Stage6
ただいまあ、とコナンは事務所の扉を開ける。
小五郎は相変わらず、ビールを飲みながらテレビを見ている。
「あら、コナン君。お帰りなさい」
「ただいま、蘭姉ちゃん」
「おう、コナン。帰ったのか」
遅かったな。
コナンが帰って来た今この時刻は、5時だった。
帝丹小学校は、水曜日に教師の会議があり、どの学年も4時間なのだ。
4時間目の終わり12時10分、給食時間などを入れたとしても、帰ってくるのは2時頃だ。
「う、うん。ちょっと、博士の家に寄ってて・・・」
ごめんなさい・・・。
「いいわよ、コナン君。だけど、心配するから今度からちゃんと電話してね?」
「はーい」
良い子のお返事を返す。
だが、本当ならば、高校生の自分がすべきことではない。
・・・この身体になり、幼馴染の元に世話になっているのは、全て自分の不注意のせい。
「・・・あれ?そういえば、蘭姉ちゃん、どうしているの?部活は?」
「ちょっと、風邪が流行ってて、休みが多くてね・・・午後からも早退者がたくさん出たから、今日は部活はなしで6時間目もなし、5時間目で帰って来たのよ」
「へえ、大変だね」
最近流行っている風邪。
まず最初に小学校から始まり・・・除々に周囲へと広がって行った。
連日、ニュースでやっているくらいだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
―――ピーンポーン・・・
突然鳴り響いたチャイム。
「・・・誰だあ?」
今、ヨーコちゃんの特番やってんだよ・・・。
不機嫌そうな顔をする小五郎。
蘭は呆れたようにもう、と言いながらも扉を開ける。
「あ・・・えっと・・・依頼、なんですけど・・・」
茶色の内側に少しウェーブのかかったセミロングの、一言で表せ美人の部類に入るであろう女性だった。
(び・・・びっじ〜ん!)
やはり、小五郎の考えはそれだった。
一歩間違えれば、いや、今の時点で小五郎は既に変態だ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「―――なるほど・・・人捜しですか・・・」
コクン、と女性・・・舩橋礼子と名乗る女性は頷く。
依頼は、人捜しだった。
生き別れになった双子の兄、三倉礼司。
礼子は、生まれてすぐに遠い親戚に当たる舩橋家の養子になったのだ。
兄だけが三倉家に残り、そこで育った。
三倉礼司は天才で、10歳でハーバード大学を卒業、若干10歳であのハーバード大学を卒業した天才少年と世界中には広まり、さまざまな研究所からオファーがきたりなど、その近年は大騒動が起きていた。
―――そんな輝かしい人生を歩んでいる途中、その三倉礼司が姿を消した。
消えたのは死んだ、などというわけではなく、ただ単に行方不明になったということだ。
突然、いなくなった兄。
それは、やはり世界中に広がり・・・反響を及ぼした。
どちらの家からも、自分達が双子ということは聞かされていたのだ。
(・・・・・・どんだけ頭がいい奴なんだ?その、三倉礼司ってのは・・・)
小五郎は、話を聞きながらも顔を顰めていた。
「・・・18年前・・・私と兄が、丁度、15歳の時・・・兄は、姿を消したんです」
「そうなんですか・・・」
(15歳で姿を消し、18年間、姿どころか行方、生きているかすら怪しい人間だあ?んな人間、死んでんに決まってんじゃねえか・・・しかも、どうやって捜せってんだ・・・)
小五郎は、顔を顰めたままだ。
―――だが、こんな美人が目の前にいるのだ。
断るわけにはいかない。
礼子は不安そうに小五郎の顔を見る。
「・・・・分かりました。お受けしましょう」
「本当ですかっ!?じゃ、じゃあ、依頼料は後程お支払いします!」
ありがとうございます!
礼子は嬉しそうに言う。
どうやら、どの探偵事務所に行っても断られたらしいのだ。
親戚や家族も、も10年以上前に探索をやめにしている。
礼子だけが、1人で捜し続けていたのだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
カタカタと、キーボードを打つ音だけが虚しく響く。
眼鏡に青白い光りが反射していた。
・・・博士に呼ばれたと嘘を吐き、阿笠と哀と口裏を合わせ、今は工藤邸にいる。
何をするのだとかを聞かれたが、調べものとしか答えなかった。
いや、実際その通りだ。
流石に、蘭達がいるその傍でこんなことをするわけにはいかない。
―――調べることは、“三倉礼司”と元太が言っていた“パズルゲーム”についてだった。
三倉礼司もパズルゲームも・・・記憶を探れば、自分と深く関係していた。
あの男は・・・多分、三倉礼司だ。
パズルゲームを1番最初に解いたのも、自分だ。
(・・・三倉礼司・・・一体、何を考えているんだ・・・?)
・・・全てがあの男の思惑通りなら。
自分達は、あの男のゲーム上で踊らされていることになる。
まさに、全面戦争の始まりだった。 |