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ちぇんじVRガール! ~私と僕と不思議なアイツ~ 作者:鳥飼誠二
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 ゼットは、メリアのタイミングの悪いの登場に対して、
『ほぅ……ロリ巨乳でメイド。チョイスは悪くない……むしろグッド!』
 などと、記憶の事なんてそっちのけで、世迷い事を述べる始末。
 これには私――いや、僕は、
「おい、ゼット! いきなりそれはセクハラだろう! 君は胸さえあれば誰でもいいのかッ!?」
『おいおい、相手はアバターだぞ。もしかして、妬いているのか?』
「うるさい、うるさいッ! 妬いてなんかないもんッ!!」
 むきーッ、ゼットの無神経ッ! 私の気持ちも知らないで!
 まさかの記憶復元か!? ――か・ら・の!
 メリアのアバターに対しての高評価!
 これには断固抗議せねばならない!
「そもそもがアンタ! 四六時中、私と居るのに『綺麗だね』とか『可愛いね』なんて一回も口にした事ないじゃない!」
『あのな……わざわざ、その手の言葉を常日頃ささやく意味があるのか? 俺はそう言う、チャラチャラした男は好かん!』
「好きとか嫌いじゃなくて! 女の子には時々でいいから言ってほしい言葉があるんですぅッ!」
『知るか! むしろ、ルパンのアバターで女の仕草は止めろ! 見ていて不快でしかない!』
 私とゼットが、毎度のログ無しウィスパーで言い合いをしていると、会話が認識出来ないメリアは、不思議そうな顔で、問いかけて来た。
「アンタ……使い魔相手に、アクションしてなにやってんの?」
「いや……気にしないでくれたまえ」
『……アホ!』
 ッく! ゼットめ、余計な事言い残して!
 僕は泣く泣くゼットの相手を切り上げ、メリアを見つめる。
 メリアの長いツインテールが、夜風に拭かれ、黄金の稲穂のようにふわりと揺れた。
「――で、キミが僕に奪還を頼むなんて、妙な話だね?」
「そうね。AWの世界で、私が取り戻してほしいものなんて一つしかないわ」
 言葉と共に、メリアは目を細める。
 黄金のまつ毛に囲われた、エメラルドグリーンの瞳の奥で燃えている感情は、敵意と憎悪。
 何のことはない。メリアが、僕に取り戻してほしかったものなど、初めから一つしかなかったのだ。
 僕はそのことを理解すると、ゆっくりとメリアから距離を取り始める。
 メリアはそれを了承のサインだと思い込んだのか、自らが持つ重火器武装、アサルトライフルから、ガトリング、バズーカ、そして、メリアお決まりの四連ロケットランチャーまでをも周囲へと呼び出し、アサルトライフルを連射モードにして構えると、手始めと言わんばかりに標準を僕へと向けた。
「それはね、私たちの狂騒の時間よッ!」
「チッ!」
 ――――――ガガガガガガッ!!
 凄まじいまでの連射音が、夜闇の湖畔へと響き渡る。
 だが、メリアの放った弾丸は、全て僕の作り出した幻影スキルへと吸い込まれ、僕自身に傷を負わせることはない。
 僕は自慢の足を頼りに、ゼットを引き連れつつも、メリアの攻撃をかわし続けていく。
「そう、逃げて! 逃げて、逃げてどこまでもッ!! 私が善の賞金稼ぎで、ルパンは悪い泥棒のロールプレイ! 今まで通りでいいじゃないッ!? なのに何で、勝手に一人でいい子初めて、賞金首じゃなくなっちゃうのよッ!? 私はずっとルパンを追って居たかったのにッ!」
 まるで、子供の駄々だ。
 メリアに関しては、前々から幼い部分があるとは思っていたけど、ルパン討伐の賞金が次々に解かれている事に、ここまで腹を立てているとは思わなかった。
 飛び交う弾丸の嵐の中、ゼットは僕と目が合うと、意外な意味を含む言葉を投げかけてくる。
『……あの女は子供だな』
「ああ! 予想していた以上に精神的にね!」
『違う。あのアバターの中身に居る魂が、メイよりも幼い子供だと言ったのさ。年齢にして十一、二の少女。磨けば可愛くなるかもだが……それより、全身のアザが気になる』
「……アザ?」
『ああ、アザだ。打ち付け、痛めつけられたかのような、軽度の拷問を施した時に似た――そんなアザだ』
 僕にはゼットが言うようなオカルトな世界は分からない。
 相手の魂――現実の姿がアバターを介して見えてしまうなんて事さえ、正直、今でも半信半疑だ。
 だけど、僕にとってゼットは最も信用に値する人物の一人。
 だからこそ、僕はメリアが放つ様々な火器攻撃を避け続け、声を飛ばす事にした。
 だって、そんな現実を知ってしまえば、メリアも私と同じで、嫌で嫌で受け入れられなくて、どうしようもない現実から逃れるために、AWに身を落しているのかと想像してしまったから――――
