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ちぇんじVRガール! ~私と僕と不思議なアイツ~ 作者:鳥飼誠二
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 旅の目的地であった『バエルの塔』の中――――
 青く光る魔法文字の様なスペルが幾重にも張り巡らされた、薄暗い塔内では、私とゼットによる、運営企業関係者であるプレイヤーたちからの逃亡劇が繰り広げられていた。
 広く複雑な迷路のようなダンジョンの中、私たちは追手らを撃退ながらも、塔の魔法陣の核を探すために緩やかにではあるが『バエルの塔』を上へ上へと攻略していく。
 私は、先ほどから塔のモンスターや、追手のプレイヤーたちと戦い続てうぃるゼットを気に掛けた。
「ゼット……大丈夫? 回復薬EX使う?」
「ああ……貰う」
 ゼットはダンジョンの廊下で、私から緑の小瓶を受け取ると、その中身を一気に飲み干した。
 対等な状態なら、ゲーム上の身体を使っていてもゼットは誰にも負ける事はないだろう。
 しかし、相手はプレイヤーにしろモンスターにしろ、必ず多数でやって来る。
 お陰で、数による振りが成立し、流石のゼットも参り切っていた。
「ふぅ……しかし、疲れるな……後先の事を考えず、自分の身体を使えば楽だが、大魔法一回分程度の魔力しか蓄積されちゃいない。おかげで、雑魚どもに実に面倒な戦いを強いられてるぜ……」
「なら、私が前に出ようか?」
「やめとけ。お前のアバターの体力じゃ、前衛は向かないんだろう? なら俺がやる――――回復薬の残りは?」
「あと、3本もないかな…………」
「じゃあ、メリアとの連絡は?」
「返信は一度あったけど、私たちを追うので必死なのか、それ以降何も返って来ていないの。あ! そこ右方面にモンスターが居るから、左から回っていこう」
 私は索敵スキルにより、得た情報をゼットへと伝えた。
 索敵スキルで得た情報通りに、私たちは左折するが、左折した角には、高レベルの隠密スキルを使用していた雇われプレイヤーたちが、
「ッ! いたぞッ! 電子錠を打ち込んで捕らえろッ!」
「ちッ!」
 ゼットは舌打ちすると、即座に大剣を構え、瞬く間に八人中五人のプレイヤーを仕留め、『ソウル状態』へと変える。
 しかし、運営企業に雇われたプレイヤーも、ゼット本来の力を使わないならば一筋縄ではいかない相手たち。彼らの内、タンクである重厚な大盾を持つプレイヤーが、突然飛び出しゼットの攻撃を止めた。
「ぐぐッ……弱体化している体でよくやる!」
「退けよ、テメェッ!」
「ダメだな……我が国の権威と力のため、貴様はここで捕らえるッ!」
 大剣と大盾――二つの大型武装がぶつかり火花を上げる中、私はゼットの背後よりクインスコーピオを構えた。
 相手は、ゼットに本気で危害を加えようとしている人たちだ。
 だから、今日だけは、キルしないなんて甘い事、言ってなんかられない!
