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マイバイブルは『異世界召喚物語』 作者:ポモドーロ

第二章 カレイドスコープ

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銃と魔石2

 数日後……
 分隊全員にライフル銃が支給された。しかも魔石を用途に合わせて交換できる仕組みが新たに組み込まれていた。
 目下女性陣による試し撃ちの真っ最中である。
「あんたもほしい? ほら、ほら」
 姉さんはしたり顔だ。セパレート可能な魔石ユニットを目の前にちらつかせてくる。
「いいアイデアだと思うけど、今度銃を新調したときにするよ」
 僕には『魔弾』がある。出力調整はいらない。風の加護と『一撃必殺』スキルの相性も余り良くない。命中が優先されて必殺ポイントがずれることがあるからだ。
 僕は丁重に断った。僕の使用目的もマギーさんとさして変わらない。亡骸あっての物種だ。
 それにしても、なぜ急に全員支給になったのか? 姉さんたちが抱える案件に何か変化があったということだろうか? ふたりのなかに焦りのようなものを感じる。
「……」
 僕が考え事をしていたら、姉がやさぐれていた。
「海よりも深い姉の愛の結晶を袖にするなんて…… 世の中には貰っておいて損――」
「ありがとう姉さん、気持ちだけ貰っておきます」
「薄情者!」
「お預け食らってる犬というのはあんな気持ちになるんですかね。いい経験ができました」
 にっこり笑って嫌みを言うと、「一体誰に似たのかしらね、フン!」と下手な芝居で話をそらされた。
 弟をからかうのも姉の楽しみの一環なのだからこれはこれで当人的にはありなのだろう。
 それにしても気になるな。分隊のみんなにあれが必要になる案件。
 姉さんやみんなの魔法が役に立たない相手? 物理攻撃しかきかない相手…… そんな敵いるのか?
 試射が終わったリオナが姉さんのところに駆け寄って来て言った。
 自分の銃にもっと破壊力がほしいと。
 ただでさえ魔力が少ないのに、これ以上魔法付与を増やして大丈夫なのかと、姉さんの返答を気にしていると、「余った魔石がちょうどあるから、これをあげる。でも、リオナは魔力少ないんだから無理しちゃダメよ」と答えていた。
 そして僕にこっそり舌を出した。それで仕返ししたつもりか?
「両方いっしょに使える魔石がいい」
 ほれみろ。破壊力と命中率アップ、どちらもほしくなるのが人の常。リオナはこの手の欲望には正直なんだ。
「じゃ、姉さん、がんばって」
 魔石に術式を刻み込むのは骨のかかる作業だ。しかも向こうから持ち帰ってきた魔石に刻まれていた回路は重層ではなく、立体構造をした複雑な代物だ。より容量のある魔石に刻むことでできる余剰分に新たに回路を加えたものが、今回の魔石ユニットなのだが、誰にでもできる細工ではないので、必然的に姉がやる羽目になる。
 僕も知識だけならあるのだが、いかんせん細かい制御ができない。魔法というものは細く長く作動させるものほど難しく、太く短く、爆発させるようなものほど容易いのだ。まして魔石である。魔力を吸収する性質を持つ石に、魔力を使って内部に刻むのだ。表面を物理的に削るのとは訳が違う。容易いはずがない。
 これだけのユニットを短時間に用意しただけでも超人的なのだが、リオナの要望はマスタークラスの姉さんの自慢の鼻ですら打ち砕く可能性のある要求だったのだ。石をでかくすれば話は別だが、職人気質の姉さんにそれができるかどうか。残された手はよりきめの細かい石を使う方法であるが、高価すぎて失敗したときのリスクが大きくなる。金に飽かせばできないことはないだろうが……
 僕がいる手前、断われまい。
 僕はその場を離れると、配給された銃の試射をさせてもらうためにフロアーに降りた。


 翌日、リオナは二丁拳銃を色分けしていた。
「赤い柄糸の方は破壊の魔石を、青い柄糸の方は必中の魔石をはめたのです」
 リオナはうれしそうに笑った。
「それって…… リオナが考えたのか?」
「レジーナ姉様に一緒は無理だって言われたのです。だからこうしたのです」
 完敗だった。僕も姉さんも…… 
 こんな簡単な方法があったなんて。
 同時にとはいかないが、最大限、本人の要求を満たした答えだった。
 銃身を二つにして、それぞれに魔石をはめ込めば……
 余計なことをつい考えてしまう。
 この勢いだと異世界の銃を超える日も近そうである。
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