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マイバイブルは『異世界召喚物語』 作者:ポモドーロ

第四章 避暑地は地下迷宮

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エルーダの迷宮再び(ロメオ君登場)1

新章始まりです。
「おはよう。ロメオ君。お爺ちゃんは?」
 僕とリオナは冒険者ギルド、スプレコーン出張所を訪れた。
 仮事務所はカウンターがあるだけの小さなバラックだった。建設中のギルド本館の庭先、町の中央広場の一等地にそれはある。
 ロメオ君は十三歳。僕より一つ歳下のギルド職員見習いだ。
 成人前ということでリオナ同様、冒険者になる条件を満たしていない。
 当然Bランク以上でもないので正式なギルド職員でもない。見習いは自称である。正確には家事手伝い、スプレコーン出張所を任された職員家族の一員なのである。
「お早うございます。エルネストさん。リオナちゃん。お爺ちゃんなら狩りに行きましたよ」
「またなのです。支店長はサボり魔なのです」
 リオナは悪態をついた。最初の数日以来、支店長には会っていないのだから、言いたくなる気持ちも分からなくもないが。
 爺ちゃんが帰ったら、ロメオ君と三人で、少し気が早いが冒険者のパーティーを組むことにしているのだ。
 でもとうの爺ちゃんはいつもいないので、ロメオ君が店番をしている。
「仕事しないで何やってんだよ、爺ちゃん」
「『どうせ客なんてきやしねぇ。来たって坊主と嬢ちゃんだけだろ? 依頼だって一件だけじゃねえか。お前が相手しておけ』だってさ」
「爺ちゃんもこの依頼やってんの?」
「来月までは仮営業だし、他にはないからね。でもこの依頼はとっても重要なんだよ。ギルドの営業地区の状況把握は営業前に終らせておかないと大変なことになるんだから」

『依頼レベル:不問。
 依頼内容 :地域偵察。
 数    :指定場所一件に付き、所定のレポート一枚。
 期日   :火後月(ひのあとづき)末日まで。
 場所   :ユニコーンの森。
 依頼報酬料:金貨一枚/レポート一枚、全額後払い。
 依頼報告先:冒険者ギルド、スプレコーン出張所』

「ロメオ君、地図見せて」
 広げたのはこの町を中心とした領地全域を記した大きな地図である。地図は碁盤目に区切られていて、一区画の辺が一日の徒歩での移動距離、約三万メルテを表していた。基準点は街道に沿ってある道標である。
 町の周囲十日の距離まで大体終りつつあった。
 元々獣人たちの村があった森であり、獣人たちには慣れ親しんだ土地である。
 どこに何があるのか、何がいるのか、彼らの記憶を頼りに僕は地図を作り上げた。
 さらにユニコーンの情報を加味して、修正を加えたものを領主館とギルド、それぞれに提出したのだ。
 ロメオ君の爺ちゃんが留守なのは、僕が提出した四百枚近いレポート分の周辺地図の情報を護衛と測量士たちと一緒に確認しに行っているからである。
 応援を呼べばいいのに、爺ちゃんは自分で片を付けると息巻いているそうだ。
 残り十日を切った移住開始日とギルドの開店日には恐らく間に合わないだろう。
 どうせ領地の隅々までは終らないんだから、急いでも仕方ないのだが……

「そうだ。頼んでおいた本は届いてる?」
 僕はカウンターで頬杖付いているロメオ君に尋ねた。
 頼んだのは冒険者ギルド、商業ギルド、魔法ギルド監修の『魔獣図鑑』最新版だ。全国のギルドに常備されるもので、それを個人的に発注したのである。
 ロメオ君は振り返って部屋の奥のカレンダーを見た。
「もう届くかな? 今日辺り、馬車駅に届くはずだけど」
 この町とアルガスを繋ぐ駅馬車が開業前に試験運用を始めていた。
 換え馬を用意して、僕たちが来た道を夜通し走り、わずか三日で走破するのである。郵便配達も兼務しているので、ロメオ君は今回、それを利用したのである。
 普通、高価な希少本はゲートで手渡しが原則なのだが、今回は一緒にやってくる自分の両親に託したのだ。当然、ご両親もギルド職員である。
 要するに久方振りの親子の再会がこの後待っているわけである。
「道理でソワソワしているわけだ」
「何?」
「こっちの話。『認識計』借りるよ」
 ロメオ君の返事を待たず、僕は『認識計』に手を置いた。
 リオナも自分のスキルを確認しようと、近くの椅子を台にして小さな手を『認識計』に置いた。
 久しぶりの計測である。

 レベル…… 二十五。また少し上がったけど、ほとんど魔力に極振り状態だと思う。
 一芸に秀でた者にとって、当てにできない指標だということは身をもって知ったので感動も薄かった。昔はうれしかったんだけどな……

 さて、肝心のスキルは……

 アクティブスキル…… 『兜割(四)』『スラッシュ(三)』『連撃(三)』『ステップ(三)』『認識(四)』『一撃必殺』『火魔法(一)』『水魔法(二)』『風魔法(四)』『土魔法(六)』『氷魔法(三)』『無属性魔法(一)』『空間転移魔法(二)』『強化魔法(一)』
 パッシブスキル…… 『腕力上昇(三)』『体力強化(五)』『片手剣(四)』『両手剣(二)』『弓術(四)』『盾術(一)』『スタミナ回復(二)』『二刀流(一)』『隠密(二)』『アイテム効果上昇(二)』『採集(五)』『調合(七)』『毒学(四)』『革細工(三)』『鍛冶(二)』『紋章学(五)』
 ユニークスキル…… 『魔弾(四)』『楽園(二)』『完全なる断絶(偽)』
 称号…… 『蟹を狩るもの』『探索者』『探求者の弟子』『壁を砕きし者』『ユニコーンの盟友』

