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マイバイブルは『異世界召喚物語』 作者:ポモドーロ

第三章 ユニコーン・シティー

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ユニコーン・シティー6

「がんばるのです!」
 瞬殺される予感。っていうか、当たったら痛いじゃ済まなさそうだ。
「いつも通りおやりよ、簡単さ」
 アンジェラさんが気楽に言った。
「そうだね、負けたら昼抜きってことで」
 そりゃないよ。
「殺生はなしだよ。では開始!」
 アンジェラさんの一言で僕と獣人大男の決闘が始まった。
「手加減しねぇえぞ、坊主ッ!」
 オズローはいきなり大剣を上段に振りかぶった。
「手加減しろよ、死んじゃうだろ!」
 僕は斜めに下がって剣をいなした。
 大男の剣が地面にめり込んで土を穿った。
「あれ?」
 なんか思ったほどじゃない。この男手加減してる?
 僕は一歩踏み出して胴を薙ぎにいった。
 男は咄嗟に後ろに退いた。すごい反射神経と跳躍力だ。
 でも、動きが直線的だ。
 オズローは再び奇声を上げてかかってきた。
 大きく前に踏み出して剣を振り下ろした。
 エンリエッタさん辺りだと、ここから切っ先が伸びてくるから懐に入れないんだけれど……
 オズローは力まかせに振り下ろすだけだ。
 僕は先んじて懐に飛び込み、胴を薙ぎにいった。
 オズローが回避して着地する辺りの地面を土魔法で緩くした。
「うおぁあ!」
 オズローは飛び退いた拍子に足を取られて転んだ。
 僕は地面に着いた彼の手を凍らせた。
 オズローは力尽くで抜け出そうとしたが、時遅し、僕はのど元に剣先を突きつけた。
「勝負あり」
「弱すぎなのです。昨日のあれは嘘っこなのです」
 リオナにも呆れられた。というよりそれは僕が弱いと言っているのと同じでは?
「あんたはなまじ力が強いせいで、それに頼りっきりなのさ。これまで散々敵を一刀両断にしてきたんだろうが、対人戦は素人だ。対人戦でそんな大きな剣を振り回したって当たるわきゃないんだよ」
 いや、当たったら死ねるから。それはアンジェラさんクラスの台詞です。僕には該当しません。
「その子は日頃から騎士になるべく練習してきた子だよ。素人の剣が敵うわけないだろ。わかったら帰りな」
「お願いします、あねさん。どうしても町に入りたいんだ、です!」
 大男はアンジェラさんの前で土下座した。
「わけあり?」
 リオナが首を傾げた。
 しばらくにらみ合ったのち、アンジェラさんの方が折れた。
「話してみな。聞くだけ聞いてやるから」
 僕は椅子とテーブルをいつものように用意した。
 エミリーはお茶とおやつの食器をテーブルに並べた。
「俺の親父は『銀花の紋章団』の一員だっだ。『剛剣のオズール』って聞いたことないか?」
 僕たちは知らなかったが、アンジェラさんは知っていた。
「昔何度か一緒に組んだことがあるよ。わたしはギルドの人間じゃなかったから親しくはなかったけどね。言われてみれば少し面影があるかもね……」
 オズローは父親の知り合いがいてうれしそうだった。
「親父は紋章団の本拠地ができるのを心待ちにしていたんだ。いつか引っ越して仲間たちとおもしろおかしく暮らそうって。でも、親父は死んじまった。俺が十歳のときだ」
「それは気の毒なことをしたね」
「俺はギルドに入りたいんだ。入って姫様に会って、一言言いたいんだ。なんでもっと早く作ってくれなかったんだって。親父が楽しみに待っていたのにって」
「その願いは果たせないよ」
「なぜ?」
「代替わりしたのさ。あんたの親父さんにとってのお姫さんって言うのは、今の姫さんのお母上だろうからね」
「ああ…… そうか…… そうだな」
 一途に思い込んでいたのだろう。冷静に考えればわかることだ。オズローは自分の思い違いに納得して頷いた。
「それでもギルドに入りたいかい?」
 オズローは明らかに躊躇していた。
「わからない……」
 彼はそう答えた。
「とりあえず、一緒に行くのです!」
 リオナが口を挟んだ。その手には干し肉が……
 リオナは干し肉をオズローに差し出した。
 おいおい……。エミリーがお茶を入れてくれてるのに、干し肉はないだろ?
 エミリーも苦笑いしている。
「わたしたちも『銀花の紋章団』の一員なのです。仲間になれたらうれしいのです」
 そう言って干し肉をもう一度差し出した。獣人同士の挨拶か何かか?
 いや、オズローも驚いているから違うな。
「お嬢ちゃんが『銀花の紋章団』?」
「リオナです! 見習いなのです」
 いつから見習いになった。
 そういや僕たちの個人ランクって今どうなってんだろ? 最近確認してないけど、Eランクぐらいにはなってるよな。
「君も紋章団なのか?」
 エミリーが用意したマフィンを口に運ぼうとする僕に聞いてきた。
「そうなりますね」
「…… もう一戦どうだ?」
 なんてこと言いやがる。
「ごめんです。僕の一撃は痛くもないでしょうが、あなたの一撃は当たったらこちらは死にます」
「そうか? お前が魔法を使ったら俺の方が死ねそうだがな。名前、教えてくれないか?」
 こりゃ、失礼。
 獣人ってのはみんな思考が一直線なのかね。
「エルネスト・ヴィオネッティーです。よろしく、オズローさん」
 オズローは目を見開いた。
「ヴィオネッティー?」
 またか…… 
「『鉄壁のラヴァル』を倒したっていうのはもしかして君か? そうか、それじゃあ、負けても仕方ないな。まさかこんなところで出会えるとはな」
 ええ? それって自業自得? とうとう兄たちのせいばかりにしておけなくなったってことか? やばい、自重しないと……
 結局、オズローは一緒に付いてくることになった。
「俺の歳か? 十七だ」
 若ッ! もっと歳食ってると思った。
「なんだ?」
「大人びてるなと思って」
「君はいくつなんだ?」
「十四」
「はぁあ? 本当か? 十歳ぐらいかと思ったぞ。人族というのはわからんなぁ……」
 それはこっちの台詞だよ。
「わたしはいくつに見えるね?」
 アンジェラさんが地雷を巻いた。ご婦人のこの手の質問は若く言うのがコツだが、おべっかとわからない程度にギリギリを狙わないといけない。
「ええと…… お子さんがいるんですよね。ええと、二十五歳ぐらいですかね?」
 ナイス、いい線だ。
「おやまあ、そう見えるかい。私もまだまだ捨てたもんじゃないねぇ」
「三十五なのです」
 リオナが年齢をばらした。
「えええェ?」
 僕とオズローは驚いた。
「なんだい、その驚き様は?」
「いや、若く見えると思って。冗談抜きで二十五ぐらいだと思ってた」
 オズローも頷いた。
「何言ってんだい、わたしがあんたの姉さんより年下のわけないだろ」
 アンジェラさんはうれしそうに笑った。
 姉さん、二十五までは後数年あったはずだけど…… 大丈夫かな人間関係。

 結局、リオナは御者台で講習の延長を仰せつかった。年齢をばらすからだ。
 この日は予定より若干遅く、休憩所に着いた。
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