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ちぇんじVRガール! ~私と僕と不思議なアイツ~ 作者:鳥飼誠二
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 お父さんは私を見ながら、先程まで桜子ちゃんが座っていた椅子へと腰かける。
 続くようにして、笑みと共に飛んできた言葉は、やはり冷たい雰囲気――――
「どうだ。最近の足の調子は?」
 私には、お父さんの質問が心配からというより、あくまで社交辞令としての問いかけにしか聞こえなかった。
「うぅん。まだ、歩けないままだよ」
「……そうか。もう三年もなるのに…………いかんな。思い出しては暗くなってしまう。話は変わるが、AWでは楽しく遊べていたか?」
「うん。ぼちぼち」
「ははっ、そうか。メイが楽しく遊べているなら、お父さんは頑張って仕事をしているかいがあるというものだ。だが、最近はAWで不思議な事件が起きていてな……そうだ、メイのアバターは何か調子が悪くなったりしていないか?」
 質問攻め……嫌なやり口だ。
 お父さんが、私の心を探っているのがよく分かる。
 ここで、ゼットとの一部始終を話してしまえば、お父さんは少し怒った後、私にこんな嫌な雰囲気の目を向けず、ゼットのみを追いかけるはずだ。
 でも、ゼットは――――
『もし喋ったら……俺はお前たちを許さない』
 初めて会った時のままのゼットだったら、きっと『喋ったら殺す』と、実行しないにしろ脅していただろう。
 アイツも、私たちと関わって、ちょっとだけ柔らかくなったのかな……
 詳しくは分からないけど、とにかく、今はゼットを庇わなきゃ。
 私は、その事を決めると、お父さんへと質問を返す。
「それより、1つ気になったんだけど……お父さん。もしかして、お兄ちゃんの事、叩いた?」
「まぁな……ケイジはとんでもない事をしてね。やったことがやった事だけに、叩かざるを得なかったんだよ」
 お父さんは、嘆きの表情の後、息を深く吐いた。
 私はと言うと、会話の主導権を取られないように頭を回しながら、ケイジについて質問に回る側の姿勢を保ち続ける。
「え……お兄ちゃん、そんなに悪い事をしたの?」
 多分だけど、ケイジがゼットに関わっていた事は、既にお父さんにバレている。
 だが、あのシスコンハイスぺ兄貴、ケイジの事だ。
 自分のやった事がバレたとしても、私やゼットに対して被害が及ばないように細工したり、全く別の説明をお父さんにしている可能性がある。
 私は息を飲みながらも、ケイジを信じ、お父さんの言葉に耳を立てた。
「……ケイジはな、極秘性の高い自走性プログラムのデータを秘匿するために、AW内のメイのアバターにソレを組み込み、隠し場所にしていたんだよ。全ては話せんが、そのプログラムはVRの領域を超えて、現実にまで影響を及ぼしてしまう未知のモノで、とても危険な存在なのだ。なのに、アイツときたら、自己の主張を通すために、実の妹のアバターにそんなものを埋め込みおって……」
 お父さんはケイジの名前が出る度に、拳を強く握り込んでいた。
 やっぱり、ケイジは自分が独断で、すべてを行ったように話していた……
 その意図が示すところは、私の身の安全を守りたいのもあっただろうが、一番はゼットが捕まり、軍事利用されてしまわないようにする事だろう。
 私には、ケイジの意図が理解できたからこそ、その想いを無題しないために、あえてバカのフリをする事にした。
「え~! お兄ちゃん、そんな怖い事、私にしたてたのッ!? はぁ……ショック……」
「だから叩いたのだ。――が、安心しなさい。メイのアカウントは、現在、停止にしてあるが、安全に使える状態にして返してあげるから……」
 え……まさかの展開なんだけど……マズイ、マズイッ!
 ルパンのアカウントが停止になったら、AWでゼットを助けられなくなるし、それどころか使い魔として封入されているゼットが捕まっちゃう!
 なんとか、停止を解いてもらわなきゃ!
「お、お父さん。でも、私のアカウントを停止するのはやりすぎじゃ……」
「メイ。私の話は冗談ではなく、そのプログラムをお前のキャラクターに置いているのは、本当に危険な事なのだ。それに、ケイジの組み込んだプログラムは、ユニークすぎる上に、本人でも簡単に解けないよう、パスを自動更新してしまうため、解析するに時間がかかる」
「でも……私は……」
「ソレについでに調べた限り、メイはメイで、ケイジから不正にクインスコーピオを受け取ったり、勝手に組み込まれた使い魔を、これ見よがしに使ったり、どちらにせよ真っ当な遊び方をしていなかった。そういった意味でも、アカウントの一時停止は、今回の件に限らず運営側としては妥当だとも言えるんだぞ?」
 ああああッ、本格的にマズい!
 使い魔=ゼットだってバレてないのが唯一の救いだけど、私には正論を切り替えすためのカードがないッ!
 そ、そうだ! ここは娘としてのワガママモードで……
「私、AWにインできなかったら、きっとストレスで死んじゃ――――」
「ダメと言ったら、ダメだッ! 親の言う事は聞きなさいッ!」
「――ッ!?」
 私は、お父さんの一言に、頭を殴られたようにショックを受け、言葉を返せなくなってしまう。
 私が黙り込む中、お父さんは言葉を続けていく。
「メイ……お前はもう15歳だ。いつまでもVRばかりしていないで、現実とのバランスを考え、歩けないなら歩けないで、生き方を考える必要がある。だからな……これをいい機会に、他の事にも興味を持ってみたらどうだ? お父さんはその為なら、いくらでもお金を出して、特にメイには、裕福な思いをさせてやるから」
「……はい」
 お父さんは、私の空っぽな返事に満足そうな表情を浮かべ立ち上がると、私の頭の上へと手を置いた。
「うん。素直でいい返事だ。じゃあ、お父さんは早速、ケイジと共に社に行って、お前のアカウントを解析を急がねばならない。メイもリハビリ、頑張るんだぞ?」
「……はい」
 撫でられても嬉しくない……
 だって、お父さんはゼットと違って、私の心を見ていないから。
「では、またな」
 お父さんは、その事さえも気づかず、病室を急ぎ足で出て行く。
 一人病室に残された私は、涙を溜め込みながら、動かない足を見つめていた。
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