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ちぇんじVRガール! ~私と僕と不思議なアイツ~ 作者:鳥飼誠二
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「……凄い綺麗な世界だ。竜の骨から続く先に、こんな水晶洞が存在していたなんて」
 『竜骨の空洞』の中、僕は景色に見とれてしまい思わず声を上げた。
 ダンジョンの内部は、地上の砂漠とは違い日中でも肌寒く、それでいて瑪瑙色の岩肌と共に、魔水晶が多数配置されているという幻想的な光景が広がっている。
 天井の隙間から、砂漠の砂が、ぱらぱらと砂時計のように落ちてきている中、ミーシアさんは、僕に見えやすいようメニューコマンドを開くと、件のレアクエスト『怪盗サンドゴブリン』の現在状況を呼び出した。
 そこに書かれていたのは、クエストお決まりの煽り文句と、クエスト失敗まで残り一時間を示す、タイムリミットの表示が――――
 ミーシアさんは、焦りの表情で僕を見ながら、声を飛ばす。
「本当はもっと時間に余裕のあるクエストらしいのですが、私が奪還掲示板を利用するに尻込んでいたせいで、切迫した状況になっています。もし、『ガラスのカーネーション』を取り戻せたら、レアクエストの報酬アイテムと、用意した八十万ギランをお支払いしますので……」
「分かった。でも、お礼のお金はそこまでいらない。往復の転移石代、カプセルバギーのガソリン代、それと、実弾の弾薬代程度でいいよ」
「え……? でもそれじゃ、ルパンさんが……」
 僕は、ゼットと共に前へと進みながらも、戸惑いの表情を浮かべるミーシアさんへと回答をした。
「ルパンは過度な報酬なんて求めないし、自分が『そうしたい』と思った事を、止まらずに実行していくキャラクターなんだ。だから、僕に対して、正当な理由ある冒険を依頼してくれるだけで、それはある意味、僕への報酬なんだよ」
 つまり、ソレが僕のロールプレイ。
 僕は自身は、この足を使い、ルパンらしく冒険が出来たらそれで満足なのだ。
「さ……そんな事より、行こう。この手のクエストは、目的地が深部にあるのがセオリーだ」
「あ、はい!」
 と、いっても、ミーシアさんは、装備からスキルまでが、全てファッション用なので、僕自身が護衛を兼ねなきゃだけど……
 冷たい岩の足場をしっかりと踏みしめながら、僕たちはダンジョンを進んでいく。
 しかし、ここはダンジョン。クエストの対象エネミーである、サンドゴブリン以外にも『竜骨の空洞』固有のモンスター達が湧いて来る。
 僕たちの目の前に現れたのは、鋼鉄の身体を持つ大蟻と毒の大グモの集団。それぞれが2mを超えた個体であるアイアンアントとべノムスパイダーの群れだった。
『ガチガチガチガチ!!』
『シュルルッルル!!』
 虫型モンスターたちは、威嚇の音をかぎ鳴らしながらこちらへと近寄って来る。  
 が、相手はモンスター。僕は、普段、プレイヤーに対してはキルをしないことを心掛けていがモンスター相手ともなれば話は別だ。
 僕はクインスコーピオを構えると、モンスターたちの眉間めがけて威力重視の雷撃系の魔法弾を次々と打ち込む。
 ――――タンッ! タンッ! タンッ!
