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葛飾、最後のピース 作者:ぐろわ姉妹

一英編(時:2010年)

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第35話 好演不審者

「ねぇー、
ここさっきも通ったよぉ?」

「ごめん。
さっき降ろしたやつが道案内だったから」

「え~! 
カズくん地元なのに道も知らないで走ってんの? 
信じらんなぁい」

 これでもかと道に迷い、仏頂面の瑠奈になじられながらも、なんとか小菅へとやってきたミニバンは、信号もない裏道の路肩に停まっていた。

「ごめんね、
配達先にはかなり近寄ってるはずなんだけど……」

 そう言って一英は地図と小ぶりな納品箱を手に、殺意ある猛暑の中、車外へと出る。

 何度か行ったことがあるはずの工場なのに、どうしてこうも辿り着けないのか。

ジャスティーが同行するからと裕貴も油断しているのだろう、納品箱には工場名と飾り程度の地名しか書いておらず、一英はどこかに工場の看板が見当たらないかと辺りを見渡した。

「まだぁ?」

 もたもたしていると、エアコンの効いた車内にいて構わないのにそれすら辛抱できなくなった様子で、瑠奈も外へと出てきてしまった。

膨れた頬で、面白味もない住宅街に溜め息をしている。

 気まずさに急かされる一英はもっと奥まで確認しようと、次の交差点辺りまで駆け出す。

だがやはり目当ての工場は見当たらず、景色に見覚えがあるだけに悔しさと情けなさが増しただけだった。

 腕時計を見れば十一時が目前に迫っていて、瑠奈を乗せてから優に一時間が経っていた。

太陽と照り返しのダブル灼熱が、一英を更に責め上げる。

「くそ……だめだ」

 こんなことで意地を張ってはいられない。

素直にジャスティーとはぐれて迷子になったことを明かし、裕貴に助けを乞おう。

自らに顔をしかめて携帯を開くと、不意にどこからか、耳に馴染んだ声がかけられた。

「こっちですよ、こっち!」

 ハッとした一英が顔を上げる。

だが、辺りには通行人がまばらにいるだけで、すぐに見つかるはずのスカート姿は見当たらない。

空耳だったのかと思った矢先、視線が数度は素通りしたもう一つ隣の交差点で、手を振っている男が目に入った。

 一見して見知らぬ男と思ったのも束の間、よく目を凝らせばそれは、スーツに眼鏡姿ではあるが間違いなくジャスティーだった。

 唖然としながら駆け寄ると、ジャスティーは自分の立つ交差点から左折した方向を指差してみせる。

見れば交差点から数軒先のそこには、目当ての工場が建っていた。

 もう少し粘ってここまで来ていれば自分でも発見できたのだと解ったが、それを残念とか悔しいとか思うよりも、目の前のジャスティーが異彩を放っていることのほうが気になってしまう。

