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マイバイブルは『異世界召喚物語』 作者:ポモドーロ

第四章 避暑地は地下迷宮

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エルーダの迷宮再び(魔獣図鑑)6

「おはよう。ロメオ君」
「おはようなのです」
 ギルドは今日も無人か、と思いきや、そこには獣人の冒険者たちがずらりと並んでいた。
「おお、若、お嬢。おはようございます」
「おはようございます。どうしたんです、皆さん? 今日はこんなに大勢で」
 すると全員が自分たちの新品の武器を掲げた。
「領主様が約束してくれた武器がようやく届いたんで、試し切りでさ。ついでに一稼ぎってなわけでして」
 でも、壁には一種類の依頼しか……
「今朝、依頼が増えたんですよ。おはようございます。エルネストさん、リオナちゃん」
 ロメオ君がカウンターの奥から現われた。
「おはよう、ロメオ君」
「おはようなのです」
「新しい依頼?」
 確かに新しい依頼が壁に貼り付けられていた。それも五件。
「討伐依頼です。東の高台の調査のためらしいですよ。水源の湖の周辺に避暑地を建設しようという意見が出ているそうで、そのための地ならしみたいです。魔物の棲息調査もあそこは終っていますから問題ないと思います。おふたりもやりますか?」
「依頼主は?」
 ロメオ君は領主館を指さした。
 本格的な移住もまだ始まってないのに気の早いことだ。
「解体屋はまだなんだよね?」
「開放日に合せるそうですよ」
「何が獲れるですか?」
 リオナが知り合いの獣人に尋ねた。
「多いのは毛長角牛ですね。次に高山赤鹿。あの辺りは魔物も少ないですからのびのびやってますな。獲物は大体毛皮と角と肉ですね。肉は軟らかくてうまいですよ」
 やばい、リオナのスイッチが入りそうだ。
「うちの馬車を使うのです。あれなら一杯詰めるのです」
 人にやらせる気かよ!
「よろしいんで?」
「置いておいても傷むだけだからね。解体屋の転移結晶が使えるようになるまで、使ってくれていいよ」
 ギルド備え付けの『魔獣図鑑』からメモを取るための用紙に、僕は自分のサインと用件を記して、手渡した。
「アンジェラさんに渡してくれれば、小屋の鍵を開けてくれるから」
「ありがとうございます、若」
 獣人たちは挙って依頼を受けると、ギルドハウス(仮)から飛び出していった。
「ギルドらしくなってきたね」
 僕とロメオ君は笑った。
「あ、本届いてますよ」
 ロメオ君がカウンターの奥に、注文していた最新版の『魔獣図鑑』を取りに行った。
 そして戻ってくるとドンッとカウンターに分厚い本を置いた。
 うわっ。
「重いですから、ご注意を」
 これを持ち歩くのか?
「こちらは購入特典になります」
 そう言ってロメオ君は一回り小さいもう一冊をドスンと置いた。
「何?」
 僕は絶句した。
 この重い本を二冊抱えて帰れというのか?
「こちらはカードになります。ページごとの魔物の情報をカードにしてあるので、必要な分だけ持ち歩くことができます」
「なるほど地域ごとにばらして使えるのか?」
「エルーダの迷宮に行くのなら、例のマップ集で出現する魔物を事前に調べておけば、一冊丸ごと迷宮に持ち込まなくても済むわけです」
「こっちだけでもよくない?」
 僕はロメオ君に尋ねた。
「あくまでおまけです。カードには簡略な解説しかありませんから」と、諭された。

 その後もロメオ君との会話は続いた。
 肝心な店番から解放される話は、明日から可能ということだった。
 家の引っ越しの荷物整理をしているお母さんが、明日から窓口業務に就けるらしい。
 ロメオ君は明日、冒険者用の装備をアルガスで購入する予定だ。
 薬は僕が調合できるので準備はいらないと言っておいた。
 僕たちは重い本を一冊ずつ担ぎながら冒険者ギルドを出た。
 そして一目散に帰宅した。

 最大の懸案事項。どうやってエルーダ村を往復するかについて、僕は未だ解決手段を見い出してはいなかった。
 早くなんとかしなければと焦るばかりだ。
 ロメオ君も家族に説明しなくてはいけないから余り時間はない。
「考えてわからないなら聞くしかない!」
 こんなとき頼れるのはゲートに詳しい姉さんだけだ。
 帰宅するとその足で僕は領主の館に向かった。
 リオナはエミリーと仲良くお昼の準備をするそうだ。

 領主の館から出てくるところを偶然、捕まえることができた。
 姉さんは足りなかった距離を徒歩一時間分だと僕に聞かされると、明日までに調整した新しい転移結晶をロメオ君の分も渡すと言った。
 ロメオ君は既に『銀花の紋章団』に入隊しているので、入隊特典として新型の転移結晶とゲートキーの指輪を受け取ることが決まっている。お爺ちゃんもお父さんも『紋章団』の会員だったので、ロメオ君で三世代目ということになる。 
「帰りは新型の転移結晶でいいとして、行きはどうにかならないかな?」
 半日の移動は現状では致命的だ。エルーダは避暑地の候補地から外れることになる。僕たちも獣人たちと一緒に高台でこちらの依頼をこなすことになるのだろうか……
「わたしが昔使っていた施設があるから、そこを使うといいだろう」
 初耳だ。実家の目と鼻の先に何を造ったんだ?
「ロメオ君の準備が済んだら、一度一緒に行くとしよう」
 結局、エルーダ村にゲートを置かないと解決にはならない気がするのだが…… 姉さんには何か秘策があるようだった。

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