表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
157/742

コーマとルシファーの第二ラウンド

~前回のあらすじ~

竜化第二段階になることを決意した。

 通信イヤリングに向かって叫ぶ。


「頼む、ルシル!」


 俺が言う。竜化第二段階。

 第一段階ですら100%に至っていないのに、と思うかもしれない。

 でも、ここでやってみないといけない。

 通信をONにしたまま通信イヤリングを装着し、俺はそう頼む。


『無理だと思うなら止めるからね』


 わかってる。だが、大丈夫だろ。俺も成長した。

 毎日力の神薬を飲み、力も上がったし、今では竜化第一段階だと殺人衝動を全てBGMのように聞き流すことができる。

 大丈夫だ、行ける。


『じゃあ、行くわよ!』


 ルシルがそう言った、直後。

 声が聞こえた。

 叡智の声だ。


【竜化状殺が第二殺階殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ】


 何が起こった? 殺せ?

 あぁ、そうだ、殺さないと。

 誰を?

 エントを……違う、誰でもいい……殺さないと。


 破壊衝動が、殺人衝動が溢れる。

 ダメだ……負けたらダメだ、だが――


 俺は自分の右腕を押さえる。

 爪が伸び、凶器となった右腕を。


「カリ……」

「何!? どうしたの、コーマお兄ちゃん」


 カリーヌが俺に駆け寄ろうとするが、俺はそれを制する。


「逃げろ……俺に殺される……」

「え、なんで――」


 刹那――俺の右腕を押さえていたはずの左手が――手から伸びた爪がカリーヌを引き裂こうと襲い掛かった。

 間一髪のところで今度は右腕に取り押さえられる。


『コーマ! やっぱり無茶よ! 待って、今すぐ再封印を――』

「待て――待て、止めるのはエントを殺してから……」


 今、カリーヌを殺そうとしておいて、俺はそれでもエントを殺そうとしている。

 殺すことなんてできるのか? 違う、殺せるかどうかじゃない、ただ殺したい――殺したい、殺したいんだ。


 そう、俺は今からエントを殺――その時だった。

 俺の右手がカリーヌ目掛けてふられた。

 やば、止められない


 そう思った時だった――俺の爪が貫いた。


――クリスの鎧を――身体を。


「ぶはっ」


 クリスの口から血が吐き出る。

 な……何が起き……そう思った時、俺は右手首をひねっていた。

 クリスの口から再度血が出る。

 そして、彼女の腹を貫いた俺を睨み付ける。


「……何を……何をしてるんですか」

「お前こそ……何をしている、こんなところで」


 こんなところに何で来た。

 カリーヌを助けてくれたのはありがたいが、お前を刺してしまった。

 俺は、これからクリスを殺そうとしている。

 いや、殺す。

 もう思考が殺意に染まっている。

 彼女を殺すのも時間の問題だ。


「困ってる人を助けるためです」


 彼女は言い切った。

 困っている人を助けるため。

 勇者として彼女はここに来たのか。

 愚かな――俺でも敵わない相手にお前の力が通じるわけないだろ。

 俺の殺意がさらに増し、力が篭る。

 このままじゃ危険だ。はやく治療をしないといけない。

 ルシルに早く封印をしてもらわないと。


「あなたを助けるために――私はここに来ました! コーマさん!」

「は……」


 俺の力が緩む。

 なんで、俺だとわかった?


「だって、そんなダサイメガネをしているのって、コーマさんくらいしかいませんよ!」


 悲痛な表情で、彼女は叫んだ。

 眼鏡?

 ダサイメガネって、カッコいいだろ。ガウディ―みたいで。

 

 そう思った時には、俺の爪は普通のサイズになっていた。

 再封印されたのかと思ったが、そうじゃない。


 あいかわらず殺人をそそのかす声は聞こえている。

 だが――俺の耳は彼女の声に傾いていた。


 クリスは笑いながら、返り血で汚れたアイテムバッグから、アルティメットポーションを取り出して飲んだ。

 彼女の傷口がきれいにふさがり、血色もよくなる。


「ははは、流石コーマさんの作った薬です。ありがとうございます」

「代金は無料にしてやるよ……」

「当たり前です、ここでお金を取るならコーマさんは鬼ですよ」

「見た目は似たようなものだがな」


 頭から角が生えているし、鱗も赤色から茶褐色へとさらに変色している。

 それに、気をぬいたら、もう一度クリスを殺しそうになってしまう。


「怖くないか?」

「見た目は怖いですね。聞きたいこともいっぱいあります。でも私、コーマさんのこと信じてますから」


 彼女はそう言って笑った。

 バカだろ……こんな姿で、さっきカリーヌを殺そうとし、クリスを傷つけた俺を信じるだと?

 本当にバカすぎる。

 バカすぎて……殺しなんてバカらしくなってきた。

 そもそも、前に俺が使っていた眼鏡と同じ眼鏡をかけているからっていう理由だけで、俺だと判断できるか? 普通。


『コーマ、行けるわね』


 通信イヤリングからルシルの声が聞こえた。


「あぁ……いける」


 まだまだ殺人をそそのかす声は聞こえる。

 正直、今も神経は全て自分を制するのに使っているくらいだ。

 だが、今はその殺人衝動よりもバカらしくなっていた。

 戦って終わりたい。

 早く戦って帰って、バカな日常に戻りたい。

 俺はクリスのように……バカでいたい。

 そう思ったら、いける。まだ戦える。


「全く――クリス、終わったら全部話す。だから俺を信じてくれ」

「最初からコーマさんのことは信じてますよ。でも、さっきのは痛かったので、借金減額してくださいね」

「あぁ、全部終わったら1割くらいまけてやるよ」


 俺は笑った。そして――、


「カリーヌ、スライム達を撤去させてくれ!」

「うん、わかった!」

 

 そして、跳んだ。

 ユグドラシルへと。


 ユグドラシルからスライムが脱出していった。


『その力、ルシファーの力が強くなったか! だが、そんな力でワシに勝てると思うなよっ!』

「うるせぇ、俺が使うのはルシファーの力だけじゃない! 俺がつかうのはこれだぁぁぁっ!」


 俺はユグドラシルの手前の大地、大量に落ちているスライムの核めがけて手を突っ込んだ。


「アイテムクリエイトっ!!!」 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