女装とかしてみたらどう……?
ブクマ、評価ありがとうございます。
感想で頂いた一部を引用させていただきました。(ご本人の許可有)
感謝です。
モンスターの死体を放置してきた俺は、都の前まで戻ってきていたのだが、関所で何やらもめているようだった。
「どうして私たちは入れないのよ!?」
「そう言われましても……、主人不在の奴隷は都に入れてはいけないという規則がありましてね……?青髪の子だけであれば可能なのですが……」
「その都に私たちのネ、ご主人様がいるのよ!それにこの子だけで探せるわけないじゃない!!」」
「そ、そうおっしゃられてもですね……」
もめているのは、赤髪の女の子、そして連れだと思われる青髪の少女、茶髪の少女。
どこかで見たような気がする組み合わせだが、俺は中に入るために関所のおっちゃんに声をかける。
「えっと、俺入って大丈夫かな……?」
「あっ!はい、どうぞ」
おっちゃんとは、都を出るときにも少し喋っていたので、特になにかを聞かれることなく通行を許可してくれる。
「ネ、ネスト!?」
そこで何やらもめていた赤髪の女の子から名前を呼ばれる。
「え、確かに俺はネストって呼ばれてるけど、あん、た、だ……」
あんた誰だ、って聞こうとしていた俺だったが、素通りしようとしていた女の子は俺の知っている子だった。
「って、え…?アウラ?」
「そうよ!!」
もしやと思って、他の二人もよく見たらリリィとトルエだった。
「あれ、どうしてここに?」
一応だが、心配するなって伝言も残して来たんだけど。
「…………、心配だったし…」
「え、なに?」
何やらアウラが言ったようだが、よく聞こえなかった。
「な、なんでもないわよ馬鹿ネスト!!」
何故か怒鳴られてしまったが、周りから視線が集まってるし、ひとまずは宿に向かうことにする。
「あ、おっちゃん。俺がこの子達の主人なんだけど入って大丈夫だよね?」
そう言いながら奴隷商人にもらっておいた証明書を見せる。証明書を受け取ったおっちゃんはある程度確認したのか通行を許可してくれた。
俺たちはそれから宿屋に向かい、アウラたちから事の顛末を聞いた。
どうやらここまでは行商人の荷馬車に乗せてもらって来たらしいが、関所で止められてしまい、そこに俺が来たということだったらしい。
「全く、いきなり連れて行かれちゃうもんだから心配したのよ?リリィとトルエが」
「ってアウラはしてなかったんかい!!」
「あれ、でもアウラお姉ちゃんも、ものすごく慌ててなかムグッ!」
何やらリリィが言いかけていたが言い終わる前にアウラに口を塞がれてしまう。
「リリィー?それは言わなくてもいいのよ?」
「う、うん」
部屋の隅に連れて行かれるリリィ。
「そういえば、ネストはどうして都に呼ばれたの……?」
アウラとリリィが何かやっているうちにトルエが聞いてくる。
「えっと、何でも王様の娘さんと奥さんが病気になっちゃったみたいで、それを治せないかって」
「じゃあ、ご主人様は、治してあげたんだよね……?」
「い、いや?そ、その時にやったら後々困ると思ったから、さ?」
「え、じゃあ治してあげないの……?」
尊敬の眼差しを向けてきていたトルエが一転、何やらショックを受けている。
「い、いや、ちゃんと治しに行くから!ただ、顔がバレると後から大変だと思って今日の夜忍び込むつもりだったんだ」
「さ、さすがご主人様ッ……!」
俺の言葉に感無量といった感じのトルエだったが、そこでアウラたちが戻ってくる。どうやらちゃんと俺の話は聞こえていたらしい。
「でも、忍び込むって言ってもどうするつもりなの?王様がいるお城なんだから警備もたくさんいるだろうし……」
「た、確かに……。でも俺だったらヒールとか使えばゴリ押し出来ないか?」
それで行けると思ってたんだけど、もしかして無理っぽいか?
「多分、厳しいわね。ここのお城がどうかは分からないけど、私のお城ではかなりの人数が警備についてたわよ?」
「ま、まじか。やっぱり治療行くのやめようかなぁ」
「えッ…………」
トルエが「嘘だよね……?」という感じの視線を向けてくるが、治療に行って捕まってしまいました、では元も子もないだろう。
「せめて城に入ることが出来たらまだ行けるかもしれないんだけど……」
「門番を静かに対処できるかどうかってなら、睡眠薬とかはどう?」
「けど、睡眠薬は大丈夫でもそれをどうやって門番に怪しまれずに飲ませるか、が厳しくないか?」
アウラと二人で門番の対処の仕方について考えていたら、トルエがおずおず、といった感じで声をかけてくる。
「ご、ご主人様、僕、化粧できるからご主人様が女装とかしてみたらどう……?」
珍しく提案してきたトルエに驚かされたが、それはちょっときつくないか?
「えっと、トルエ?さすがにそれはちょ「それよ!!」え?」
「ネストが女装して色仕掛けすればいいのよ!服は私のを貸してあげるからそれで城の中に侵入してきなさい!!」
「い、いや待て、男の俺が女装したところですぐバレるだろ!」
しかし、結局俺の抵抗虚しく一度女装をやってみることになった。
そして数十分後、そこには猫耳、猫の手足の形をした手袋と靴をはいた、傍から見たら完全な猫耳少女な俺がいた……。
猫耳はなぜかリリィが買ってきました。
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今、私の手元には、都周辺の警備隊からの報告書があった。
『四肢を切り取られいたぶり殺すかのようにばらばらにされた大量のモンスターを王都近郊で発見…其処からは剥ぎ取り等は一切された形跡が無い事から恐ろしく残虐な魔物が王都近郊に発生したと思われる。城門の衛兵達や騎士団は連携を密にし警戒して頂きたい。なお付近では長い髪を振り乱し謎の棒状の刃物?(鋭利な鎌か?)を振り回す魔族の様な化物を見たとの一部情報もあり仮称この個体を『屠殺魔女』(ウィッチ・ザ・スローター)とする。』
我が妻や娘のことでも手一杯であるのに、国王である私には毎日のように仕事が舞い込んでくる。
「ウィッチ・ザ・スローター……。いい名前だ……」
私は報告書を書いた警備の者に少しばかりの報奨金を与えることにした。