 今回増えたのは『鍛冶(二)』と『紋章学(五)』、『ユニコーンの盟友』だけだ。
『紋章学』はいきなり五だ。術式に細工ができる段階でこれくらいにはなるのだろう。
『ユニコーンの盟友』はどうでもいいかと思ったら、ユニコーンと意思の疎通ができるスキルだった。僕もリオナみたいに念話でしゃべれるということか? いつも通訳がいるのが当たり前だと思ってたから気にもしなかった。あいつらの行動は普段から思わせぶりだから、会話が通じていたのかどうか…… 後で話しかけてみよう。
 それ以外は目新しいものはないな。若干スキルのレベルが上がったくらいだ。
「やったです! レベルが十になったです」
 リオナが喜んでいる。
 なんだかうらやましい。

 開店休業中のギルドを余所に僕たちは公共ポータルを目指した。
「あと一週間か」
 建設が急ピッチで進む町並みを横目で見ながら、街道を北に進む。大きな建物は予定日を前にほぼ完成していた。領主のお屋敷も居住施設と外観は完成していて、既に引っ越しは済んでいる。
 古い館はそのまま売りに出されるそうだ。売られると思うと名残惜しいものである。もちろん地下はすべて埋め戻され、大浴場もなくなっているのだけれど。
 公共ポータルは北門を出た先にある。
 釣り橋を渡った先の石橋の上の詰め所の一角に置かれている。現在無料に付き、料金の徴収を行う者はいない。
 僕たちはポータルを潜った。行き先はアルガスである。


 いつぞやの蟹退治をした門のそばに出た。ここから目的地まで飛べればいいのだが…… あいにく目的地にはポータルがない。というわけで半日、馬を借りての移動である。リオナと二人乗りをして僕たちは『蟹の道』を行く。
 そう、目的地はエルーダ村だ。
 夏の暑さに音を上げるその前に、手軽に行ける避暑地を探しに行くのである。
 エルーダの村は高地にあり、迷宮は年中気温が変わらない。今のところ一番の候補地である。
 冬場、狩りができなくなってからと考えていた予定だが、条件が合えば、夏場に通うこともやぶさかではない。
 とは言え、条件はギリギリ、微妙なラインである。それこそやってみないと分からない。
 エルーダ村から転移結晶でスプレコーンのゲートまで到達できるか、またその逆は可能か、そこが問題である。
 現状、スプレコーンを長期間留守にすることはできない。町は猫の目の様に状況がコロコロ変わっている。特にユニコーンを抱えた今、新参者たちとの摩擦、トラブルにも対応しなければならない。
 長老に任せろと言われてもね…… 
 とにかく定期的には帰りたい。
 このままでは毎回、馬に半日揺られることになるのだから、迷宮探索に使う時間を考えるとどうしても泊まり込みになる。
 腰を据えて迷宮探索に挑めない以上、なんとか日帰り可能な状況を作りたい。浮き足だったままでは事故の元だ。
 いっそ新型ゲートをこっそりエルーダに。
 すべてはロメオ君が窓口業務から開放されてからだから、急いではいないのだが、これからますます暑くなる。やはり結論は早いに越したことはないだろう。

 今回の訪問はあくまで実験が目的である。
 スプレコーンの領内で利用される新型転移結晶の実力を測るためだ。但し、これは姉さんの用意した跳躍距離の長い試験段階の物だ。ユニコーンの森は広いから、従来の物では跳躍距離が短過ぎるのである。
 それでこれを使えばエルーダ村から直帰できるのではないかと考えた僕たちは実際試してみることにしたのである。アルガスからわずか馬で半日の距離、これがどう作用するか。うまくいけば儲けもの。
 スプレコーンから訪れるためにはゲートが必要なことに変わりないのだが、とりあえず帰りの心配だ。

 見たことのある景色を眺めながら山間を目指して進む。
 ポッカポッカと蹄の音に合せて揺れながら街道を南下する。
 リオナは陽気に当てられ船を漕ぎ出した。
 そして昼下がり、僕たちはエルーダ村に到着する。

 なんだか以前より若い人が多い気がする。
 指定された厩舎に馬を預けると、徒歩で村に入った。
 宿食堂も増築されていた。
「ああ?」
 冒険者ギルドを訪れるとそこもまた増設され、大きくなっていた。
 一体何があった? 
「金でも掘り当てたのか?」
 僕とリオナは事務所の扉を潜った。
 懐かしく…… ないな。何もかも新しくなってる。
「あら、いらっしゃい。弟君」
 受付嬢のマリアさんが手招きする。
「あなたのおかげで繁盛してるのよ」
 何を言ってるのか分からない。
 この状況と僕との間に接点があるとはとても思えなかった。

上昇したスキル…
『兜割(三)』→『兜割(四)』、『スラッシュ(二)』→『スラッシュ(三)』、『水魔法(一)』→『水魔法(二)』、『風魔法(一)』→『風魔法(四)』、『土魔法(二)』→『土魔法(六)』、『氷魔法(一)』→『氷魔法(三)』、『空間転移魔法(一)』→『空間転移魔法(二)』、『体力強化(三)』→『体力強化(五)』『隠密(一)』→『隠密(二)』、『調合(六)』→『調合(七)』、『毒学(二)』→『毒学(四)』、『魔弾(三)』→『魔弾(四)』、『楽園(一)』→『楽園(二)』
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