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どうしてこんなことになったのか。
ついこの間まですべてが順調だった。それがわずか――わずか一度の戦いですべてが引っくり返った。
――これが運命だとでもいうのか。
理不尽な思いが心をしめつける。すべてが必然だというなら、あの敗北さえも定められていたことなのか。
この苦境も。
この怒りも。
この憎しみさえも。
――すべてが消えてくれたらいいのに。
あらゆる存在が消えてしまえば、自分もこの苦しみから解放されるだろう。
何も悩まなくて済むだろう。
誰にも蔑まれずに済むだろう。
片翼は、ただの重りでしかなかった。
偏った凄まじい重圧。
いっそ、みずから切り落としてしまいたい。
――俺はどこへ行けばいい、どうしたらいい。
まったくわからない。
四方が深い霧に包まれているようで、もう何も見えない。
何も聞こえない。
何も感じられない。
それなのに、不思議とどこかへ落ちていくような感覚はあった。
支えなき奇妙な浮遊感。
それは空を飛ぶことに似ているようで、その実、対極に位置していることのように思えた。
――どこまでも落ちていけというのか、翼のない者は。
何者かに引きずり込まれている不快感。
その相手が見えない焦燥。
その積もり積もった思いが、やがて体を内部から爆発させそうになる。
落ちていく、落ちていく、落ちていく。
堕ちていく、堕ちていく、堕ちていく。
朽ちていく、朽ちていく、朽ちていく。
落ちていく、落ちていく、消えていく。
――ああ、なぜ俺は俺なんだ。
すべてが、理不尽で不思議で不快で憎かった。
何もかもが黒色に塗り替えられようとしている。