猟者じゃ……って屑アイテムばっかりだな」
「え? 迷宮って誰でも入っていいんじゃないですか?」
「それは地下9階層までだ。10階から下に行くには勇者かその従者に限られる。常識だぞ。ほら、ついてこい」

 そんなの初耳だぞ。
 ルシルが説明を怠ったというよりは、ルシルも知らなかったんだろうな。

「すみません、案内してもらって」
「気にするな、これがギルド職員の役目だ。というか、本来、階段の下にギルド員が待機してて、一般人はこの階層には入れないはずなんだがな」

「昼寝でもしてやがったのか? あいつら」と男は悪態をつく。
 だが、俺はそれどころではない。
 つまり、勇者じゃなかったらこの階層の探索はできないってこと?
 11階層にもいけない、つまり家に戻れないってことか?

「あの、勇者ってのはどうやったらなれるんですか?」
「そりゃ、年に一度の試験にパスしたらいいのさ」

 どうやらこの世界では、少なくとも人間の間では常識らしい。男は「何言ってるんだ?」という目で俺を見てきた。

「それっていつあるんですか? その年に一回という試験は」
「今月だよ……といってもそろそろ締め切られるんじゃないか?」

 その言葉に俺は驚愕した。
 虚ろな瞳に、9階層へと続くであろう階段と、地上に戻れるであろう転送陣が見えてきた。
 つまり、現在、勇者になれなければ俺は二度と十一階層より下に、つまりは魔王城に戻ることができないということだ。

「お前勇者になりたいのか? 無理無理、お前みたいなガキ勇者にはなれないよ」
「俺、どうしても勇者にならなくてはいけないんです! どこにいけばいいんですか?」
「わかったから、そうがっつくな」

 男は詰所にいる他の男の方を向き、手を口元に添えて大声で言った。

「おい、このガキが迷い込んでたみたいでな、ちょっくらギルドに連れていくからよ」
「お前、そう言って地上でさぼる気だろ」

 詰所にいる男達から揶揄が飛んできたが、

「バカ、こいつ、地下10階を彷徨ってたんだぞ。お前らがきっちり仕事してなかったのが原因だろうが」

 いや、俺が地下11階から登ったのが原因なんだけどな。

「じゃあ、行くぞ。本当に時間はぎりぎりだと思うからな、急ぐぞ!」
「はい!」

 どうやら、この男は口は悪いがいい人らしい。
 俺と男は転送陣をくぐり――人間の町へとやってきた。


 太陽の眩しさに目が眩んだ。
 空は青い。異世界とはいえ人間の育つ環境だからな、地球とそれは変わらないようだ。
 迷宮の上の町と聞いていたので野営地や迷宮用の村みたいな造りかと思ったら、ところがどっこい。
 まるで西洋の街並みだ。異世界といったら西洋の街並みっていうのもどうかと思うほどテンプレなファンタジー風の異世界の街並み。
 石造りの建物が主で、主要な道は石床が敷き詰められているようだ。石床の隙間から雑草の一本も生えていないところを見ると、かなり手入れはされているらしい。
 そして町を行きかう人々。ほとんどは人間のようだが、たまに猫耳の生えた人や、耳の尖ったエルフのようなヒトも歩いていた。
 やはり、ここは異世界なんだと痛感させられる。
 足元に転送陣があり、周りは木の柵で覆われていた。
 そして、その横に、まるで地下鉄の入り口のような階段がある。
 階段の壁の淡い光を見るに、そこが迷宮の入り口なのだろう。

「おい、ぼさっとしてるな! 急ぐぞ、冒険者ギルドへ!」
「あ、はい!」

 そうだ、今は急がないといけない。
 幸い、男が言うには勇者試験の受付をしている冒険者ギルドは迷宮の入り口から目と鼻の先にあるらしい。 
 走ること一分。大通りから脇道にそれてすぐのところに、冒険者ギルドがあった。

 石造りの建物が主であるこの町にしては珍しい木造の建物で、剣と盾の看板がかかっている。どちらかといえば西部劇のバーのような雰囲気がある。
 窓が二個あり、中から多くの人による騒音が漏れ聞こえる。
 扉は開いたままになっており、俺たちは速度を緩めずに冒険者ギルドへと入った。

――刹那。

「これをもちまして勇者試験の受付を終了いたします」

 残酷な宣言が、受付のお姉さんによって下された。
~家具~
アイテムで家具といえば、最近は珍しくないですね。
大半は、プライベート空間に設置するだけのアイテムです。
絵画や椅子、机などですね。
ただ、調理器具やかまどのように、アイテムを合成するのに必要なアイテムも存在します。まぁ、コーマには必要のないアイテムですが。
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