「セッ――ッ!!」
 クインスコーピオから、マズルフラッシュと共に八発の徹甲弾が飛び出していく。
 私がノーマークだったこともあり、徹甲弾は残り3人のプレイヤーの兜を、眉間を貫き『魂状態』へと変え、さらには『魂状態』だった五人の魂をも破壊し、さらに大きなレベルダウンを与えると共に、ゲームスタートの街でもある、『中央都市フェルメキア』へと強制転送させる。
「へッ、頼りになるな!」
 ゼットが大剣で二人分の魂を破壊する中、先ほどゼットの攻撃を止めた大盾のプレイヤーが、真っ白な球状の『魂状態』であるにもかかわらず、私へと語りかけてきた。
『キミは何故そんな魔人とパーティーを組んでいる……そいつは一見プレイヤーに見えるが、危険因子でしかないのだぞ……』
 私が、無視しようと考える中、ゼットは大盾のプレイヤーの魂めがけて、大剣を振り上げると、
「……黙りな」
 そう言葉を吐き捨て、大盾のプレイヤーの魂を破壊した。
 一端の危機が収まると、私たちは警戒しながら、塔の中を進んでいく。
 しばらく歩けば、プレイヤーやモンスターとのバトル。
 それを乗り越えればまたバトル――――
 前線で戦ってくれているのはゼットだというのに、リアルでの体力があまりない私は、ゼット以上に疲弊してしまっていた。
「はぁ……はぁ……」
「大丈夫か、メイ。現実のお前の疲労で、アバターまでが汗をかいているぞ」
「へいき……はぁ……今、何階にいるか分からないかけど、とにかく頑張ろう!」
 私は、作り笑顔とガッツポーズで、虚勢を張った。
 今、頑張らないときっと後悔しちゃうから――――
 私は気を抜けば意識を無くしそうな身体を押して、ゼットと共に、さらにもう一階上へと上がった。
 すると、次の階に広がっていたの今までの迷路のような階層とは全く違う風景――――
 階そのものは広い一つのステージだが、浮石や四角いブロックによる幾層にも分かれた高低差が存在し、塔のさらに上の階層へと先の見えない闇が続いている。
「不思議な階だね――――」
 私がそう言葉を漏らした途端、階層のどこかから、特別性の広範囲パラライズ弾が私たちに向かい飛んできた。
 広範囲パラライズ弾は、床に当たると炸裂し、私とゼットの身体をマヒさせる。
「ぐあッ!?」
「うッ!!」
 疲労の上、あまりにもタイミングの良い不意打ちに、私もゼットも運悪く反応出来なかった。
 挙句、私たちのピンチに合わせる様にして、低い老人の声が響き渡る。
「ふはははッ! 待ち伏せ成功じゃッ! ロズベルト製のログアウトキー消失パラライズの味はいかがかな? ゼット!」
 私とゼットが、痺れた体で上を見上げると、遥か上の高台では白髪の老人を中心とした、30名ほどの白い装束の集団が、それぞれ銃火器を構えている。
 ゼットは、その老人たちを睨み付けながら、痺れた体を無理やりに奮い立たせ、私を庇うように前へと立ち、大剣を握り込んだ。
「テメェ……ロズベルト・ハワードのマッドジジィかッ!?」
「左様。貴様を一度捕らえることに成功したワシじゃよ……。そして、今度こそ貴様を完全に解析し、兵器としての運用を試みてくれるわ! ぬはははッ!」
 老人――ロズベルト高笑いに反応するかのように、周囲の白装束たちは、ゼットへと赤いレーザーサイトを向ける。
「では、貴様が庇っているお嬢さんには申し訳ないが、常人ならば脳幹が焼き切れるほどの痛みを与えてから、連れて帰るとするかのぅ……何せワシらは、本物の『魔法』に対抗する手段を、過ぎた化学しかしらんでな……」
「ちィッ!!」
 ゼットは、力を振り絞り、大剣の刀身を盾にするように構え、後ろにいる私を守ろうとする。
 私はゼットのように何とか身体を動かそうとするが、AWの本来のパラライズ値さえ超えた異常な痺れに、口以外を動かす事が出来ないでいた。
「ゼット、私の事はいい! 逃げてッ!」
「ダメだ! 俺が逃げれば、あのジジィはお前を人質にする! アイツらの有する兵器は、VRのパルスを介して、現実のお前さえ殺せる代物なんだよ!」
「そんな……」
 怯える私を見ながら、ロズベルトは、勝利を確信したかのように高笑いをした。
「ぬはははッ! 付け加えるなら、今のように、ゼットの『魔法』を僅かな時間程度なら完全に封じる事も出来るぞ――――やれェッ!!」
 白装束の男達は、私たちに向けて、銀色のレーザー銃のような装備の引鉄を引こうとする。
 私は死の恐怖に怯え、生を願う祈りと共に目を強く閉じた。
 ――――もう駄目だッ!! 神様ッ!! どうかゼットだけはッ!
