「ここ、どこ?」
私は中山志織。ついさっき自殺しようとして海に飛び込んだらいつのまにかここにいた。
霧がかってまわりが何も見えない。
もう何十分も歩いているのに、まるで進んでいる気がしない。
「…あれ?」
霧の中に、テントのようなものが見える。近づくとどうやらサーカス小屋だった。
「なんでこんなところに?」
こじんまりとしたサーカス小屋。気付くと入り口からピエロが顔と手だけを出し、手招きしていた。
「私?」
ピエロはコクコクと頷いた。
私は、ピエロに誘われるがままにサーカス小屋の中に入った。
サーカス小屋というより、そこは少し大きなテントのようなものだった。観客席はない。ただ小さなステージとパイプイスが一つ置いてあるだけだった。
「ここに座ればいいの?」
私はパイプイスを指差すとピエロはまたコクコクと頷いた。
私がイスに座ると、ピエロはニコッと笑ってステージにあがった。
ピエロは赤い丸いハナ、真っ白な肌に目の辺りに描かれた赤い星や涙、ちぐはぐのカラフルな服、サンタクロースみたいな帽子、そして体をくねらせながら歩く姿が特徴的だった。
そのピエロが右手の指をパチっと鳴らすと煙とともに剣が現われた。さらに今度は左手の指をパチっと鳴らす。すると今度は人が現われた。
「えっ!?」
それは、私が憎んでいた人。高校でいつも私をいじめていた矢部啓太だった。
「…あれ?なんで俺こんなところにいるんだ?」
どうやら啓太もここがどこだかわかっていない様子だった。
…不意にだった。ピエロが右手の剣でスパンと啓太の首を斬った。
最初は私は何が起きたのか理解できなかった。ただ汗がひどく、体が震えていた。声も出なかった。だけどなぜか私は怖いという感情をもたなかった。むしろ爽快感が…あった。
ピエロはまた指をパチっと鳴らした。すると今度は私のクラスの担任の吉川だった。吉川も私が憎んでいた人の一人だった。私がいじめられているのをいつも見てみぬフリをしていた。それがどうしても許せなかった。
またピエロは右手の剣でスパンと首を斬った。
ステージは瞬く間に二人の血でどす黒い赤に染まった。
私は、それでも怖くはなかった。それどころかわくわくしていた。自分の嫌いなヤツが死んでいく。そんな私の中の狂気が目を覚ましていたのだ。
ピエロは二人の首を左右にの手に持ってお手玉をはじめた。
私は、笑っていた。
首が投げられるたびに血が舞う、私にも結構かかったのだが気にならなかった。
ピエロがお手玉をやめた。私は大喜びで拍手した。
次にピエロは右手でハンマーを、左手で私のお母さんを出した。
ピエロは剣を持ち、お母さんの全身を高速で斬った。
お母さんは立ったまま、動かない。
ピエロはハンマーに持ちかえて、お母さんにねらいを定める。
「コンッ」
いい音がした。お母さんの膝下がハンマーによってきれいに飛ばされ、上の部分は崩れることなく、そのままの状態で落ちた。
まるで、お母さんのダルマ落としだった。
泣き叫ぶお母さん。全身を斬られたはずなのに、意識があるようだった。
私はお腹を押さえて笑っていた。
「アハハハハハ」
お母さんは、いつもいつも勉強勉強うざい。私がいじめられていることも知ってるくせに容赦なく殴ってくる。私はお母さんを憎んでいた。
その後もピエロは色々な方法で私を自殺にまで追い込んだ人たちを殺した。
熱湯に入れる。首吊り。水槽に入れて出口を塞いで水死させる。そのどれもが私の狂気を喜ばせた。
ピエロは血で真っ赤。私も顔も体も血で真っ赤だった。
ピエロは今度、私の親友の愛を出した。
ピエロが愛に向かって剣を振りかざした。
そこでようやく私は我に返った。
「や、やめて!」
愛の体に剣が触れようとする瞬間、ピエロの動きがとまった。
「その子は、何も悪くないわ。やめて」
ピエロはガクっと肩を下ろし、指を鳴らした。
愛は消え、私はホッとした。と同時に、ようやく私は正気に戻った。
「…何これ……い、いやぁぁぁぁぁぁ」
私はそこらじゅうに落ちているバラバラの屍と赤に染められた自分をみて目を瞑り絶叫した。
目を開けると、ピエロがすぐ目の前で不気味な笑みを浮かべていた。
…バキッ…ゴキッ…グシャッ…
「今回の死体はこれか?」
「ええ、あまり見ないほうがいいですよ」
「ぅえっなんだこれ」
「ひどいですよね、一体誰がこんなことを」
「ひでぇも何も、人の形止めてねぇじゃねぇか」
「体はバラバラ、熱湯に入れられたかのように皮膚はただれ、頭なんかつぶされてますよ」
「んなもんみりゃあわかるよ、被害者の名前はわかるのか?」
「財布の中に学生証がありました。名前は中山志織。まだ高校二年生ですよ」
「チッ下劣なヤツもいるもんだな」
「とにかく、今はこの近辺を捜査しましょう」
「…そうだな」
次はあなたのもとに来るかもよ?
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