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15話


 家の中から物音がして扉が開いた。


 出てきたのは、綺麗なエルフだった。

 艶やかな青髪と青い瞳。とびっきりの美人だ。


「冒険者のお方でしょうか? クエストのご報告と、聞こえたのですが……?」

「はい。ウェイグさんにお会いしたくやって参りました」


「わたくし、ウェイグの娘のクイナと申します。遠いところ、ご足労いただありがとうございます」


 丁寧にお辞儀をするクイナさん。

 うーん、すごいお嬢様な感じがする。


「こちらへどうぞ」


 こうして、家にあげてもらったおれとリーファ。

 奥の部屋へと通され中に入ると、質の良い革張りのソファが二脚と間にローテーブルがあった。

 どうやら応接室らしい。


 やっぱ人んちって落ち着かないな……。

 そわそわしながら待っていると、カチャカチャという物音と共にクイナさんがやってきた。


 持ってきたティーセットで、紅茶を入れてくれる。


 すごい優雅な手つき。手も細くて真っ白。

 こんな人が世の中には存在するんだな。


「どうぞ」

「あ、すみません、わざわざわ」


「顔ニヤけてるんだけど」

「ニヤけてない」


 くすっと笑ったクイナさん。

 言葉遣いも丁寧だし、お淑やかだし、何よりちょっと動くだけですごい良い匂いする。


 あと、おっぱいが大きい。

 それと、おっぱいが大きい。

 何より、おっぱいが大きい。


 エルフの女性はみんなこうなんですか。


「むぅ……私のは……」


 隣でリーファがぺったんこの胸に手をやって、小さくため息をついた。


「あの……貴方たちがあのベヒモスを倒したのですか?」

「はい。あ、これ。一応鑑定書です」


「後で父に確認してもらいます。……ちなみに、倒したのはあなたですか?」

「ええ。おれですけど……?」


 誰が倒したってのは、そんな大事なの?

 おれが首をかしげていると、クイナさんは恥ずかしそうにうつむいた。


「あの、その……カッコいい、方で良かったです」

「?」


「報酬のお話は、お聞きされましたでしょうか……?」

「あ、それはこれから訊こうと思ってて」


「あぁ――わたくしったら。えとっ、あのっ、また後ほど父からお話が、あ、ありますから。そっ、それまで、し、失礼いたします――」


 トレーで顔を隠したクイナさんは慌てて部屋を出ていった。


「どうしたのかしら?」

「さあ?」


 しばらく紅茶を楽しんでいると、男のエルフがやってきた。

 オールバックの長い金髪は背中のほうへ流している。

 例のごとく耳は長くて尖っていた。


「初めまして。ベヒモス討伐の依頼をしたウェイグ・リヴォフという。今日ははるばるありがとう」


「いえ。おれは駆けだし冒険者のジンタ、こっちはリーファです」


 おれたちが軽く頭をさげると、ウェイグさんは向いのソファに腰掛けた。


「早速だが、討伐の証を見せて欲しい」


 おれはベヒモスセットと鑑定書を渡した。


「鱗に角に牙……しかもマダム・リーンの鑑定書付き。まず間違いないであろう……あのベヒモスだ……ありがとう。何か娘から話は聞いただろうか」


 おれもリーファも首を振った。

 どうしてクエスト依頼を出したのか、ウェイグさんはその経緯を教えてくれた。


「私たちリヴォフの一族は、ここではない別の森で静かに暮らしていたのだが、そこを、このベヒモスに荒らされたのだ。

 戦える者は弓を取り、魔法を放ち戦ったが……仲間が何人も死んだ。まったく歯が立たなかったのだ。

 そして、私は残された一族と共に住み慣れた森を離れここへと逃れた。

 戦力も残っておらず奴に立ち向かうことは出来なかったが、どうしても奴を許すことが出来なかった。

 そんな折、ここに出入りしている行商人にそのベヒモスの話を聞いた。

 見かける機会のそう多い魔物ではない。出現時期や特徴で奴だとわかり、クエスト依頼を冒険者ギルドへ提出したのだ」


 もしかしてエルリちゃんのお父さんはベヒモスと戦って――?

 ベヒモスも一族もいなくなった森で、落ちていた弓を誰かが拾って売ったとしても不思議じゃない。


 案内してくれたエルフさんは、だからあんなに感謝してたのか。


 思った以上にシリアスな話だ。

 リーファも神妙な顔をして聞いていたけど、ヒソヒソと耳打ちしてきた。


「移住するならもっと良い森あったのにね?」


 食いつく場所はそこじゃねえ。シリアス台無しかよ。


「今回の一件はリヴォフの一族がベヒモスに屈してしまったことに端を発する。だから私は報酬として、ベヒモスを討伐した御仁に愛娘をお渡しすることにしたのだ。もちろん、女性が倒したのなら一族の美男をね」


「「……は?」」


 おれもリーファも ・・ ←こんな目をしている。

 どういうこと??


「あのような強大なベヒモスを倒すほどの冒険者。その遺伝子はリヴォフ族を強くするであろう」


 ウェイグさんが呼ぶと、恥ずかしげなクイナさんが再登場する。

 おれのほうを見て、はにかんだ笑みを見せた。


「先ほど訊いたが、クイナもジンタ殿を気に入ったようでな」

「お、お父様っ! そのようなこと今言わなくてもいいではないですかっ」


 クイナさんは顔を赤くしてウェイグさんをぽかぽか叩いている。

 なに、このくすぐったい父娘のやりとり。


「クイナは、父の私から見ても良く出来た娘。優秀で強い種を残すため、どうか貰ってくだされ」


「あの、ジンタ様……弓と風魔法の腕には覚えがございます。お、お役に立てるよう頑張ります。ふつつか者ですが、よろしくお願いいたします」


 ふつつか者ですが、なんてリアルではじめて聞いた……。

 エルフっ娘をいただくの……?


――――――――――

種族:エルフ

名前:クイナ・リヴォフ

Lv:15

HP:2100/2100

MP:800/800

力 :134

知力:261

耐久:101

素早さ:78

運 :15


スキル

風魔法 消費MP15(風属性の攻撃魔法)

鷹の目(遠距離の攻撃力UP)

――――――――――


 いただくかそうでないかと言われると……。


「ウェイグさん、お嬢さんをいただきます」


 こうして、巨乳美少女エルフが嫁(?)となった。



次回は17時頃更新予定です!

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