挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
異世界でアイテムコレクター 作者:時野洋輔

Episode02 呪いの剣

28/729

貝殻から聞こえる不穏な足音

~前回のあらすじ~
化粧水革命がおきた。
 ラビスシティーの外れにある貸し別荘。
 勇者試験前から借り続けているその家の庭で、我々は己の身体を鍛えていた。
 鉄の剣の素振り。模擬戦闘。幾度も繰り返してきた戦闘訓練。

「ジークフリード隊長、本日、午前の訓練終了しました!」
「わかった。客人を出迎える準備を行う!」

 風の騎士団の隊長。
 その肩書きもいつまで使えるか。

 我々は祖国のために勇者試験を受けることになった。
 合格は絶対条件、首位の成績で勇者になるため、我々6人は奮闘した。
 だが、それも、突如として現れた謎の魔物。
 剣で切っても倒せぬその魔物の前に、我等は無力であった。

 その結果、我々は倒れ、勇者試験を通過することができなかった。
 おめおめと恥をさらして祖国に戻る。
 そうなるはずであったが、我々に本国から下された命令は、ラビスシティーでの待機命令だった。
 我々は本国の地を踏むことすら許されなかったのだ。

 徒に過ぎる時間にやきもきしながら、訓練を続けていたある日、本国から命令が下った。
 今日、この場所に客人が訪れるから相手をするよう告げられた。
 なんとも要領を得ない任務であり、汚名返上になるとも思えない。

 昼食を取らずに、我々は客人を迎える準備を始めた。
 客人が来るのは午後1時。昼食を終えて訪れるであろう時間だが、もしかしたら何も食べずに来るかもしれない。
 昼食の準備をしておき、さらにもしも共に昼食を、と誘われたときのために腹を空かせておかなくてはいけない。
 一日くらい食事をとらなくても平気な訓練は受けている。

 さて、どのような客が来るのやら。
 私は室内に入り、椅子に腰掛けた。

 さて、任務に失敗した我々に下る新たな任務はいったい何なのか。
 まともな任務ではあるまい。
 想像できる限りで最悪なのは、戦争の引き金だ。
 この町は絶妙なバランスの上で成り立っている。だからこそひどく脆いともいえる。
 この町に住む権力者数人を殺すだけで、この国を取り巻く環境バランスは大きく崩れ、この町は戦争の渦中へと引き込まれる。

 我々騎士が仕えるのは国だ。その国を動かすのがあの忌まわしい老人達であろうとも、我々は国に尽くさなくてはいけない。
 それが、たとえ我が国の民を犠牲にする作戦であっても。

「ジークフリード隊長! 御客人がいらっしゃたようです!」
「うむ、行こう」
「その客人の名前ですが――」

 部下が告げた客人の名前は、予想外のものだった。
 だが、その予想外すらも吹き飛ばす出来事が起こる。

「ぐわぁぁぁぁぁっ!」

 部下の悲鳴が聞こえていて、私は急いで部屋を出た。
 そこで見たのは、腕の肘から先を切り落とされ、血を流して叫ぶ部下の姿だった。

「貴様、私の部下に何をした!」

 私が叫んでも、男は虚ろな瞳で我々を見下ろした。
 獣の骨を頭からかぶった大男。
 我々と同じ勇者試験を受け、我々と同じく謎の魔物の前に倒れた傭兵。
 魔竜を倒した英雄とも呼ばれる冒険者、ゴーリキ。
 大剣使いのはずだが、今は普通の銀色の長剣を持っている。
 彼が私の部下の腕を切り落としていた。

「……貴様が客人というわけではないようだな! ラーク! サイオンを連れて下がれ! 止血を急ぐんだ! 切り落とされた腕を持っていくのを忘れるな!」

 今ならまだポーションで腕がくっつく可能性がある。
 とはいえ、前線に戻るのは無理だろう。

「はっ!」
「ケリー、パーン、ゴンザレス! 風の陣だ!」

 四人で剣を構えた。

「血……よこせ」

 小さな声とともにゴーリキから邪気が膨れ上がった。
 こいつ、すでに正気を失っている?

「どういうことか知らぬが憐れな。我々の剣でお前を討ち倒し、死して魂を取り戻してやろう」

 我々の剣が同時に動いた。
 素早い剣による攻撃。それが我々が風の騎士団と呼ばれる所以。
 速度特化のその攻撃がゴーリキの胸に、肩に刺さる。
 厚く固い筋肉のせいで切り落とすことはできないが、もう剣を握ることはできない。

――だが

 急所を明らかにとらえたはずなのに、ゴーリキは一切身じろぎせず、眼球だけを動かした。
 そして、肩に剣が斬り刺さっているにもかかわらず、彼は剣を振り上げて――振り下ろしたときにパーンの身体が二つに裂けていた。

