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マイバイブルは『異世界召喚物語』 作者:ポモドーロ

第二章 カレイドスコープ

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フェンリル3

 最悪『魔弾』を放り込むしかないな。せめてやつの詳しい情報があれば。
「ちなみにどんな魔法で倒したんだ?」
「氷とか雷とか」
 今の自分には無理かな…… 正攻法しかないか。
 僕はリオナに隠れるように言うと、弓を取り出して『一撃必殺』スキルを試してみることにした。
 まだ豆粒ほどに小さい相手に向けて弓を引いた。
 発動する気配が一向にない。距離が遠いのか、風の魔法で射程と威力を増した状態を想定しても結果は変わらなかった。むしろ気が削がれるわ、魔力が安定しないわで、今の実力では状況は改善しないだろうと結論づけてやめた。
 弓が駄目なら、僕は剣のようにベルトの鞘に刺した銃を取り出した。まずは実体弾だ。それで駄目なら『魔弾』だ。どちらも『牢獄』の閉鎖空間のなかで試しただけだから、実際どうなるかわからない。
 銃は魔法で発砲するので弾以外、薬莢も火薬も必要ない。従って勇者がいた世界の銃より仕掛けは見た目同様至ってシンプルに出来ている。弾をスライド式の蓋から薬室に装填し、蓋をロックするだけだ。あとは魔力を込めれば魔石が反応して薬室内で小型の爆発(エクスプロージョン)を起こす。弾は爆風に押し出される仕組みだ。薬室のなかには何も残らないので次弾を装填するだけでいい。『魔弾』に至っては弾込めの必要すらない。
 僕は指の先ほどに大きくなった獣の影に銃口を向けた。
「あっ!」
 一瞬『一撃必殺』スキルが発動しかけた。
 僕は銃口を微妙に揺らした。まずは眉間、目、鼻、首、喉、心臓、どれも反応なし。
 フェンリルがこちらの気配に気付いたのか、一瞬こちらを向いた。じっと息を潜ませこちらを探っている。
 見つかった!
 フェンリルがこちらを威嚇するように吠えた。
 そのとき『一撃必殺』スキルが反応した!
 フェンリルがよだれを周囲にまき散らしながら猛烈な勢いで近づいてくる。
 後ろに隠れていたはずのリオナがいち早く近くの木の上に駆け登った。慣れた動作で腰の短剣を抜いて構えた。
 え? 二刀流?
 フェンリルがリオナの動きに反応して威嚇した。
 フェンリルの首がノックバックしたかと思うと、グラリと巨体が揺れた。
 パン! という乾いた音が辺りに響いた。反動がズシリと腕にのしかかる。
 魔力を込めすぎたか?
 地鳴りと土煙を上げてフェンリルが地面に崩れ落ちた。
 後方の茂みのなかの見学者から感嘆の声が上がった。
 リオナも目を丸くして動かなくなった獲物を見下ろしている。
 静けさが戻ると僕は次弾を装填しながら獲物に近づいた。『魔弾』はいつでも撃てるが、実弾は一発ごとに弾を込める必要がある。
 それは巨大な黄金色の狼だった。リオナを丸呑みにできるほど巨大な顎を持った魔物だった。
 外傷も見られず、まるで眠っているようだ。
 口のなかから脳に弾丸が貫通しそこで破裂したのだ。
 実弾はあちらの空間から銃と共に持ち込んだ十発のうちの一発だ。資料にあった長細い弾の形状に似せて見よう見まねで自作したものだ。向こうの世界で作ったものだから魔法創造物ということになるのか。魔法で簡単にできてしまったので材質まではわからないが、たぶんこっちの世界でも土魔法の錬成でできる気がする。
 確かに魔法をそのままぶつけた方が効率はよさそうだが、獲物を傷つけないこの方法は皮を回収する依頼などには最適だ。いずれ魔法の制御が普通に行えるようになれば無用になるのだろうが『一撃必殺』スキルとの相性はいい。詠唱がいらないのもアドバンテージだ。
「すごいです。一撃です! さすがエルリンなのです。『魔弾』なのです」
『魔弾』ではありません。
 リオナが木の上から飛び降りてくる。身軽なやつだ。
「これどうすんの?」
 僕は当たり前の質問をする。でかすぎて運べないだろう。この場で皮を剥いで、解体か?
「たぶんレジーナお姉ちゃんがなんとかするはずです。魔法の袋持ってるから」
「魔法の袋?」
「なんでも入る不思議な袋です」
 勇者のあれか! 『どこでもなんとか』か! またすごい物持ってんな、姉さんは。オーパーツの類いだよな、確か。それとも『牢獄』スキルの応用か何かか?
 後日聞いたら、転移ゲートの応用だと言われた。得意先の解体屋に専用のスペースを借りていて、メモ書きといっしょに送りつけるらしい。面倒臭いことは自分ではしない姉らしい解決方法だが、大物狙いの冒険者たちにはこの方法が浸透していて、今ではスタンダードな手法になっているそうだ。解体屋はスペースを貸し出すことで契約料が入るし、出張も減るのでお互いに都合の良い手法なのだとか。ちなみに姉の契約料は売り上げの一割になっている。上得意なので相当広い占有スペースがあるらしい。
 ちなみにものは袋ではなく、袋のなかの転移結晶らしい。素手で持つには若干大きいので袋に入れて持ち歩いているだけなのだそうだ。
 それになかから容量以上の何かを取り出せるわけでもなく、あくまで一方通行なのだそうだ。リオナの勘違いである。
「ほっといていいなら先に進もう。あ、魔法の練習したいからもう少し弱そうなのでよろしく」

 この日、様々な属性を試した結果、できはともかく、風魔法と土魔法と氷魔法があると便利であることがわかった。雷魔法は見たことがないのでイメージできなかった。あとで誰かに教えて貰おう。火の魔法は森のなかなので自重した。水魔法は単に出番がなかった。
 森のなかでの僕の戦闘手法は氷魔法の氷槍(アイスジヤペリン)で遠距離攻撃、風魔法の風の刃(ウィンドカツター)で中近距離に対応するものになった。土魔法で防壁を造り、素早い敵には落とし穴で対応した。
 僕は生まれて初めて満足に魔法が使えたことが嬉しくて仕方がなかった。発動までにかかる時間はまだまだ短縮しなければならないが、煮炊きもできなかった自分には大進歩である。
 日も暮れかけ、撤収の合図を受けると、僕たちは合流して帰宅の途に就いた。
 意気揚々と凱旋している僕を指さして姉さんはこう言った。
「魔力無駄に使いすぎ。凍らせればそれで終りでしょうに。魔法使いなんだから、同じ魔法を使うにしろ、もっとバーンと派手にいきなさいよ。味方を鼓舞するためにも見た目は重要なのよ」と叱咤する。
 別に魔法使いになる気はないんですけど。
「ああ、なるほど」と感心して見せたら「最初だけだったわね」とがっかりされてしまった。
 一方、王女様一行は別の感想を抱いていた。
「まさか、基本属性は疎か、氷魔法までいきなり使いこなすとは。この姉にしてこの弟ということかしら。それに魔力が底なしってどういうこと? あれだけ多用しても平気なんて信じられない。回復薬飲んでなかったわよね?」だそうだ。
 ちなみにリオナはというと眠くなったらしく、僕の背中で寝息を立てている。
 どうやら気を張っていたのはリオナも同じだったらしい。
「地味すぎて眠くなったのね」
 リオナの頬を突きながら姉さんが僕をからかった。
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