「メリア、聞いて! 痛みや憎しみを僕にぶつけたって何も変わらないぞ!」
「ッ! ――知った風な事言い始めてッ! ルパンは説教稼業でも始めたのッ!?」
「違うよ、聞いてッ! 現実はご都合で出来てないから、僕だって辛いよ!」
「だったら、逃げて逃げて逃げ続ければいいじゃないッ!? AWこそが私たちの本当の世界! それで全て丸く収まるのよッ! 上手くいっている方の世界を優先して、リアルの憂さを晴らして何が悪いのッ!」
「違うッ、それは違うよッ!」
 メリアの言葉を否定しながら、彼女の言葉は確実に僕の胸へと突き刺さっていく。
 僕はゼットのお陰で、ちょっとづつだけど視野が広がっていて、今では少しだけ他人を想い図れるようになった。
 だけど、結局、現実のメイに戻ればダメな部分は多いし、AWにだって、まだまだ依存している。
 私だって、メリアに講釈を垂れるほど立派な人間じゃない。
 でも……それでも――――
「違わないわよッ! 私の痛みや苦しみを、分かってくれる人なんているもんかァッ!!」
 僕は無我夢中で、メリアの攻撃をかいくぐると、彼女の目の前へと距離を詰めた。
「ッ!?」
 やられてしまうと目を閉じたメリアに対し、私は大きく手を振りかぶる。
「こンのォッ! 私だって、足が動いてくれないんだからァァァァッ!!」
 パァンッ――――
 少年のアバターには似合わない、女々しいビンタがメリアの頬を射抜いた。
 私は、ルパンの身体を使い、戦意を無くしたメリアを、感情のまま強く抱きしめる。
「……きっとね、私たちが辛い辛いって言い合って、AWを八つ当たりの道具にしてたんじゃ、何処かで憎しみや悲しみを感じる人が、連鎖的に増えていくだけよ。だから……そんな辛そうな顔して、武器を振るわないで」
「ルパン……アンタ……女の子……」
「そうよ……メイ、足が動かない15歳。不幸だ不幸だって、私も八つ当たりのためにログインして、自分を正当化する理由をばかりこじ付けて、誰かの迷惑なんて考えないで怪盗をしていた! でも違うの! そこで得られるエクスタシーは現実を誤魔化すための感情でしかなくて、それだけじゃ辛い現実は、何も変わってくれなくって……」
 えぇい! 何で私はこんな時に、言葉を上手く伝えられないんだ……
 頭の中が言いたい事でめちゃくちゃになって、伝えたいことを伝えられない。
『やれやれだな……』
 ゼットはそんな私を見かねたのか、人の姿へと変わると、私の肩を叩きメリアから離れさせた。
 私が見守る中、ゼットは、メリアと同じ目線の高さまで屈むと、
「いいか……クソガキ。生きてりゃ誰だって辛い事ばっかだよ。でもな、戦う場所だけは間違えちゃいけねェ。お前がメイを追いかけて、傷つけても、本当のお前は救われないぜ……だったら声を上げろ。痛い、苦しいって、お前が訴えるべき相手に訴え続けながら、全力で解決の手段を探すんだ。ソレがお前が今、本当にすべき事だろう?」
 かつて私にそうしたように、メリアに対しても道理を説く。
 メリアは、当然現れたゼットに対し『何者なのか?』という疑問を抱く前に、的を射られた言葉にデジタルの涙を流し、口を開きかけた。
「でも、アイツは――――」
 しかし、事後。メリアは口を開いたまま、時が凍ったように硬直してしまう。
 ゼットは鳥の姿へと戻り、私――ルパンの顔を見ると、
『……どうしたんだ? コイツ』
「外部から強制的にVR機器を引き剥がされて、ログアウトしたんだと思う。五感シンクロ型のVRって感情が高ぶり過ぎて、システム制御の範囲を超えちゃうと現実の本人まで、声を出しちゃう時がたまにあるの。それで、誰かがメリアの異変に気が付いて――――ってところなのかな?」
『なるほど……ところで提案だが、今日は一旦ログアウトしないか?』
 ゼットがこんなことを言い出すなんて珍しい。
 先ほどの塔――『バエルの塔』を見て、何か思う事があったからかな?
 メリアのアバターがフリーズ後、自然処理で消えてしまったのを確認し終えると、私は、メニューボードを開き、ゼットの提案に乗る事にした。
「わかった。じゃあ、今からログアウトするから、現実に戻ったら色々と話してよ?」
『よかろう。ソレに……あの少女、早く手を打たねばマズい事態になるかもだしな』
 ゼットが口にしたのは、またもメリアの事。
 だとしても、今だけは、私にヤキモチの感情はなかった。
 ゼットから聞いたメリアの情報である、アザだらけの身体と、メリアがリアルで声を出してしまった事により強制的にログアウトさせた相手――――
 それら二つの点を考えてしまうと、嫌な予感が止まらなくなってしまったからだ。
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