「なぁ、平次。
この前、新幹線乗る前にゆうとったやん、
初恋の人って、誰なん?」
和葉の問いに、平次は一瞬ぎょっとした。
「教えたるか、ボケ」
「何でなん??ええやん減るもんでもないしぃ」
「お前に教えたら減るっちゅうねん」
心の中で、
"こんな恥ずかしい事言えるか"と呟く。
「和葉、ええ加減休みの日にオレん部屋押しかけるのやめぇや」
せっかくの休日が丸つぶれや。
「何言うてんの?どうせ予定ないんやろ」
平次の憎まれ口を、和葉は笑って受け流し、
窓の外に見える桜を眺めた。
「平次の部屋の窓から見る桜が、一番好きや」
机に肘をついて、あの手まり歌を歌い始めた。
「♪まるたけえびすに おしおいけ
よめさんろっかく たこにしき」
「あねさんやボケ」
平次のツッコミに、和葉は柔らかく反論した。
「ええやん、よめさんでも」
「しあやぶったか まつまんごじょう
せったちゃらちゃら うおのたな
ろくじょう ひっちょうとおりすぎ
はっちょうこえれば とおじみち
くじょうおおじで とどめさす〜」
あの時と同じ、麗らかで暖かな春の陽気。
平次は、和葉の横顔を盗み見ながら、
あの時の、桜の下で毬をついていた初恋の人とダブらせる。
"オレは、あん時からお前のこと、好きやったんやろか"
ポケットの中にいつも隠し持っている、御守り。
それも、和葉が以前作ってくれたものだ。
"いつも、お前に守られとるんやな…敵わんわ"
幼馴染は、厄介なものだ。
本心より先に、憎まれ口が出てしまう。
本当は、誰よりも大切に思っている。
それは、和葉も平次も内に秘めている気持ち。
今は、その想いを伝える術を持たないけれど。
お互いが持っている、暖かくて柔らかい想い。
それらはいつか、交わる時が来る…のだろうか?
それは、桜と、神のみぞ知る…
桜の花びらが、そんな2人をからかうかのように、
行ったり来たり、揺れていた。
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