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マイバイブルは『異世界召喚物語』 作者:ポモドーロ

第二章 カレイドスコープ

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銃と魔石1

 銃が完成した。
 いつもの居残り三人組はそれぞれ朝のお勤めを済ませると、地下の修理工房で、送られてきた木箱を開封していた。
 リオナは自分の分を取ると我先に油紙をほどいていった。
 リオナの銃は本人の要望通り、二丁拳銃になった。短剣にもなるニッチなものだ。剣芯に銃身が仕込んであるため、刃に厚みがあり重厚な仕上がりになっていた。
 柄には四発直列に装填できるよう弾倉を設けた。薬室にも装填しておけば五連射可能である。今回の改造の目玉は爆風を利用した自動装填機能である。薬莢を排出する必要がないので弾込するだけの簡単な機構である。マイバイブルと取説の知識が役に立った。結果的に重心が持ち手側に移りバランスがとれた格好だが、重量は増した。
 手の小さな十歳児にあわせて柄を太くしないで弾丸を小さくして対応したのだがそれでも扱える重量ギリギリになってしまった。
 獣人の身体能力の高さがなければ扱いに困る代物になっていたことだろう。
 本人は気にしている様子もなく楽しそうに振り回して感触を確かめている。

 マギーさんは包みを骨董品を扱うような手付きで慎重に開ける。
 マギーさんのものは、異世界で言うところのライフルというやつだ。近距離の達人らしいので、遠距離に特化した仕様にした。目的が食材集めの狩りでの使用だったので、ちょうど良いと判断した。
 銃身を長くし命中精度を上げ、消音と、風の加護の魔方陣まで組み込んだ豪華仕様だ。弾は僕の使っているものと同型。ただし魔石はリオナと同じ上級品だ。弾速が上がった分、三人の銃で一番の破壊力を持っている。
 銃の機構を木の外装で囲んで、女性らしく仕上げた一品だ。見事な彫刻で家具か芸術品に間違えてしまいそうである。弾倉はカートリッジ式で五発入り、こちらも自動装填機能付きである。近接戦闘を兼ねたリオナの銃と違い修理の必要性が少ない分、洗練した作りになっている。

 僕の銃もついでに改造してもらった。もちろん自動装填機能を追加し、マギーさんの物と同じ弾倉をつけた。全体が重くなったので、持ち手も改造した。丁字形の杖型ではなく、しっかり保持できるグリップに変えてもらった。フェンリル戦で感じた反動も意外に大きかったので正しい選択だと思う。

 僕たちは練習場に降りて、射撃練習を始めた。的は自前で用意した丸太が数本。
 まずはリオナから。想定は中距離威嚇用である。最近リオナはマギーさんに体術を学んでいる。どうやら獣人の世界では接近戦ができて一人前、接近戦ができないやつは戦士にあらずというのが価値観らしく、彼女が二刀流にこだわるのもその辺が影響しているらしい。とはいえ、先日のフェンリル戦では衝撃を受けたらしく、真に強い者は敵を近づけもしないのだと考えが改まったらしい。そのため、当たるはずもない位置から狙撃しようと銃を構える。
 パン、パンと乾いた音が響いた。
「当たらないよ、その位置からじゃ」
 高を括っていた僕は驚愕の光景を見ることになる。的の丸太に次々弾が突き刺さっていくのだ。
 結果的に十発全てが命中し、丸太はボロボロになった。
「すごいですね、リオナさん」
 マギーさんは素直に感動しているが、僕は状況が飲み込めないでいた。なんで? 考えるられるのは風の加護だ。『必中の矢』に仕込んである魔法と同じ効果を付与してあるのだ。でなければこの距離で命中するはずがない。
 ガス欠になったリオナに変わって、マギーさんが銃を構えた。肩でホールドして狙いを定める。
 パスッ、消音魔法が効いているせいで発砲音は軽い。だが命中した的は、バンッと大きな音を立てて破裂した。
 なっ!
 想定外の破壊力だ。
「これじゃ、使えない」
 使用目的は狩猟だ。食料採取だ。跡形もなく消し飛んだんじゃ、意味がない。
 当然こちらにも余計な魔法付与が施されていると考えるべきだろう。
 リオナは感激しているようだが、マギーさんは無言になった。
「これって誰が発注したのかな? マギーさん自分で発注した?」
「いえ、姫様とレジーナ様の得意先だというのでお任せいたしました」
 やっぱりあのふたりか。


「どういうつもりですか!」
 僕に折檻されているにもかかわらず、ふたりはマギーさんの銃の試し打ちを嬉々として眺めていた。試し打ちをしているのは分隊ご一行様だ。
「どうやら使えそうね」
 ふたりはこそこそ話している。
「ちょっとふたりとも!」
「聞いてるわよ。うるさいわね」
 姉さんが逆ギレした。
「リオナの銃はともかく、マギーさんの銃の性能は当初の予定通りに戻してください。あれじゃ、狩猟に使えない」
「魔石が上等だったから余裕があったのよ。魔法付与を増やしてあげただけじゃない」
「試したんでしょ?」
「そうとも言う」
「マギーさんの気持ちにもなってくださいよ。せっかくのプレゼントが毒入りだったらどう思うか」
「高説はもっともだ。すまなかった。マギーにも謝っておこう」
 ヴァレンティーナ様は即刻、改修を引き受けてくれた。一体どうしたっていうんだ? 姉さんだけならともかく、ヴァレンティーナ様まで。いくら奔放だからといってこんなことをする人じゃないはずなのに。
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