episode16-12 暴 (八年前)
その場を動くことができない。床に座り込んだまま呆然としていた。
あんな声を聞いたら――――。
あんな顔を見たら――――。
アイツは―――何に苦しんでいるんだ?
ゆっくり立ち上がると、田崎のいる部屋へ歩いて行く。部屋に入ると、部屋の真ん中で田崎がアルバムから写真を剥して破り捨てていた。
「――!来るなぁ!帰れって言っただろ!殺されたいのか?!」
俺に気付くと、アルバムを俺目掛けて投げてきた。アルバムは俺のすぐ横の壁に当り床に落ちた。足許に落ちたアルバムには、笑顔の少年と父親らしい男性が並んで写っている写真があった。アルバムを拾いあげ、田崎に手渡そうと近づくと彼の足許には無数の家族写真の残骸が積み上げられていた。
田崎はアルバムを手で払いのけ、奇声を発しながら飛びかかってきた。俺の首を絞めながら、顔を歪め泣いている。
く、苦しい―――。
手をどけようと思ってもすごい力で、びくともしない。田崎の泣き顔を見上げながら、意識がどんどん遠のいていく。
も、もう―――だめだ。
「―――父さん!!どうしてぇ」
遠のく意識の中、田崎の悲痛な叫び声に―――涙がでた。
父親と一緒に写った笑顔の幼い田崎と、家族写真を破り捨てるほどの田崎の絶望に涙が溢れて止まらない。俺には―――田崎の苦しみがどれほどのものか分からない。でも――それほどの苦しみを独りで背負っていた彼を想うと哀しかった。何も知らずに彼のことを怖がった自分が恥ずかしかった。
田崎の首にかけた手が緩んだ。
「っぐっ、ごっほ、ごほっがはっ」
急に呼吸ができるようになり、むせ返る。田崎は、俺が泣いていることに驚いて後退った。
「―――帰れ。俺が暴れる前に、帰ってくれ!」
田崎はそのままその場にうずくまった。震える肩を両手で抱え、必死で自分を守っているかのように。
「田崎・・・・」
フラフラになりながら立ち上がり、田崎の方へ歩み寄る。
「黙れ!来るな!」
うずくまりながら、震える声で田崎は叫んだ。
「どうせお前だって、俺を裏切るんだ!だったら!―――俺に関わるなよ!」
「俺は・・・・」
田崎の肩に手を置くが、振り払われた。
「嫌なんだ。もう、拒絶されるのは―――嫌なんだ」 |