21話
皆様、明けましておめでとうございます!
本年もよろしくお願いします。
おれの手元を確認しにくるお客さんたち。
「あんちゃん、すげーじゃねえか!」
「いえ、どもども」
肩や背中をバシバシと叩かれる。
店員さんたちは、おれと目を合わしたそばから青い顔をしている。
「ば、化け物……っ!?」
「ラッキーモンスター……略してラキモン――!?」
おいそこ、略すな。なんだラキモンって。
「4444分の1なのに……!?」
「今回に関していえば確率は関係ない。……君、知らないのか?」
確率は関係ない……? どういうことだ??
奥にいる一人の店員がプルプルと金石を指差す。
「そ、そ、しょれは、黄色ですよ?」
「あら。これは黄色だったのですね……。だそうですよ、ジンタ様?」
「見本見てみろよ」
おれが端にある見本を指差すと、「まあ」とクイナが声をあげた。
カウンターの奥は茫然としている店員がいたり、何か密談をしている店員がいたり、険しい顔をする店員がいた。
「おい、どうなっている。違うだろう。誰だ手順を間違えた者!」
違う? 手順を間違える……?
首をひねりながらも、おれはお姉さんに石を渡した。
「交換お願いします」
「おかしい、おかしい、おかしい!」
受付のお姉さんは髪の毛を掻きむしりはじめた。
充血した目を見開いて、カウンターテーブルにごんと額を押しつけた。
「あのー? 大丈夫ですか??」
今度はお客さんたちがザワつきはじめた。
「急にガチャボを代えるなんて変じゃないか?」
「しかもカプセル見てみろよ。かなり小さいぞ」
「ハズレが出やすいように操作してたんじゃないのか!?」
良い具合にみなさんがヒートアップしてきた。
確率は関係ない、ガチャ側の手順を間違える――、
最初のガチャ、少なくとも数回まではハズレが出るように仕組んでいたのかもしれない。
「「「「金返せー!!」」」」
みんながカウンターに押し寄せ、店員たちはその応対でてんやわんや。
「お客様、お、お待ちください。あの人物はガチャ荒らしと【アイテム賭場】に認定された男で――」
誰も聞いちゃいないな。
騒ぎの中、おれは淡々とガチャを回す。
結局、さらに10回ガチャしてみたけど、全部ゴミアイテムを引くだけだった。
おれは店員の一人に奥の部屋へ案内され、クレリックの杖を受け取った。
例のごとく地下通路を通り、地上へ出る。
ガチャ屋の暴動騒ぎはまだ収まっていないみたいだ。
店付近でおろおろしているリーファを見つけた。
「おい、リーファ、当ててきたぞ!」
精根尽きたような顔をしている。
この30分やそこらで相当やつれたな……。
人形が原因か? 確かに西洋人形風のこれはちょっと不気味だ。
受け取ったリーファは、さっそく杖を装備した。
――――――――――――――――
種族:神族
名前:リーファ
Lv:1
HP:11/11
MP:14/214
力 :13
知力:103
耐久:2
素早さ:1
運 :1
スキル
浄化魔法 1/10(状態異常を解除)
治癒魔法 1/10(HPを微回復)
――――――――――――――――
それなりにステータスは上がっている。さすがレアアイテム。
そういや浄化スキルがあるんだった。
あ、もしかして……。
「リーファ。浄化スキル、その人形に使ってみないか?」
「効くのかしら……?」
「物は試しだ」
杖を渡すと、リーファは力を込めはじめた。
神々しささえ漂う白い光がリーファを包む。
足元に白い魔法陣が出来た。
杖が淡く光りだし、それが先端に収束していく。
祈りの言葉をささげ、杖を一振り。
「彼者の患いを祓い給え――『リカバリ』」
おぉ……なんか本物の神官っぽい。
人形が薄く光ると、すぐそれは収まった。
「ん? 人形、顔変わってないか……?」
「――あ、言われて見ればそうかも」
形相が、穏やかになっている、というかなんというか。
前は『ケキャキャ』って笑いそうだったのが、今は『うふふ』な上品な感じに。
ステータスを見てみた。
『N 普通の人形』
「あ。変わってる! おい、リーファ。呪い解けてるぞ!」
「え、うそ? 良かったぁぁぁぁ……」
と、地面にへたり込んだ。
ちょうど通りかかった女の子が物欲しそうに人形を見ていたので、そのままプレゼントした。
リーファが支援系となると、おれたちは結構バランスの良いパーティになる。
おれとひーちゃんが前衛、中衛にクイナ、後衛がリーファ。
「けど、結局、リーファは今回も無駄遣いしただけだったな」
「今度は頑張るからっ!」
「ああ、期待してる」
まあ、ガチャだからなぁ。当たらないほうがほとんどだろう。
頭をなでると、リーファは嬉しそうにはにかんだ。
「……えへへ。期待しててね?」
これがフラグじゃないといいんだけどな。
次回は、明後日の1月3日17時更新です!