表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/114

46話

日常回となりますー


 でも普通に考えて、200万ってのは大金だ。

 もっと高額で売ることが出来たのかもしれないけど、十分だろう。


 ボーナスでみんなに10万ずつお小遣いを……いや、ダメだ。

 ガチャで散財する未来が透けて見える。


 食事をしている酒場に入ると、おれを見つけたリーファが手をあげた。

 4人がけのテーブル席にみんなはいた。


「やっぱり先に食べてたか」

「だってジンタ遅いんだもの」


 フォークを口に運んで満足そうに目を細めるリーファ。

 食べてるのはレフォンボアのステーキらしい。

 この女神様は相変わらず肉が好きみたいだ。


 席に着くなり、とことこおれのところへやってくるひーちゃん。

 ちょこん、とおれの膝に乗る。木のコップを両手に持ってこくこくと飲んでいる。


「何飲んでるんだ?」

「……ぎゃう、パインゴのデュースなのぅ……ひっく」


 ろれつが怪しい……顔もどことなく赤いし……。

 コップを取りあげて一口飲んでみる。


「パインゴっぽい味のする酒じゃねえか」

「えっ、うそ。店員さんが間違えたのかしら……」


「ジンタ様ぁ、わたくしも酔ってしまいましたあ」


 隣にくるなり、クイナがおれにしなだれかかってくる。

 ふわっとクイナの甘い香りがして、ふにゅっと柔らかい感触が腕に……。

 当たってますぞ、クイナお嬢様。


「はい、クイナのはウソー! お酒強いって言ってたもん! わざとらしいんですけどー! あとくっつきすぎ!」

「わたくし、不覚にも酔ってしまったのです……ねえ、ジンタ様」


 ふにゅん、ふにゅん。


「…………、そうかもな」

「ジンタをおっぱいで買収しないでよ!」

「ジンタ様、いけませんか?」

「むぅぅぅぅぅぅ……! とにかく、クイナは離れて! 今はご飯を食べる時間です」


 もっともな正論で立ちむかうリーファ。

 ひーちゃんはまたコップに口をつけてこくこく、と飲んでいる。


「ひーちゃん、飲み過ぎ。ストップ!」


 取りあげると、ほっぺをパンパンにして膨れるひーちゃん。


「がうー、呑みたいときだってあるのぉお!」

「そういうこと言うのは20年早ぇんだよ」


「むう……。はぁぁぁぁ――っ! はー!」


 小さな口を大きく開いてはー、って言っているひーちゃん。

 どうやらブレスを出したいらしい。ふふふ、今は人化している。出るわけない。


「はぁあぁぁぁっ!」


 ボホォオウ!


「どわぁああ!? あぶねっ!?」


 小さな火炎を反射的に回避した。人化してても出せるんだ……。


「がう……っ! ドラゴンにも、戦わねばならぬときがあるの」


 ぴかりと体が光る。

 へ――!? ここで!? ま、待て、今ここで人化を解いたら――、


 ドラゴンの姿になると、尻尾がおれを叩き伏せている状態になった。


「「「きゃぁああああああああ!? ドラゴン――!?」」」


 ああ、やっぱこうなったか。

 おれはひーちゃんの尻尾の下敷きになったままだ。


「わわわ。お、お、落ち着いて、みんな! このドラゴンは私たちの仲間だから危害は加えないの!」

「そ、そうです。――ひーちゃんさん、早く人化を……」


「がるぅうううううぎゃるうううう、がううぅうう」


 す、すげー機嫌悪そうだ……。


 気の強そうな女の子がこっちにやってくる。エプロンつけてるから店員だろう。


「お客さま、ドラゴンの連れ込みは困ります! ウチ、そういうの禁止なんですから」

「ですよねぇー」


 どの店もオーケーしないだろ。

 どうにか尻尾の下から這い出て、いつものようにパインゴを取りだす。


「みなさん、安心してください。使役してるんです。この子はこのパインゴを食べるとすぐに機嫌が良くなりますから」


 お客さんたちはおれのほうを遠巻きに見ている。


「ほぅら、ひーちゃん、君にパインゴをやろう!」


 おれが手のひらに乗せたあたりで、食いついてきた。


 かぷ。


 顔中がネトネトするし妙に暗い……。あれ、なんだこれ。


「「「「きゃぁああああああ!? ドラゴンが人を食べてるぅううううううう!?」」」」


 おれ、喰われとるぅうううううううううううっ!?


「ひ、ひーちゃん、違うぞー、いつもと違うぞどうしたぁー? これはおれの頭だぞー? パインゴはこっちだぞー? うん、ゆっくりゆっくり口を開こうか。……おかしいぞ、ひーちゃん、どうしたー? 徐々に牙が喉に食い込んでるぞー」


 やばい! マジで喰い殺される!! チラっとリーファが見えた。


「ジンタ、私に任せて! 酔っ払いひーちゃんを正気にさせてあげるわ!」


 そうか、リーファの浄化スキルで元通りに――。


「女神ぃぃぃぃ、ぱんちっ!」

「そっちじゃねえよ!!」

「いったぁい……。ドラゴンの鱗ってやっぱり硬いのね……」

「やる前に気づけ!」


 くすん、と鼻をすするクイナがハンカチで涙をふいた。


「ジンタ様……愛してました……」

「過去の人にすんな! まだ生きとるわっ!」


 くそ、リーファもクイナもダメだ。こうなったら……。

 なりふり構ってられん。新しい仲間を呼ぶしかねえ。


 アイボの口を大きく広げて、ゴーレムを呼ぶ。

 のしのし、とアイボからゴーレムが現れた。


 酒場がざわざわとどよめいた。


「な、なんだあれは」「ご、ゴーレムじゃないか!」「あの男、一体ゴーレムをどこから召喚した……!?」「うわぁ、マジもんのゴーレムだ」「ゴーレムわっしょい!」「わっしょいゴーレム!」


 ゴーレムを見てテンション上がってるやつが何人かいる!?


「ゴーレム、ひーちゃんの口を広げろ。ちょっと今やばい」


「………………」


 なんか面倒くさそうだった。


 気の強そうな女の子がこっちにやってくる。さっきの店員だ。


「お客さま、ゴーレムの持ち込みは困ります! ウチ、そういうの禁止なんですから」

「ですよねぇー」


 どの店もオーケーしないだろ。

 ゴーレムがゆっくり回れ右して開きっぱなしだったアイボへ歩く。


「なに帰ろうとしてんだ!」


 それから――。

 リーファの浄化スキルでひーちゃんの酔いを醒まして、おれの首は胴を離れることはなかった。

 ゴーレムはアイボに帰し、人化したひーちゃんはおんぶして連れ帰ることに。


 お会計は、あの気の強そうな店員さんがしてくれた。

 迷惑料込みで、料金は多めに支払っておいた。


「こんなのもらっても困るんですけど」

「まあまあ。お騒がせしてしまったし、気持ちってことで受け取っておいてください」

「……じゃあ、それでは」


 おれたちが店を出ると、軒口にあの子が出てきた。


「……あのっ……、あなたは禁止していませんので……またいらしてください」


 ぺこりと一礼した彼女に、おれは手を振った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