 しかし、私だけに都合のいい神様は、この世には居られない。
 それは三年前の母さんが亡くなった日に、分かっていた事だ。
 だけど――――私に対し、適度に都合のいい大人は居たようだ。
 ロズベルトたちより、さらに上の段差からは、聞き覚えのある声が響いた。
「いけませんなぁ……ロズベルト財団総帥とはいえ、他人様の娘と、その恩人に好き勝手をしようとしては……挙句、VRパルスを過度に刺激する兵器の使用。これは下手をすれば、オンライン新法第十八条に従い、極刑が下りますぞ?」
「な、何者じゃッ!?」
 予期しない声に、ロズベルトたちは慌てふためきレーザー銃の構えを解いた。
 刹那――『今だ』と言わんばかりに、ロズベルトたちの真上からは、刀を持った赤い和鎧のプレイヤーが飛び降り、五月雨の如く連続技で、ロズベルトの周囲の人間が持つレーザー銃を破壊する。
「なッ!?」
「ハンドルネーム・ただやん☆および、睦月維人、推参ッ!」
「お、お父さんッ!?」
 突然のお父さんの乱入に驚く私だったが、乱入者はまだまだ居たようだ。
 お父さんが、ロズベルトを睨み付けながらも声を上げると―――――
「メリア殿、及びMNSの諸君ッ! 私に続けェッ!」
「OKよ! ただやん☆!」
「「「「「了解しました! ただやん☆社長ッ!!」」」」」
 上方からは、メリアによる銃撃乱射が行われ、さらにその隙に、忍者の様なアバターを駆るNMSの社員たちが、白装束たちに向けて飛び降りていく。
 どうやらメリアは、ケイジと面識があったからか、お父さんたちから連絡を受け、MNSの関係者とパーティを組んでいる模様だ。
「覚悟なさい、アンタら!」
「ブフォッ! マサニ、ゴホウビィ!」
「「「NMS裏社訓! 悪・即・斬ッ!」」」
「オゥ! ジャパニーズ・シノビッ!?」
「ガッデムッ! ユー・ゲコクジョウッ!!」
 この奇襲により、白装束たちの包囲網は崩され、形勢は不利から拮抗へと変わる。
 さらに、お父さんはロズベルトへとの対決を望んでか、腰を落とし、刀の切っ先をロズベルトへと向けた。
「さて、ロズベルト殿。貴殿を法で裁く前に、企業のトップ同士……真っ向からの決闘デュエルと行きますかな」
「ぐぅ! 日本のサラリーマンごときが……ワシの邪魔をしおって……許さんッ!!」
 しかし、ロズベルトも負けてはいられないのか、某映画のレーザーソードのような物を取り出すと、お父さんと激しい戦いをくり広げ始めた。
 私たちを差し置き、メリア&忍者VS白装束と、お父さんVSロズベルトの構図が生まれる中、遂には最近姿を見せなかったブラコン兄貴までもが、私たちの近くへと現れる。
「おいおい……メイ……久々だってのにオレの事、酷い目で見てない?」
「そんな事ないよ。ナイトの姿似合ってるね、お兄ちゃん」
「だからジト目はやめてくれっての……っと、ゼットもメイも動かないで。今、麻痺を解除するから」
 ケイジはそう言うと、メニューボードを開き、私とゼットの特殊なパラライズを解除した。
 駄文だが、手口からしてチートにはチートを、というヤツだろう。
「――――で、メイ。メリアちゃんからある程度は聞いてるけど、ゼットの記憶は戻ったかな?」
「それがね……この『バエルの塔』にある魔法陣の核を探さないと、ダメみたいなの」
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