20話
「ジンタ様。景品表に書いてあるからと言って、必ず当たるわけではないですよ?」
「それおれが言ったセリフじゃねーか」
「わたくし、ジンタ様が恥をかかないようにご指導差し上げます」
「いや、わかってるから大丈夫だぞ?」
クイナはついて来るつもりらしい。
リーファはというと、半泣きで人形の貰い手を探していた。
……がんばれ。
この町のガチャ屋ははじめてだけど、だいたどこも似たような内装をしている。
おれは最後尾に並んで、順番を待った。
「いいですか、ジンタ様。カプセルの中身は、引換券と石のどちらかが入っていて」
「そのチュートリアル要らねえから」
そうですか? とちょっとおれのことが疑わしそう。心配性なのかな。
そして、おれの番が来た。
「カザミジンタ様ですね?」
「あれ? この店はまだはじめてなのに……。はい、そうですが?」
「【アイテム賭場】全店に人相書きが回っておりますので。ガチャ荒らしのジンタ――」
なにその二つ名!?
「ジンタ様、そんなことをされていたのですか?」
「してないって。ただ、そういう風に認識されちゃったらしい」
ぴらっとお姉さんが紙を一枚見せてくれた。
おれそっくりの絵が書かれている。
「あら。とても良く書けていますのね。あのぉ……個人的に持っておきたいので、わたくしもこの絵を一枚いただけませんか?」
「もらおうとすんな。これ、そういうんじゃないから」
荒らし認定されてるって、そういや言われてたっけ。
「おれは、普通にガチャして当たっただけなんで、いちゃもんつけないでくださいね?」
……後ろで他の店員が何やらあわただしく動き回っている。
すると、奥の扉から巨大ガチャボックスが出てきた!
あれはこの前のやつ!?
「ガチャボックスが不調なので、代えさせていただきますね」
「嘘つけ!」
クイナが深刻そうな顔でうなずく。
「それでは仕方ありませんね……」
「素直か! クイナも故障とか何も問題なかったの見てただろ?」
「カザミジンタが来店した場合、このガチャボで迎撃するようにと通知がございました」
「この店もかよ。迎撃って……穏やかじゃないな……」
別におれはケンカしたいわけじゃないんだけど……。
「以前使われたガチャボだと思ったら大間違いです。ガチャボVer1.20は、その強化版です。具体的には、容量がさらに増えハズレ率が上がりました。……良いアイテムがでるといいですね?」
「ジンタ様の前に、まず妻であるわたくしがこのガチャを回して」
「――やめとけ」
「ガチャしないのなら、お帰りいただけますか?」
要はこれ、あれだ。おれのやる気を失くさせるための演出なんだろ?
カプセルは野球のボールくらいだったのに、ピンポン球サイズになってる!
汚ねぇ!
運の数値がぶっ飛んでるって言っても、所詮確率。
大当たりを当てる確率が100%って保証してるわけじゃない。
実は大当たり確率50%くらいのところを、運良く当て続けてるってだけかもしれないんだから。
けど、宝くじだって、買わなきゃ当たる確率はゼロだ。
念のため1万リン投資だ。これで11回引ける。
「1万でお願いします」
「はい、承りました」
「ちなみに、杖はちゃんとあるんでしょうね?」
「きちんと一つ入っています」
「そうですか。それならいいんです」
いや、いいのか?
ていうか、結果的にそうなったっているだけだから、おれ、悪くないんだよな……。
「これは、あなただけのVIP待遇です」
「んな待遇いらねえよ。逆VIPじゃねえか」
「VIP待遇……!? さすがジンタ様」
「いやだから、素直かって」
「ということは、ジンタ様。わたくしが引いても何かしら良いアイテムが出る可能性があります。ですから、ここはわたくしに」
「やめとけ」
どんだけガチャしてえんだよ。完全にハマってるな、クイナ。
ため息をつきながらハンドルを回す。
グリグリグリ……。
――ポトン。
さすがに今回は――
「あ。金だ」