背後からは「カズくん待って~」という瑠奈の声が近寄ってきていた。

「一件目の配達先に先回りして待ち伏せできるほど道に迷うってどんだけなんですか。
区内でだけ方向音痴になるっていうその異常体質、
なんとかしてくださいよ」

 ジャスティーはここまで来られただけ奇跡だと言って笑い、この炎天下、涼しげな顔をしてネクタイをキュッと正す。

一英は手の中の携帯を閉じるのも忘れ、常識的な服が死ぬほど似合わない様を、異物でも見るような目でガン見していた。

 そこへやってきた瑠奈が、一英の後ろから控えめに顔を出しジャスティーを覗き込む。

 再び怒らせやしないかと緊張した一英だったが、瑠奈はジャスティーと目が合うと、先ほどとは違い柔和な笑顔でちょこんとお辞儀をした。

ジャスティーの同行を瑠奈が許可してくれたことで、一英はやはり着替えさせたのは正解だったと胸を撫で下ろす。

「僕、井梶プレスの従業員なんです。
一緒に配達行くけどいいですか?」

 瑠奈に対し適当な嘘を並べているジャスティーを、一英が改めて見定める。

 髪型も無難にセットし、黒縁の眼鏡をかけたジャスティーは、タイトなネイビーのサマースーツに身を包み、金属的なグレー地に細かい水玉の入ったネクタイをしている。

それはどこからどう見ても、年相応に問題のない、普通の青年に見えた。

 だが見慣れないそれが逆に怪しく見え、一英はつい本音が口をつく。

「あんたがスーツなんか持ってるとは思わなかったよ」

「でしょう? 
こないだ横浜で買ってきたんです。
横浜で全身コーデしたんで、完全横浜スタイルです。
新小岩の人間がハマ・スタイリッシュなスーツを着たら、
どんだけ似合わないか見てもらおうと思って」

