18話
クイナについてきたら【アイテム賭場】に連れてこられた。
「手っ取り早く力を得るには――これです!」
バンッ、と壁を叩くクイナ。壁には――景品表がある。
「何でも、ここでガチャをすればアイテムがいただけるそうではないですか。こんな便利なものがあるなんて、わたくし知りませんでした」
「いや、確かに間違いじゃない。確かにガチャすればもらえる。でも、当てないともらえないんだぞ? おい、リーファ、おまえも言ってやれ」
「任せて。――言っておくけどね、簡単には当たらないんだからっ!」
リーファが言うと違うなぁ……実感こもりまくり。
「なに、当てればいいのです、当てれば」
にこりとクイナは笑顔を見せる。
何も知らねぇぞ、この森育ちのお嬢様は。
「フン、みんなそう言うのよ」
おまえも同じこと言ってたけどな?
『金石:SR クレリックの杖(治癒、浄化スキル使用可)』
「狙いはこれです! 何も出来ないリーファさんにはぴったりの品です」
「一言多いわよ! でも、確かにこれがあれば便利ね……」
前の町もそうだったし、この町の武器屋にも、SR級の武器は売っていない。
不要になった誰かが、ガチャ屋に高額で売り払ったんだろう。
たとえば、熟練冒険者とか。
「それならおれが剣を抜いて、リーファに渡せばいい。簡単にレベルがあがるぞ?」
「あ。そっか。それなら――」
「ダメです」
「どうしてダメなんだ?」
「ジンタ様のそれは、確かに有名なかの名剣。けれど、リーファさんの体型に合ったものではありませんし、きっと上手く使えないです。それに、リーファさんは剣で敵と戦いたいのですか?」
「そうじゃないけど、でもジンタの剣には、強力な魔法があって、その力がすごいのよ。ベヒモスだって倒しちゃうくらいなんだから。……ただ、おかしな気配は感じるけど」
「そういうことなら、平原に行って試してみましょう。まともに使えるのなら、ジンタ様の剣で特訓です」
ということで、ガチャ屋の前からおれたちは平原に移動した。
剣を抜いてリーファに渡すと、本来のスペックに戻る。
けど、この平原の魔物を倒すには十分だろう。
おれの姿を見つけたひーちゃんが駆けよってきた。
よしよし、愛い奴よのお……。
撫でてあげると「がるぅ~」と満足そうな声をだした。
「ひーちゃん、魔物を適当にこっちに連れてきてくれないか?」
「がう!」
どっどっどっ、とひーちゃんは獲物を探すため走り去った。
「リーファ、まずは【黒焔】だ。MP消費量に応じて威力変わるからな?」
おれが言っても、ぼぅっとしていて反応がない。
「リーファ?」
「え、うん……」
「……どうかしたか?」
「やっぱり、何かキモチワルイ……」
「気持ち悪い?」
「……ジンタ、これ使っているとき、何も感じないの?」
「いや、特に」
「嘘……。だってこれ、明らかにおかしい……」
ゾゾゾゾゾ、とリーファの肌が粟立っているのがわかった。
前に剣を渡したときには、こんな風にはならなかった。
何か変に感じていたことは確かだったけど。
それにあれは、結局自分では剣を抜けなかった。
……使用者に何かしら負荷をかけるものだったのか?
けど、それじゃあどうしておれは何も感じないんだ?
不思議に思ったクイナが剣に触れると同時に、飛びのいた。
熱い物に触ってしまったかのような、反射的な動きだった。
「凄まじい邪気を感じたのですが……刀身に宿るほどの」
「邪気?」
そんなの、おれは感じたことないぞ?
いや、確かに怖ぇなって思うことがあったけど……。
剣を抜いた者にだけ、何かしらの補正がかかるのか……?
触ってみても、おかしな気分になったり、気持ち悪くなったりしない。
何でだ?
取り扱い説明書があるわけでもないし、ステータスには、【魔神をも焼き殺したという逸話の残る魔剣の一本】とだけしか記されていない。
「この剣、ちょっと使えない。持ってたら、頭がおかしくなっちゃいそう」
リーファが剣を収めておれに返した。
「がうがうー」
ひーちゃんが、猪の魔物レフォンボア(Lv2)をこっちに追い込んできた。
こちらに駆けてくるレフォンボアを、鞘から剣を抜くと同時に両断する。
「……別に、いつも通りだけどな?」
「普通に見えるのに……どうしてかしら……?」
「どうしてなのでしょう??」
おれたちはまた三人して首をかしげた。
勇者の剣っていう話だったけど……。
その当時からこんな感じの剣だったんだろうか。
鞘に納めたまま剣を使えばいいのかもしれないけど、リーファもクイナもあまり剣に触れたがろうとしなかった。
今はおれがこの剣の使用者なわけだけど、前は誰が使ってたんだろう。
次回更新は明日17時です!
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