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マイバイブルは『異世界召喚物語』 作者:ポモドーロ

第一章 マイバイブルは『異世界召喚物語』

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エルーダの迷宮14

 翌日、武具の店が開く時間を見計らって僕は勇んで出かけた。もちろん自前の装備は宿で留守番だ。
 店に着くと目当ての装備一式を着た自分を想像しながら店の主人に声をかけた。
 返ってきた言葉は「仕立てに一ヶ月かかるよ」というものだった。
 僕は膝から崩れ落ちそうになった。もう半月したらこの村を出て行くのだから、今から仕立てても間に合わないじゃないか。それなら麓の街で購入した方がいい。選べる店も多いだろうし、品数もきっと豊富だろう。
 僕は目的の装備一式をあきらめて、フード付きのローブマントを一着購入した。お粗末な装備を隠すためであるが、例の毒を浴びた一件もあり一着ぐらいあった方がよいと判断したためだ。鎧一式を買う分の浮いたお金で、少々値の張るいいものを気張って購入したのだった。
 マントは魔物の糸で編み込んだもので、耐火性と耐水性に特に優れたものだった。柔らかい肌触りなのに衝撃があると瞬間硬化する性質があるため、防御力も見た目以上に高かった。これ一枚で僕の自作の鎧の防御力と変わらぬ強さがあるのだから泣けてくる。
 そんなマントの唯一の欠点は糸が染め上げられないため、地の色しか出ないことだった。汚れを隠すためにも濃い色合いが望みだったのだが、らしくない明るいベージュ色になってしまったのだ。
 それでも金貨二百枚が懐に残った。こうなると資金を追加して、もうワンランク上の鎧がほしくなってしまう。
 幸か不幸か、教育担当のリカルドは週末まで不在だそうで、新しい依頼書が選ばれることはない。
 僕は残りの数日を地下蟹とウツボカズランを相手に過ごした。
 ウツボカズランの毒嚢の依頼は飽和状態で、一日一件あればマシという状況になってしまった。故に既にある在庫だけで事足りてしまうのだった。
 それでも狩りを続けたのは弓の修行と、毒薬の材料としても使用されるため他の街では入手困難な毒嚢をこの際手に入れてしまおうという思惑のためだ。もちろん暗殺者家業を始めるためではなく、狩りに使う毒矢や、解毒薬や麻酔用の材料にするために調達するのである。消費しきれずに腐る一方の毒嚢も精製して加工してしまえば長期保存ができるので、この際自作用にストックしておきたかったのだ。
 一方収入は専ら、水の魔石の依頼と蟹の脚頼みになっていた。こちらは需要が果てしなく、荒稼ぎはできたが、毒嚢の依頼に比べれば報酬はわずかなものだった。荷車に積み込む苦労がある分なおさら旨みのない仕事だった。
 新たに金貨百二十枚を稼ぎ出したが、正直同じ獲物ばかりであくびが出てしまう。
 スキルは『弓術(三)』『毒学(三)』が新たに増え、『兜割(二)』が『兜割(三)』に『体力強化(一)』が『体力強化(二)』にそれぞれ上がっていた。
『毒学』は『毒耐性』と『毒調合』をあわせた複合スキルのようだった。『毒耐性』があれば他は別にいらなかったのだが、持っていて損はないだろう。珍しいスキルである。


 次の週の頭、リカルドがようやく現れた。でも新たな依頼を選ぶことはなく、「迷宮地下へ降りる階段を見つけることをもって養成講座を修了とする」と宣言された。同時にひとりでは下の階に降りないようにとも釘を刺された。
 急にはしごを外されたようでなんとなく寂しくなったが、考えてみれば僕はもうレベル二十台。レベルだけで言えば新人とはもう呼べないレベルだった。知り合いというほど親しくはなく、業務上の知り合いでしかなかったリカルドではあったが、それでも会話できる人が減るのは寂しく思えた。
 麓の街アルガスに行けばきっと同年代の冒険者たちが大勢いるだろう。友だちを作ろう。もっといろんな人と会話しよう。リカルドのうしろ姿を見ながら僕はそう心に決めた。
 とはいえ、人の心は天の邪鬼である。高尚な願いがある一方、怠惰な心も見え隠れする。
「お金にならないならさっさと終わらせてしまおう」
 人とは得てしてそういうものである。
 お題を受けて最初に考えたことはそれだった。マップを購入してズルしてしまおうと冒険者ギルドの販売コーナーに寄ったら、『エルーダ迷宮洞窟マップ・前巻』一層から二十五層までのマップ集が金貨百枚で販売されていた。バラ売りはしないという。ちなみに下巻は金貨三百枚だった。命がけで収集した情報が安くないのはわかるが、法外ではないだろうか? 
 僕の顔色を察した店員が「罠の位置、隠し通路、出現するモンスターの種類、生息エリア、アドバイスなどが網羅された総合情報マップ集になっていますからね、命の値段としては安いくらいですよ」と諭してきた。「もっともパーティーで購入するものですからね。個人で買うとなれば、高く感じるかも知れませんね」と二の句を告げて笑った。
 要するにこれが高いと感じる程度の冒険者には必要のないものだというわけだ。


 僕は地下への階段を見つけるため早速探索を開始した。既に地下蟹とウツボカズランのエリアで一階部分の半分の探索は終わっている。残り半分に階段はあるはずだ。
 とはいえ、まずは蟹とウツボカズランのエリアから始める。記憶と照らし合わせながら抜けはないか確認も兼ねて調べることにした。歩幅を基準に部屋の大きさまですべて測りながらメモを取って進んだ。
 半分のエリアの探索が終わり、外に出たときにはもう日が暮れていて、月も出ていた。本命の未知のエリア探索は明日にして、急いで宿に駆け戻った。夕飯を食いっぱぐれてしまったら泣くに泣けないのである。
 スキルの取得タイミングにミスが見つかり、第七話の表記を修正しました。
 →「『調合(五)』『採集(五)』」
 →「『調合』は、幼い頃から今までの経験値が一気に入ってきたような感じだった。『認識』スキルを得てから初めて調合したことで、スキルが僕の熟練度を過去にさかのぼって読み取ってくれたようだ。」
 以上の文を加筆しました。
 採取と、調合をしているシーンが以前にあるにもかかわらず確認シーンで表記が抜けていました。お手数ですが改めて確認してもらえると幸いです。
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