 銃声が響くと共に、モンスターらは頭部を砕かれ倒れていく。
 僕は、静止射撃以外にも、持ち前のAGIアジリティの高さを生かした立体移動を繰り返しながら、モンスターの攻撃を次々にかわしては倒し、ヘイト値を取りながら、ミーシアさんをも上手く護衛した。
 出会いがしらの不意打ちを警戒し、ダンジョンを進行していると、ミーシアさんは僕の後ろで感心の声を上げた。
「す、すごい! 速さも技量も、映画みたいだ!」
 そりゃ、ここまで来るのに努力もしたからね。
 ルパンになりきるために、20m先の卵を一般のハンドガンで狙撃する練習もしたし、もちろん曲撃ちの練習だって頑張った時期があった。
 今ではその上に、クインスコーピオがの性能が加わっているから、僕の射撃はチートクラスに正確性があるだろう。
 だが、AGI以外のステータスに関しては軒並み最低限にしか強化していないので、ルパンは継続戦闘がそこまで得意じゃない。
 ここは、無双なんて楽しまず、サックリとレアクエストを攻略にかかるのがベストだ。
 僕はゼットを見ると、ログ無しウィスパーで声を掛けた。
「ゼット! ミーシアさんを連れて駆けるから、背後の守りを頼む」
『まかせろ。あんな脆弱なモンスターもどき、何体湧こうが塵に等しい』
「流石だ。最高に頼りになる!」
 僕は、ミーシアさんの手を掴むと、脚力にすべてを任せ思い切り駆けだした。
「うわ! わわわわッ!」
 ミーシアさんのアバターは軽く、僕ごときの力でも、加速力だけでふわりと浮き上がる。
 その間、後ろからは新たにモンスターたちが現れるも、使い魔状態のゼットは、さまざまな種の色とりどりの魔法陣を浮かび上がらせながら、多属性の魔法を飛ばし撃退していく。
 僕は僕で、空いた左手にクインスコーピオを装備すると、側方と前方に現れるモンスターを、どれもこれもヘッドショットで次々と撃退していく。
 多少強引な進撃作戦は無事成功し、僕たちは、足場が砂にまみれたダンジョンの最深部へとたどり着いた。
「……ここが最深部かぁ。足場が一面砂だらけだ……」
 僕が嫌そうに声を上げる中、ミーシアさんは、僕を見上げると、心配そうに声を掛けた。
「あ、あの、一応伺いますが、ルパンさんはサンドゴブリンの特性をご存知ですか?」
 僕は、クインスコーピオのマガジンを魔導系の物から、実弾へと入れ替えながら、
「魔法によるダメージが、特に低いんだろう?」
「はい……ですので、私が言える立場じゃないですが気を付けてくださいね……」
 最も、それはあくまでゲーム内の魔法に対してであり、ゼットの本物の魔法だとデータの耐性ごと貫いちゃいそうだけど――――
「と、言う訳で、ゼットは本物の魔法を使用している事をばれないように、攻撃を控えめにね」
『分かった。先に忠告しておくが、砂の下に数体潜んでるぞ。気をつけろよ』
「え……」
 僕の索敵スキルには全く引っ掛からなかったのに、ゼットは僕以上の索敵をスキルの補正なしで感じているのか……やっぱり、ゼットは本当に凄いな。
 うぅん。凄いって思うだけじゃダメだ。僕も負けてられない。
 僕だってAWでは、悪い意味だけど有名プレイヤーなんだ。
 ゼットの凄さには追い付けなくても、感心させられる戦い方ぐらいして見せるさ!
「ミーシアさん。僕が音爆弾を投げたら、何も考えずに僕についてくる事だけを考えてください」
「はぁ……構いませんが、まだサンドゴブリンは、出てきていないのでは……」
「……いえ、居ますよ。だから、とりあえず目先の連中を倒します――――それ!」
 僕が投げた拳サイズの音爆弾は、砂地に接着すると高い爆発音を上げ、砂地に潜んでいたオレンジ色のサンドゴブリンたちを一斉に地上へと引き上げた。
 ルパンより小さな体格のサンドゴブリン数体が耳を抑え苦しむ最中、僕は実銃モードのクインスコーピオで、彼らの頭部を的確に射抜いていく。
 そうして、場に潜んでいた全てのサンドゴブリンを倒し終えると、僕たちが最下層に降りてくるのに使用した階段がいきなり消失し、フロア全体に低い声が響いた。
『くっくっく、大切なモノを取り戻しに来た冒険者よ。良い腕だな……だが、この怪盗サンドゴブリンこと、ゴブラー様が直々に相手をしてやるとしたらどうだ?』
 この声は、このレアクエスト演出のためのものなのだろう。
 音声が終わると、僕たちの目の前に、黒いスーツを着た片眼鏡のサンドゴブリンが姿を現す。
 なんだ……ボスキャラは一人か。これは楽に終わりそうだ。
 僕が、油断をした次の瞬間――――
『行くぞッ!!』
「ッ――!!」
 ゴブラーは、脚部速度にマイナスをもたらす砂地を。ものともせず加速すると、僕の横を抜け、ポイズンナイフで、無防備なミーシアさんをいきなり刺した。
「うわッ!」
 元々、Lvを満足に上げていないミーシアさんは、ゴブラーの一撃でキルされ『ソウル状態』へと変えられてしまう。
「こんのッ!」
 僕は全速力で振り向き、ゴブラーをヘッドショットしようとするが、ゴブラーの回避行動の速さに、肩をかすめる程度に終わってしまう。
『ははは! どうやら、私と対等に戦える素早さを持つ者がいるようだな。これは楽しみだ!』
 ゴブラーは砂地のフィールドを走り回りながら、音声を響かせた。
 プログラムだと分かっていても、ムカつく音声だよ、まったく!
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