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ちぇんじVRガール! ~私と僕と不思議なアイツ~ 作者:鳥飼誠二
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 ケイジは息を吸い込み、心を落ち着けてからゼットへと声をかける。
 その様子は、まるで銃を持った籠城犯を相手にするかのように、慎重に――――
「ゼット……君は、何者なんだ? 何故、突然AWの世界に現れた?」
『……知るかよ。答えてやる義務あるのか、ソレ』
 ゼットが声を落しながらそう言うと、ケイジの首周りの大気が突然圧縮されていく。
 その刹那、ケイジの首がひとりでにギリギリと締まり始めた。
「グッ!?」
「お兄ちゃんッ!?」
 ケイジは首を抑え苦しそうにしながらも、私へと静止の手を差し出す。
 この現象は、間違いなくゼットによる仕業なのだろうけど……
 なんなの……ゼットって本当に何者なの?
 私の頭が、困惑に満たされていく最中、ゼットは再び静かに声を飛ばす。
『俺は、お前たちを信用していない。何故ならこちらの世界に呼び出されるたびに、お前たちは俺をコントロールして好き放題にしようとしてきたからだ。お前は中でも随分と穏やかな方かもしれんが、今、俺を宿らせている依代に対し、電流を流す装置をつけている事ぐらい理解しているんだぜ?』
 ゼットがそう言うと、ケイジがポケットの中に入れていた手が、無理矢理引っ張られたかのように上へと持ち上がる。
 ケイジの手には、ゼットが見抜いた通りWEBカメラに電流を流すためであろう、小さなスイッチが握り込まれていた。
『礼節をわきまえない……そういう所が気に食わねェ。苦しめて殺すか?』
「ぐ……ぐぁッ!」
 どうしよう……このままじゃケイジ、殺されちゃう!
 そんなの、絶対に見たくないッ!
 私は寝たきりの身体を何とか奮い、声を張り上げた。
「お願いゼット、やめてッ! ケイジは……お兄ちゃんは悪い人じゃないよ!」
『その心の波長……さっきの世界で、銀髪のガキの中に居た女だな』
「そうよ、睦月メイ! ケイジの妹なの! だからお兄ちゃんを殺さないで!」
 私の叫びの後、ゼットは少しだけ迷ってから、ケイジを見据えると、
『――――だ、そうだ。ケイジとやら。親切で可愛い妹に免じて、とりあえずは解放してやるよ』
 そう言い、ケイジの首を絞めていた大気の濃縮を解く。
 戒めを解かれたケイジは、命からがらと言った表情で、病室の新鮮な空気を吸い込んだ。
「ふぅ……空気がうまいよ。……なぁ、メイ。悪いけどオレの代わりに、ゼットに色々と思った事を聞いてくれないか?」
「はぁッ!? なんで私が…………こっ、怖いじゃないッ!」
「大丈夫だって。ゼットはメイとなら相性が良さそうだし、オレの聞きたかったことも、自然と質問からこぼれそうだからさ。ソレが合理的で良いかな~……って」
 ケイジは、さっきまで苦しんでいたのに、もう毎度のニコニコ顔。
 あ~もう……こういう時のケイジの判断って大嫌い。
 私の不満など知らず、ケイジは今も宙に浮くゼットへ一礼をした後、話を勝手に進めていく。
「すまない。恐れからのオレの行動を許してほしい。が、オレは君の敵じゃないし、代わりに質問はメイにさせる――――これなら何か話してくれるかな?」
『……良いだろう。俺も聞きたいことがある。が、前提としてだ。その女……メイの胸の谷間に居座らせろ』
「ちょッ、なんなのソレッ!?」
 驚く私に対し、ケイジは非常に気軽そうに、
「いいじゃないか。減るもんじゃないし」
「もう、お兄ちゃんまでっ! 女の子の胸は、夢が詰まってて、そんなに安いもんじゃないのッ!」
「まぁまぁ。今のゼットの身体はただのWEBカメラだ。だから、胸の谷間にカメラを挟むだけと思えばいい。……それに、やっぱり、メイに任せて正解だ」
「……?」
「ゼットは女性の胸に性的好奇心がある……つまりは、男――性別を持つ生き物だって、この点で分かるだろう?」
「それを分かって、妹の胸を差し出せって言うのか……バカ兄め……」
 私はそう言いながらも、やれやれとパジャマを第二ボタンまで開けてやる。
 ま、相手は意志を持つただのWEBカメラ。
 そう思えばいくらか気は楽になるだろう。
「ほ~ら、ゼット。OKだからおいで~」
『あぁ……では世話になる』
 ゼットはそういうと、パタパタと羽根を羽ばたかせ、私の胸の谷間へと納まった。
「ん……!」
 私の胸には、WEBカメラの金属部分の冷たさが伝わってくる。
 が、ゼットはというと、
『かッ……感覚がないぃぃぃぃッ! 柔らかなマシュマロ感が一切伝わってこないいぃぃぃ!!』
 このように騒いでらっしゃる。
 そりゃ身体がWEBカメラなんだから、しょうがないでしょう。
 とにかく、平和的に話が出来そうなので、色々と質問をしよう。
 ケイジもすっかり、椅子に腰かけて聞き耳立ててるし、質問しない訳にはいかない。
「じゃあ、色々聞くね。ゼットって一体何者なの……?」
『……さぁな。本音を話せば俺が聞きたいぐらいだ。気が付けば俺は、記憶も何も無いままにAWあの世界におり、そして、やはり気が付けば、屈強な連中に追われていたという訳だ』
「なら、ゼットって名前も、本当の名前じゃないって事?」
『そうだな。それは人間たちがつけた名前で、俺は自分の本当の名前すら思い出せていない……』
 私の胸の中で発されたゼットの声は、どこか悲しそうだった。
 あぁ……そうか。だから、ゼットは自分をの事を思い出したくて、まともに話せそうな私を見つけて、色々と対話しようとしていたのか。
 なら、あの時の悲しそうな顔で吐いた言葉は、もしかして『逃げないでくれ』?
 私がしんみりと考え込んでいると、ゼットは逆にこちらへと質問を飛ばしてくる。
『では、次は俺からの質問だ。なぜ、俺やお前たちは二つの世界――この世界と先ほどの世界を行き来している? 二つの世界の関係性とは何なんだ?』
「ん~……伝わる分からないかもだけど、ここは現実で、私が銀髪の少年の中にいた世界はAWって作り物の世界なのよ。VRMMO――仮想現実って所かな? で、行き来している理由は娯楽……うぅん、私の場合は安らぎを求めてルパンになるために、AWの世界に潜るの」
『理解した。では、お前たちにとって俺は、仮想空間から出て来た、正体不明の化け物という所か?』
「ん~……たしかにゼットは怖いけど、話が通じる相手だし、私は化け物みたいに思わないかな。お兄ちゃんはどう?」
 私がケイジに話を振ると、ケイジはゼットに対し微笑みながら、
「オレも同意見かな。礼節をもって話せばまともな人(?)だし、むやみに人を襲う危険な相手だとは思えない」
『ふ、世辞を言っても何も出ないぞ』
 皮肉そうな声を出すゼット。
 私がちょっとかわいいかも、とか思っちゃったりしていると、ケイジは大きく息を吸い込んだ後、真面目な表情へと変わる。
「なぁ、メイ、ゼット。今から、かなり真面目な話をしたいんだが、聞いてもらえないかな?」
『あァん?』
「こら、ゼット! ……いいけど、どうしたのよ、お兄ちゃん?」
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