 ジャスティーの嫌味な言いぶりに一英は鼻筋にしわを寄せたが、隣では瑠奈が「え~、すっごく似合ってますよぉ?」と声を上げる。

その声は、趣味に合う雑貨を見つけた時と同じような笑みを湛えていた。

 まっすぐに見つめてくる瑠奈の言葉に、ホントですかと身を弾ませたジャスティーが、今一度「どうです?」と一英に向き直る。

「クッソ似合わねぇ」

 一英が半笑いで小馬鹿にすると、瑠奈が眉根を寄せ、声を尖らせた。

「ちょっとカズくん、
言い方ひどくない?」

「いいのいいの、
こいつにはこんくらい言ってちょうどいいんだから」

 そのまま配達先の工場へと向かっていく一英を、瑠奈が怪訝そうな表情で見つめる。

ジャスティーが「僕、車で待ってますから!」と一英の背に伝えると、瑠奈もそれに同意し来た道を戻っていった。

 しばらくして納品を終え、戻ってきた一英がミニバンのドアを開けると、中からは瑠奈とジャスティーの楽しげな笑い声がわっと漏れた。

思いもよらないほど会話が弾んでいたらしい二人に笑顔で迎えられ、一英が戸惑う。

 すると二人は声をそろえ、聞き覚えのない、歌詞の言い回しが古臭い曲を口ずさみ始めた。

軽微な疎外感を覚え、一英がぐっと眉を寄せる。

「なに、その歌?」

「あれ? 知りません? 横浜市歌ですよ? 
僕はいま教えてもらって覚えましたけど、浜っこなら誰でも歌えるそうです。
は・ま・っ・こ・な・ら」

 思わずムッとし、悪かったな浜っこじゃなくてと言う代わりに、じろりと睨みつける。

するとジャスティーは、人を小馬鹿にするには適切すぎる、ペコちゃんのような顔をペロッとしてみせた。

 イラッとする一英の心情とは裏腹に、ジャスティーのナビ復活のおかげで配達は滞りなく進んでいく。

 スカート姿がよほど腹立たしかったのか、ジャスティーがスーツに着替えてきてからというもの、瑠奈は彼の一挙手一投足にフレンドリーな笑顔を返していた。

ファッションにはうるさい瑠奈のことだから、メンズスカートなんか本気で許せなかったんだろうなと一英は思う。

 途中通りかかった金町の駅前で、ジャスティーがミニバンを停車させるよう一英の肩を叩いた。

そして黒縁の眼鏡を押し上げ、「瑠奈さんに、おいしいフルーツご馳走します」とミニバンを一人降りていく。

 ハザードランプが鳴る中、果物屋に入っていくスーツ姿を一英と瑠奈の目が見送る。

「ジャスティーさんて、いい人だね」

 まったく嫌気のなくなった瑠奈の声に、一英は愛想じみた笑顔を返した。

果物屋の中で店員と談笑しているジャスティーの姿を、瑠奈は愉快そうに眺め、一英は彼女のあまりの変貌ぶりに呆れてしまう。

 だが、瑠奈が笑顔に戻ってとにかく良かった。

ジャスティーも話す内容をそれなりに選んでいるようだし、喋ってみたら案外普通の人間だったということで、瑠奈もきっと機嫌を直したのだろう。

 普段は不審そのもののジャスティーだが、普通の外見と無難な会話をしさえすれば、なんら不審者ではないということに、一英はそっと苦笑いする。

 間もなく、カットフルーツの盛り合わせをテイクアウトしてきたジャスティーが車に戻り、手頃なプラカップに入ったそれを瑠奈に差し出す。

後部座席から手渡された瑠奈は歓声を上げ、走り出すミニバンの中、ピックで色とりどりのフルーツを嬉しそうに頬張っていた。

 ◇

 瑠奈を連れての配達は、ジャスティーによる葛飾観光案内も交えてゆっくりと進んでいた。

おすすめの店での昼食やデザートなども含め、ちょこちょこと色んな場所に立ち寄っては、見たり食べたりして回る。

 名物と言うほどでもないものを、さも名物化して紹介できるジャスティーの能力には、呆れを通り越して非常に助かった。

瑠奈がそんなジャスティーに乗って楽しもうとしてくれたことで、一英にも自然な笑みが戻る。

 そろそろ夕刻も近くなった頃、数件目の配達先である柴又にミニバンは停車した。

一英が納品箱を手に「柴又こそ観光地だから、見ていかない?」と言って、瑠奈を連れ出す。

 帝釈天の参道を歩く二人の後ろにジャスティーが続き、その口笛が男はつらいよのテーマ曲を吹き始める。

頭上を弾んでいく能天気なメロディーにつられ、一英は、差した日傘をくるくる回している瑠奈を覗き込んだ。

「男はつらいよって映画、知ってる?」

 全国どこへ行こうとも、「寅さんのいるところ」と言えば解ってもらえるのが葛飾区だ。

この話題なら自分でも少しは紹介できるのではと思い話を振ってみるも、瑠奈は両側の店を流し見ながら、気のない声で顎に指を当てた。

「あ~……
パパが観てたことある? 
かも~?」

 瑠奈の素っ気なさからして、墓穴を掘ったのは痛いほど解った。

だがこの先数百メートルを、気の利いた地元紹介もできず歩くのはもっと痛いような気もする。

 自分だって父がテレビで観ていたのを横から眺めていただけのレベルだが、食い下がって再び説明を始めた一英は、なんとなく思い出せるお馴染みのシーンを、ぎゅっと閉じた目蓋に描き出した。

 そして先に見える帝釈天や、寅さんの名口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又」をそらんじながら、見えてきたとらやと高木屋を指し「映画の舞台に使ってたそうだよ」などとうんちくぶる。

「ここは甘味処で団子とか食べられるよ、どう?」

「別に~。
ルナ、お団子きら~い」

 ふんわりとしながらも実に切れ味よい返答に、一英は器用に返せる言葉もなく、固まった笑顔で参道の先へ向き直る。

(そりゃそうだろうよ、
ワッフルでもジェラートでもない、
ただの団子なんだから。
今ばっかは寅さんの女運のなさが身に沁みてよく解るな、くそっ)

 日が傾いても相変わらず蒸し暑い空気に、一英の額には絡みつくような汗が滲み出ていた。

厚い作業着など脱いでしまいたいがそうもできず、顎に垂れてきた汗をたくし上げたシャツの胸元で拭う。

 逃げるようにそそくさと歩を速める彼の後ろで、瑠奈がころんと鼻にかかった声を出した。

「ねぇジャスティーさぁん、
この辺に、洒落たカフェとか可愛い雑貨屋さんありませんかぁ? 
ルナそういうの大好きなんですけどぉ」

 先ほどと同じ問いかけをする瑠奈に、一英は眉をひそめ振り向く。

少し離れたところを歩いていたスーツ男は、いつの間にか買った刻み海苔もっさりの焼草団子を両手に持ち、でっかい真四角の寅さんせんべいをも買おうとしているところであった。

