episode16-18 神聖な儀式 (八年前)
差し出した手に、田崎がおそるおそる手を重ねた。
俺の手の平に、田崎の温もりが伝わってくる。俺は、何か神聖な儀式を行っているかのように思えて胸が熱くなった。目頭が熱くなるのを感じながら、俺は田崎の手を強く握り返した。
「俺、美山洋一。これから、よろしくな」
田崎は、困ったような顔をして頷いてから「ごめん」と小さな掠れた声で謝った。一瞬何を謝っているか解らなかったが、首を絞めたことだと気がついた。
「え?ああ、いいよ。気にしてないから」
「でも・・・・血が」
「え?あ、そっちかよ。これも大丈夫だよ」
頬の傷を手で擦った。血は乾いているらしく、僅かの血も手についてはいなかった。
「あっ!首も・・・絞めてごめん」
田崎が、顔を歪めながら頭を下げた。
「だから、大丈夫だよ。こんなの平気。俺のほうこそ田崎に謝らなきゃいけないんだ。お前のこと勝手に思い込みで怖がってたんだ、俺。―――ごめん」
「暴れて、恫喝して、怪我までさせて。怖がるのは当然だ。お前が謝ることなんてない」
俺が謝るのを制するように田崎は、強い口調で言った。違うよ、と俺は言う。
「分かり合おうともせずに、思い込みで人を決め付けるのは最低だよ。馬鹿だよ。俺は、馬鹿だったんだ。お前はずっと苦しんでたのに。でも―――もう独りじゃない、俺がいるよ」
その言葉に田崎は目を見開いて驚いた。そして、急に顔をくしゃくしゃにして子供のように声を上げて泣き出した。まるで、今まで心の奥に溜めていたものをすべて吐き出すかのように。
突然、田崎が泣き出したのでびっくりした。けれどすぐに、何かから開放されたかのように、声を上げて泣く田崎を見てほっとした。そして、田崎に笑いかけた。
「一緒に行こう。これからどんな苦しいことがあっても、一緒に乗り越えていこう。二人だったら怖くないさ。もう独りで苦しまなくていいんだ」
そう言うと、一層激しく田崎は泣いた。
泣き疲れて眠ってしまうまで、ずっと―――――。 |