挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マイバイブルは『異世界召喚物語』 作者:ポモドーロ

第一章 マイバイブルは『異世界召喚物語』

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

7/1072

エルーダの迷宮7

 あれから三日、精力的に依頼を一日一件、合計で三件こなした。討伐数にして十五匹、脚百五十本、金額にして締めて金貨二十八枚。傷物がいくつかあり、買い取り価格が若干下がったのは玉に瑕だ。
 それでもレベルに見合った鎧一式を買うにはまだ半分足りなかった。
 最終日、僕のレベルがついに地下蟹に追いついた。
 僕は、ギルドに出向いたついでに、部屋の隅で『認識計』に手をついて、自分のステータスを確認した。
 自分の『認識』スキルより深いところまで読み取れて、正確で、閲覧できる時間も長いのでこっちの方が重宝だった。意識を集中しなくても、勝手に情報が目に飛び込んできてくれるのもありがたかった。
 ここ数日だけでも、レベルが上がったことによる恩恵を感じることが多くあった。
 蟹の脚を『兜割』で一刀両断できるようになったし、あの大きな鋏で殴られても、吹き飛ばされずに堪えられるようになった。
 最後の方では魔剣も使わず、頭に一撃食らわせて終りというケースも少なくなかった。元気草がなくても、時間内にすべての脚を切り落とせるようになったし、切り落とした脚を楽に担げるようにもなった。荷車に積み上げるのも数があるので一苦労なのだ。

 レベル二十か…… これって近衛騎士と同等レベルなんだよね。たった一週間で、地下蟹だけ倒してこれって…… いいんだろうか? みんな知ってることなんだろうか? もっとも技量差は天地ほどあるから、逆立ちしても敵わないんだろうけど、こんなことってありなんだろうか…… 兄貴たちのレベルっていくつだったっけ…… 超えていたら気まずいよね。
「うはっ」
 思わず声を上げてしまった。
 なんだ、このスキルの数? ステータス欄の底の方にびっしりスキルが追加されていた。

 アクティブスキル…… 『兜割(二)』『スラッシュ(一)』『連撃(一)』『ステップ(一)』『認識(一)』
 パッシブスキル…… 『腕力上昇(二)』『体力強化(一)』『片手剣(一)』『スタミナ回復(一)』『二刀流(一)』『アイテム効果上昇(一)』『調合(五)』『採集(五)』
 ユニークスキル…… 『魔弾(一)』
 称号…… 『蟹を狩るもの』

 おかしなスキルも含まれているが、大体経験に根ざしたものらしい。〝熟練度〟とか〝慣れ〟みたいなもので、表示されるまでもないことのように思えるのだが。『調合』と『採集』は、幼い頃から今までの経験値が一気に入ってきたような感じだった。『認識』スキルを得てから初めて調合したことで、スキルが僕の熟練度を過去にさかのぼって読み取ってくれたようだ。
 称号『蟹を狩るもの』も、地味に効果がありそうだ。『甲殻類にダメージプラス補正』が付いている。『特に蟹に効果あり』だそうだ。
 そして何よりユニークスキルである。これは我が一族が代々継承し、隠匿しているスキルである。親父が言うところの「自分たちが勇者の末裔だ」という根拠になっているスキルである。
 それにしても前回まで『認識計』で見えなかったのになぜ急に見えるようになったのだろう?
 僕には『魔弾』の才能はないと思ってあきらめていたのに。レベルが上がって素地ができたということか?


『魔弾』とはその名の通り魔法の弾だ。魔素をそのまま圧縮して打ち出す無属性の遠距離攻撃魔法なのだが、これが意外に曲者なのだ。まず、『魔弾』所持者は属性魔法が大概使えなくなる。火もおこせなくなるのだ。一族のなかには『魔弾』スキルを取得できないことを喜ぶ者すらいる。直系はまず例外なく所持してしまうので、故に表向きは騎士の家系になっている。
 とはいえ、このスキルはユニークであるが故に強力だ。
 長兄アンドレアは『魔弾』が〝普通〟に使えた。火の玉(ファイアボール)風の刃(ウィンドカツター)と同じように〝飛ばせた〟のだ。ただ威力も射程も桁違いで、幼少の頃、「山に隠れて月が見えない」と言って、その山を吹き飛ばした実績がある。僕の顔を見ては「強すぎて使いどころがない」といつも嘆いていた。「お前がうらやましい」と必ず一言添えて。
 一方、次男エルマンは〝普通〟には『魔弾』を使えなかった。身体から離れた途端、魔力が消失してしまうからだ。つまり飛ばせないのだ。故に彼は『魔弾』を拳や足の裏に纏うことを覚えた。『鎧通し』と言うらしいが、頑丈な敵を防御無用で一撃で倒すのだ。振り下ろされる剣を素手で弾いたり無茶なことばかりしている。指がなくなったらどうするつもりなんだ。「城壁を飛び越えた」とか「一週間かかる旅程を一日で移動した」とか人外な噂の絶えない人である。アンドレア兄さんに「あの辺りに一発かましてみないか?」と言って、王宮を指さすような人である。
 長女レジーナは『魔弾』だけでなく属性魔法も使いこなす異才だ。はっきり言って怖い。僕の瞳の色が気に入ったと言って、寝ている間に目玉をくりぬこうとした女だ。僕の面倒を一番見てくれた人だが、都に行ってくれてほんとにほっとしている。僕が魔法を使えないのはこの人に受けたトラウマのせいなんじゃないかと思うくらいだ。だから思う。

 なんで今になって開眼したのか?

「はい、結構です。ご苦労様でした。これからもがんばってくださいね」
 僕はこの日『嫌がらせの剣』を窓口に返却した。
「レベル二十か…… これって近衛騎士と同等レベルなんだよね」
 違います。入団試験出願の最低ラインです(笑
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