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異世界でアイテムコレクター 作者:時野洋輔

第一部 東大陸編 Episode01 勇者試験

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語尾が大事な勇者ブローチ

~前回のあらすじ~
大ボスをやっつけました。薬草汁だけど。
「勇者クリスティーナ! 前へ」

 勇者試験が終わった翌日。
 その日、10人の勇者が新たに誕生した。
 謎の魔物(薬草ドラゴン)による大番狂わせはあったが、それ以外は順当な結果だったらしい。
 毒を喰らったものも、解毒ポーションにより完治、今朝退院する運びとなったらしい。

 さて、檀上に登ったクリスティーナは緊張しているかといえば、そうでもなく、とても力の抜けた様子である。
 力の抜けた、というよりかは、腑抜けた感じ。
 というより、顔色も青ざめて、絶望色に染まっている。

(……昨日、少しからかいすぎたかな)


  ※※※


 勇者試験最終日。
 俺は嘆息混じりに70階層にいた。

 索敵眼鏡をかけて、敵の場所にクリスを案内して、敵を狩らせる。
 ただそれだけ。

「なんで召喚石コンボが禁止されるかね」

 まぁ、露見する覚悟はあったけど。
 召喚石でリザードマンを呼び出したのをユーリに見られた俺は、ミノタウロスを召喚石で呼び寄せたこともばれてしまった。
 ただ、ルール上は問題ないので、それまでの評価に影響はでないが、最終日は使わないようにと言われた。
 さすがに他の勇者候補に影響がでるからと。

「でも、夢みたいです、私が勇者になれるなんて」
「まぁな、失格にならない限り、クリスが勇者になれるのは間違いないって保証もらえたからな」

 ただ、勇者試験の順位というのは経歴として一生残るらしいので、順位を一つでもあげるべく、また順位を一つも落とさないために俺達は迷宮をもぐっていた。
 ちなみに、現在の順位は2位。1位はスー・シー姉妹。
 囮となったスーさんだけど、彼女は薬草ドラゴンの攻撃を回避し、倒れた人達の治療をした。
 そこに、ミノタウロスの群が現れたため、彼女達は防衛線を敷いて守り続けたらしい。
 援軍が来ないと思っていたのはそのためか。
 昨日の討伐隊で、俺達の次に多くポイントを獲得し、もともと持っていたポイントもあったため、現在1位。

「……まぁ、おれはクリスが10位以内に入ってくれたら問題ないんだが」

 そうか、クリスと一緒にいるのも、今日で終わりなのか。
 まぁ、借金の取り立てがあるから、全く会わなくなるってことはないだろうが。

「そうだ、今のうちに渡しておくか」
「なんですか? 耳飾り?」
「これは、通信イヤリングっていう魔道具でな」

……………………………………………………
通信イヤリング【魔道具】 レア:★★★

2つ1組の耳飾り。片方の耳飾りに話しかけると、もう片方の耳飾りに声が届く。
気持ちを伝えることができるかどうかは使い方次第でしょう。
……………………………………………………

 魔石で作れる便利グッズ。
 まぁ、携帯電話が圏外のこの世界において、この通信アイテムはとても便利だ。

「凄いですね、ビル・ブランデ国の魔道具博物館で見たことありますが」
「へぇ、博物館とか行くのか……俺も行ってみたいな」

 アイテム図鑑を埋めるためにぜひ行きたい。
 確か、ビル・ブランデ国って、この町の近くの国だったよな。本当に行けるものなら行ってみたい。もしかしたら、72財宝が保管されているかもしれないしな。

 クリスが博物館に行くなんて想像つかないけど。

「はい、一緒に行きましょう!」
「いや、一緒に行かないから。借金の工面ができたらそれで連絡をしてくれ」
「え……一緒に行動しないんですか?」
「当たり前だろ、俺は勇者の従者の資格が欲しいだけだからな。自由に迷宮に潜るために」

 悪いが、ここでお別れだ。

「…………潜れませんよ?」

「え?」

「勇者の従者は確かに迷宮への探索許可が得られますが、勇者と一緒に行くことが条件です」
「…………マジ?」
「はい、常識です」
「そうか……常識か」

 そうだよな、常識だよな。
 なんで、そんなこと考えなかったんだろうな。
 そうだ、迷宮に入りたいなら従者になればいいと教えてもらったから、従者になった。
 もう疑問を挟む余地さえなかった。

「クリスって前からレメリカさんと知り合いだったりする?」
「はい、冒険者をしていた時からいろいろとお世話に……言いませんでしたっけ?」
「そうか、まんまとレメリカさんに騙された……いや、偶然だよな」

 偶然だと思いたいが、彼女相手なら、全て手のひらで踊らされていたと言われても驚かない。
 ということは、堂々と迷宮内に入るには、こいつと常に一緒に行動しないっていうことか?
 腐れ縁も切れないと?