 自分が斬られたことに気付いていないのか、パーンは瞬きをしながら左右に分かれ、地に倒れた。
 血が一面に飛び散り、草が赤く染まる。

 そして、その剣はそのまま横に薙ぎ払われ、ケリーとゴンザレスの下半身と上半身が分離された。

「血……まだ足りない」

 ゴーリキはそう言うと、あろうことか死した部下の肉体に切りかかった。

「死者を――部下の死を愚弄するなっ!」

 私の剣がゴーリキの首を捉えた。
 だが、首を半分切ったにも関わらず、ゴーリキは私の剣を左手で握り――そのまま割った。

「血――俺の血――まだまだ足りない」

 そして、ゴーリキが振り上げた剣は――



   ※※※

 俺とクリスは、蒼の迷宮と呼ばれる場所にいた。
 この迷宮、とにかく凄いのは、壁が水の壁なのだ。
 壁の中に魚も泳いでいるし、魔物も泳いでいる。
 どういう仕組みなのかさっぱりわからない。
 水だけを通さない結界を壁代わりに使っているのだろうか?
 天井はいつもの迷宮と同じく淡く輝いているので、明るさは問題ない。
 本格的に探索するときは、水中でも呼吸できるアイテムを作ろう。
 ただ、水中だとやはり戦いはしにくいだろうな。

「神秘的な場所ですね」
「あぁ、本当に凄いな……お、貝殻が落ちてる」

 巻貝を拾い上げて鑑定してみる。
……………………………………………………
綺麗な貝殻【素材】 レア:★

綺麗な貝の死骸。アクセサリーの材料になる。
耳にあてて聞こえるのは海の音などではありません。
……………………………………………………

 おい、説明文、死骸とか書くなよ。
 あと、夢をなくさせるようなことを書くな。聞こえるよ、海の音。
 拾う気が失せるわ。拾った後だけど。
 とりあえず、アイテムバッグの中に入れようとした、その時。

「コーマさん、危ない!」

 その声とともに、俺はとっさにしゃがんだ。
 先ほどまで俺の顔があった場所を巨大なサメが襲い掛かった。
 水の壁から現れたのか。
 俺はとっさにプラチナソードを抜き、サメを一刀両断した。

「凄いですね、コーマさん。私の注意いりませんでしたね」
「いや、クリスのおかげで助かった。ありがとうな」
「そうですよね……ってあれ? コーマさんが素直にお礼を?」
「うるせい……ったく。それより、キャビアとフカヒレを落としたぞ。ラッキーだな」

 この世界ではどうかは知らないがどっちも日本では高級食材だ。
 ただ、キャビアってチョウザメの卵で、チョウザメって鮫じゃないんだけどな。まぁ、貰えるものはもらっておこう。
 このあたりは海にまつわるものが多いな。
 最下層にはポセイドンのような姿の魔王がいるのかもしれないな。

「うぅ、やっぱりおかしいです」
「おかしくない。俺は本来、誰にでも優しいんだよ」

 そう言いながら、キャビアとフカヒレをアイテムバッグに入れた。
 ちょっとは優しくしてやろうかと思ったのに、何故そんなことを言われないといけないのか。日頃の行いが悪いから、以外の理由は思い浮かばない。
 その時、通信イヤリングが鳴った。
 三つ目の通信イヤリング、メイベルからか。

「クリス、悪い、通信が入った」

 俺はそう言って、クリスから一定の距離を置く。
 不信感だらけの顔でこちらを見ているが、気にせず通信を開始すると、メイベルから思いもよらぬ知らせが舞い込んだ。

「クリス……」
「どうしたんですか?」
「風の騎士団が全員殺されたそうだ。それで、町にいる勇者全員に緊急招集の命令が下った」
~貝殻~
ゲーム内においては、首飾りと同じくらい、帽子として使われることが多いです。ヤドカリみたいなイメージですね。
海の中の都市で全員かぶっていたりします。

作中で、巻貝を耳にあてて聞こえるのは海の音ではない。
と言っていますが、実際に波のような音が聞こえてきます。
それ、実は(当然ですが)波の音ではありません。
自分の体、脳内の蝸牛かぎゅうと呼ばれる器官から発せられている音なんだそうです。

ただ、面白いのは、この蝸牛、形がカタツムリそっくりなんだそうです。
カタツムリって、漢字で書くと蝸牛、つまり同じ漢字なんですね。
まぁ、カタツムリそっくりだから、カギュウと呼ばれてるから当然なんですが。
で、カタツムリが貝の仲間だというのは皆さん知っての通りです。

もしかしたら、陸と海、離れ離れになった貝が蝸牛を思って、この波の音を聞かせてくれている……うん、ロマンチックにオチを付けようと思ったけど無理がありすぎた。

貝殻の一番の使い方は、やっぱり貝のブラジャーです。人魚姫に使ってもらいたいですね。

あと、貝は、お金と密接な関係があります。
貯・貧・賭・財・販。
お金に関係する漢字に貝が入っています。
それは、紀元前の中国で貝が通貨として使われていたからだそうです。
明日仕える豆知識のコーナーでした。

~~~~
明日は更新時間と更新回数が変わっています。
予約状況をご確認ください。
新作紹介 そのスライム、ボスモンスターにつき注意
スライムに人外転生した男がダンジョンのボスになり、いろいろと面白おかしく生きるファンタジーコメディーです!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