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March 22 AM13;48
「教えろ、苦楽くらく、アンタは一体何を知っているんだ」
『苦楽さん……だろ?』
軽快な声が耳に障る、何と言うか果てしなく苛々する、胸の奥で憎悪と苛立ちがグツグツと煮えていた。
『まぁ、冗談はそこまでにして……だな、そうだな、とりあえず刹那の所へ急いで向かってみたら良いと思うぞ?』
「現在進行形でそうしてるじゃねぇかっ!!」
と、そこでふと立ち止まる。
「ちょっと待て……『急いで向かえ』ってどう言う事だ? その言い方だとまるで……」
心臓の音が五月蝿い。
呼吸の音も荒すぎる。
脳の回転が減速する。
冷静なれ、刹那自身。
刹那はどこへ行った。
何をしに何処へ行った。
何の為に出た。
地図も無いのに何故外へ出た。
住所も解らない筈なのに何故俺を置いて出た。

何故?

『拍子抜けだな、忘却』
冷ややかな苦楽の声が電話越しに聞こえる、まるで此方の意思と思惑を読み切ったような言い草だった。
『そこまで頭の回転が悪すぎる悪魔が事務所まで開けるとは世の中も変わってきたな』
俺はその言葉を聞いた瞬間電話を切った、これは、不味い。

これはマズい。

◆◇◆◇

プー、プー。
電子音だけが部屋の中で鳴り響いていた。
どうやら電話を切られたらしい。
「まったく、せっかちな奴だな」
苦笑を浮かべて携帯を机の上に置く、そして振り返る。
「何か言いたそうな顔をしているな?」
苦楽の前には一人の女性が立っていた、苦楽とは対照的に白い着物を着た少女は黒曜石の様に黒い瞳で苦楽を捉える。
「…………貴女は、楽観的過ぎる気がする」
少女の言葉に苦楽は薄い笑みを浮かべて扇子を開く、甘ったるい匂いが室内に籠る。
「人生、楽観的に生きれば良いんだよ……伯楽、アンタももう少し気楽に生きれば?」
苦楽の言葉に伯楽はくらくと呼ばれる少女は少し間を空けて。
「…………私は貴女の様には…………なれないから……」
苦楽は詰まらなさそうに溜息をつくと窓から空を見上げた。

鉛色の空がどこまでも続いていく。

◆◇◆◇


意識が遠のいていく感覚が頭を過る。
口の中に鉄臭い臭いが一杯になり、唇が真紅の血で濡れた。
目の前の少女が此方を凝視し醜悪な笑みを見せた。
「駄犬」
見た目だけで見た結果そう呟いた、が、血を吐く。
痛い。
痛い。
痛い。
(……『死ねないのが辛いな』)
口の中でそう呟き眼前の敵を捉える。

勿論、何も変わらないが。

ガシュッ。

と果物を握りつぶした時の水分が交じり合ったような音が鳴り響いた。
私はその時、自分の胸を何かで刺されたのだと思っていたがそうではなかった、感覚が麻痺している訳ではない。だが痛みは無かった。
(何だ?)
目の前を凝視すると少女はコンクリートの壁に体を盛大に激突し、ゆっくりとスローモーションの様に落ちる。
横を見ると、そこには居た。
黒髪に黒い瞳、年がら年中着て少し薄汚れたコート、黒いパンツ、黒いバッシュ。
忘却ぼうきゃくだった。
右足を上げたまま硬直しているという事はどうやら少女に回し蹴りを放ったらしい、だから少女は跳んだのだろう。細身の癖に力だけはあるから。
少女は地面に突っ伏し口元を押さえる、指の間から血が滲んでいた、あの蹴りだと肋骨辺りが折れていたのかもしれない。
私は無言で少女を凝視する、少女は私を憎悪の目で睨みつけると跳躍し路地裏から消えていった。
意識が途切れていく。
何も考えられそうに無い。
何も考えたくない。
頭が痛い、腹に空いた風穴から血が噴出して赤絨毯レッドカーペットの様だった、私の血液は温い。
その感覚が嫌で、
その感覚に恋をしそうになった。
この感覚が、
この感覚こそが。
今生きている証なのだろう。

忘却が駆け寄り私を抱いた、俗に言うお姫様抱っこだった。

正直私は忘却が怒ると思っていたが、違った。

忘却は私を抱えた時、そっと微笑んだ――――。

私にはそれがどうしようもなく、

いたかった。




…………

◆◇◆◇
スミマセン、テスト期間中の為更新が遅れますw


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