 いくら見た目が変わったからって、それ聞いても返事は一緒だと思うよ、と瑠奈に声をかけようとすると、それより早くジャスティーがにこっと笑う。

「えーっと、
コーヒーラーメン出す喫茶店とか、
ドンキ以上にカオスな金物屋ならありますよぉ?」

 初対面における第一声で吐いたのと同じセリフを返してくるジャスティーに、マジで同じ返答してんじゃねぇ、それしかねぇのかよ、また瑠奈の機嫌が悪くなるだろうが、と一英が胸中で毒づく。

 だがその心配もいらないほど、瑠奈はさもおかしそうに「なにそれ、超うける~!」と言って笑った。

瑠奈の好反応にジャスティーが「良かったら、これから行きますか?」などと調子づき、瑠奈も「行く行く~!」と声を弾ませる。

 瑠奈の真似をして「行く行く~!」とこちらへ跳ねてきたジャスティーにいつものようにイラッとしてしまい、一英は思わずその楽しいテンションを撃ち落とすように、ぴしゃりと言った。

「行くか、馬ァ鹿」

「うっわ、バッサリ!」

 ふんと鼻を鳴らした一英にジャスティーはへらへらと笑う。

再び参道を進み始めればジャスティーが並んでついてくるが、その後ろで歩こうとしない瑠奈が一英の背中にチクリとした声を刺してきた。

「ねぇ、さっきからカズくんなんか変だよ? 
どうしてそんな言い方ばっかりするの? 
なんだかイラついてるみたいで、ルナそういうのキライ!」

「え、あ? 
そ、そんなにひどい言い方した? 
ご、ごめん……」

 驚いて振り返ると、さっきまで笑顔だった瑠奈が今日一番とも言えるような不機嫌さで睨んできていた。

一英が慌てて取り繕う。

「しょ、しょうがないんだよ、瑠奈。
よその人からすれば、粗暴で口が悪いなんて見えるかもしれないけど、
この辺の人はみんなこんなもんなんだ。
これが葛飾区民の基本スペックなくらいで……」

「そんなわけない! 
カズくん、いつもはもっともっと優しいじゃない! 
こんなにイライラしてるなんて、初めて見たよ? 
こんなの、全然カズくんらしくない!」

 そう語気を強めた瑠奈は、自らの言葉に納得しながら、絶対おかしいと言って頭を大きく横に振る。

「ほんとは何かあったんじゃないの、カズくん」

「何かって……」

「だって実家の手伝い始めてからなんかおかしいもん! 
メールだってちゃんと返ってこないし、すごく冷たい。
忙しい忙しいってなんなの? 
実家は嫌いで寄り付きたくないってずっと言ってたくせに、
何週間もいるなんてどうしてなの? 
なにか地元にいたい特別な理由でもあるんじゃないの!」

「……そりゃ、
親父が倒れたんだから……」

 突然怒り出した瑠奈に答える一英は、困ったように眉を寄せた。

 やはり瑠奈は、何度か連絡がつかなかったことに相当怒っていたらしい。

忙しいからといって、毎晩電話するという約束を守れなかったことが悔やまれた。

噴水なんかに携帯を水没させてしまったのも、ついてない。

 一英の答えに不満げな顔をした瑠奈が、キッとジャスティーに目をやる。

「ほんとにそうなんですか? 
ジャスティーさん!」

 突然矛先が自分に向き、のん気に団子を頬張っていたジャスティーは、戸惑いも露わに目を見開いた。

「どうして僕に聞くんですか?」

「だって……」

 瑠奈が言葉に詰まり、一英に目をやる。

 瑠奈を見つめ返す一英の隣で、ジャスティーが一瞬だけ、ひんやりとしたものを目の中に浮かべた。

だがすぐに、彼はピンときたふうで眉を上げると、改めて瑠奈と一英を見比べ、あぁそうかと優しげに笑う。

「あなた疑ってるんですね。
ホントは実家の手伝いなんて嘘なんじゃないの? 
お父さんが倒れたなんて嘘なんじゃないの? 
独身最後の夏休みだもん、
私が研修行ってる間に嘘ついて、浮気を楽しんでるんじゃないの?」