「…………ま、いっか」

 なんだかんだいって、クリスの強さは本物だしな。
 俺の安全のためにも彼女には一緒に行動してもらうか。

「じゃあ、武器代と鎧代や必要経費、従者というからには一週間分の俺の給料もきっちり払ってもらわないとな」
「…………え?」
「安心しろ、迷宮で拾ったアイテムを買い取ることで借金返済してもらう。ただし、武器の手入れをするなどは別料金必要だぞ?」
「……………………え?」
「利息は年は3%で、分割36回払いでいいけどさ」
「………………………………え?」
「仕事がないなら安心しろ、就職先くらい用意してやる」
「…………………………………………えぇぇぇぇっ!? あの、コーマさん、従者、やめませんか?」
「俺を従者にしないなら、最初から利息を上限限界に設定するからな」

 この国の年利上限がいくらかわからないが。

「いやぁ、こうして考えてみれば、従者って仕事も悪くないな。じゃあ、契約書を用意するか」

……………………………………………………
魔法契約書【魔道具】 レア:★★

契約の条項を記し,契約の成立を証明する文書。破ってはいけない。
破った場合、罰則が契約者に襲い掛かる。
……………………………………………………

「という契約書なんだよ」
「知ってます……」

 へぇ、魔法契約書を知っているのか。
 博物館に行ったこともあると言っていたし、昔は本当にどこかのお嬢様だったのかもな。

「で、契約を破った場合……」
「破った場合……」

 クリスは緊張でゴクリと生唾を飲み込む。

「3ヶ月間、語尾ににゃんをつけること、にしておくからな。もちろん借金帳消しにはならずに働いて返してもらうが」
「イヤァァァァァァ!」
「ははは、イヤなら契約を破らないことだ」

 武器屋で土下座するプライドは捨てたのに、語尾に「にゃん」がそんなに嫌なのか?

「せめて、せめてワンにしてください」
「犬派かよ! お前、契約破る気満々じゃないか。じゃあ、一人称を自分の名前で言う「流石にこの年では恥ずかしいなぁ」的な罰ゲームも追加しておこう」

 もしも契約を不履行とした場合、「クリスティーナは借金を返せないダメな勇者だにゃん」みたいなセリフを3ヶ月言い続けることになるのか。
 うん、ちょっと楽しそうだな。

「う、払います! 払えばいいんでしょ?」
「そうか、ちなみに、36回払いの場合、1回に払う金額は――」

 計算機を取り出し、算出してみる。
 その結果をクリスに知らせると……彼女は言葉を失った。
 その額は上級騎士の給料と変わらない額らしい。

「ま、余裕だろ? 勇者なんだから」
「うぅぅ」

 なんで、俺はクリスを苛めたいと思ってしまうのだろうか?
 魔王としての矜持……だろうか?


   ※※※


 みたいなことが昨日あった。
 クリスは珍しく宿屋で眠らずに考えていたな。
 借金の返済計画みたいなものを作っていた。

 そして、自分の借金額の多さに絶望したようで。
 彼女の頭の中は返済方法でいっぱいに違いない。

 おそらく、いま、自分が勇者資格を示すブローチを貰ったのにも気付いていないだろうな。

「勇者クリスティーナ、聞いていますか?」
「……はい、クリスティーナは話を聞いてますにゃん」

……訂正、彼女は借金を返せなかったときのことで頭がいっぱいのようだ。 
~契約アイテム~

 契約アイテム。
 契約といえば、私達が使うアイテム以上に、魔法や従魔との契約のほうがファンタジーではよく使われるでしょうか?
 本作で登場している「隷属の首輪」も、ある種の契約アイテムと言えます。

 魔法を使うにも契約が必要、なんてことはよくあります。
 あと、悪魔の契約とかなら、願い事3つで魂を奪われますが、悪魔にわざと契約を破らせることで魂を奪われないようにする、という手法もありますね。

 契約物をネタにするとき、どのように契約を破らせるか?
 から考えて行かないといけません。
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