「……浮気?」

 ジャスティーの言葉を瑠奈に聞き直し、一英が眉をひそめる。

見つめあう瑠奈は黙りこんだまま反論もしなかった。

その沈黙が、ジャスティーの指摘を認めたのと同じことなのか、一英には解らなかった。

すっとうつむいた瑠奈に静かな声をかける。

「瑠奈……
そんなこと思ってたの?」

 だがやはり、否定の言葉は返ってこなかった。

納品箱を持つ指に思わず力がこもる。

 浮気を疑わせるほどのことを、自分はしたのだろうか。

 そりゃあ、ここのところ連絡がおろそかになったのは確かだ。

だがそれは、父が倒れるという突然のことに混乱していたからで、決して浮気なんかが原因ではない。

普段なら連絡を忘れることはないし、きちんと瑠奈を大事に思ってきた。

だからこそ、今まで浮気なんてしなかったし、しないと信じてもらえていると思っていたのだ。

それなのに、たった十日間連絡がすれ違ったくらいで、こんなにも疑われるとは。

 築いてきた信頼をこそげ落とされたようで、胸のあたりに衝撃が広がる。

腹が立つよりも、ほとんど悲しかった。

「俺の電話に出なかったのも、
そういう意味だったんだ……?」

「だって……
カズくんはそんな人じゃないって信じてるけど……」

「信じてないじゃん。
俺、浮気なんかしてないよ」

 一英はじっと立ったまま、困り果てたような溜め息をした。

 その先の会話は続かず、重苦しい沈黙の中、瑠奈の視線がジャスティーに向く。

瑠奈の目は明らかに、一英の言葉の真偽をたずねていた。

 串から団子をきれいにこそげていたジャスティーが、二人を見比べ、呆れたように笑う。

「浮気、してませんよ。
断言します。
この人にそんな甲斐性ないっていうか、そんな暇ないっていうか。
とにかくそっち系の心配は無用です」

 予想外の返答だったのか、瑠奈が驚いたような声を上げ、さっと顔色を変える。

「じゃあ、どっち系の心配があるんですか? 
他に何かあるんですか!」

「ほかに? 
うーん、どうだろうなぁ」

 おどけて肩をすくめるジャスティーを一英が反射的に肘で突き、

「言い方が紛らわしいだろが、
テメェこの野郎」

と言うと、瑠奈は間髪入れず、

「だからそういう怖い言い方、
嫌いって言ってるでしょ!」

と眉を吊り上げた。

思わず一英が「ごめん」と呟く。

 一英と目が合うと、ジャスティーは視線をきょろっと虚空に泳がせ、痴話喧嘩には巻き込まれたくないといった様子で逃げながら、開いた携帯で時刻を確認する。

「すみませんけど、時間ないです。
ヒーローさん、その配達、時間指定ですから急いでください。
瑠奈さん、この納品終わればあと一件で終わりなんで、
込み入った話はあとでまたゆっくりしませんか?」

 その一言で一英は納品箱を持って一人、配達先へと向かい、瑠奈はジャスティーの後をつき参道を戻っていく。

 納品を終えた一英がミニバンへ戻ると、二人は何やら会話していた様子だったがそれをやめ、気まずい雰囲気が流れた。

あえて追及はしなかったが、瑠奈が黙り込む車内は一英にとって息苦しく、次の配達先までの時間が長く感じられる。

 ジャスティーはと言えば我関せずで、後部座席でナビをしながら、お気楽にもスーダラ節を口ずさんでいた。

その無神経さに通常なら苛立つだろうが、今だけはその音を途切れさせないでくれと願い、一英は汗ばむ手でハンドルを握る。



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