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ストレイ・ワーカー 作者:新殿 翔
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7-23


 ミノタウロスの突進を避ける。

 すれ違いざま、その顔面に魔力カートリッジを投げつける。

 爆発。

 だが……それをさして気にとめた様子もなく、勢いそのままにミノタウロスは近くの塀を突き破って民家の中に消えて行った。

 その民家が一気に炎に包まれる。


「……うーわ」


 凄い威力。

 あれくらったら、ひとたまりもないな。

 想いながら、腰の後ろのホルダーにさげていた魔力射出型のマシンガンを手に取る。

 マギでの戦争で動作不良を起こしたものではない。最新試作品だ。

 魔力弾丸形成効率、連射性能、弾速をはじめ、使用するにおける安定性能が向上しているらしい。

 それを両手に一つずつ構える。

 銃口を向けるのは、燃え落ちる民家の中から現れるミノタウロス。


「明彦。いける?」
「おう。支援頼むぜ」
「うん」


 明彦が刀を構え、ミノタウロスに向かって飛び出した。

 ミノタウロスがそれに反応して、斧を振り下ろす。

 明彦が右に跳んだ。

 斧はそのまま地面を砕き……巨大な火柱を生み出す。


「どこまでも炎が大好きだなこの野郎!」


 明彦がミノタウロスの太い足に向かって刀を振るう。

 ばちん、と。

 電火が散り……けれどミノタウロスに傷は一筋すらなかった。


「やっぱ、堅ぇか」


 ミノタウロスの瞳が明彦を睨みつける。


「おっ、と」


 見かけによらず素早い動きで、ミノタウロスは斧を横薙ぎに振るう。

 それを、宙に飛び上って明彦は回避してみせた。

 宙を飛びながら、明彦は刀をミノタウロスの頭に生える角にはしらせた。

 まるで金属と金属がぶつかったかのような音で、刀は弾かれる。

 明彦が地面に着地した。

 そこにすかさず、ミノタウロスが突進しようとして……私の弾幕がそれを邪魔する。

 無数の魔力弾が、ミノタウロスの顔面を打ちつける。

 そのことごとくが霧散してしまう。

 おそらくは、ミノタウロスは身体に濃密な魔力の鎧を纏っているのだろう。

 なんとも厄介極まりないことだ。

 だがまあ、こんなダメージは見込めない攻撃でも、視界を塞ぐことくらいは出来る。

 煩わしそうに、ミノタウロスが斧を振るい、魔力弾を掻き消す。

 その際に生まれた熱風が、私の身体を後ろに飛ばした。

 なんて風圧……!

 驚きながら、近くの電柱に靴の裏をつけて、そこから地面に一回転しながら降りる。

 こういう軽業師じみた動きにも、我ながら大分慣れて来たものだと思う。

 臣護や悠希や、明彦に叩き込まれたおかげだろう。

 ……うん、まあ厳しかったけど、楽しかったなあ。

 SWとしてだけじゃない。

 一人の女の子としてもさ。

 アースに来てからは、すごく楽しかった。

 だからこそ……許せない。

 アースを、沢山の思い出があるこの街を、こんなにされたことが。

 悠希を、傷つけられたことが。

 悪いけど、ぶつけさせてもらうよ。

 目の前にいるミノタウロスを睨みつける。


「この世界に来たこと。それが、貴方達の不幸だ」


 マシンガンが形状を少し変える。

 銃身の下部から、杭のような突起が飛び出した。

 それを中心に、銃身のところどころのフレームがスライドしたり開口したりと、変形していく。

 んー、こっちのモードの出力も上がってるのかな。

 右手のマシンガンをミノタウロスに向ける。

 そして……杭が煌めいた。

 かと思った次の瞬間、杭から放たれた魔力の槍が、ミノタウロスの胴のど真ん中に突き刺さる。

 それはそのままミノタウロスの身体を数センチ後ろに押しこみ……そうして魔力の鎧を貫くことは出来ずに、砕けた。

 困った。これ、かなり高火力なはずだけど……。


「くらえっ!」


 明彦が背中からミノタウロスを斬りつける。

 連続十二の、怒涛の斬撃。

 しかし……それすらミノタウロスはびくともしない。


「くそ、これ……どうしたらいいんだよ」
「さあ……」


 訊かれても、答えられるわけがない。

 その時、ミノタウロスが動く。

 その大きな口が開いた。

 そして……咆哮。

 鼓膜を直接引っかかれるような激痛が耳の奥に生まれるほどの馬鹿げた音量。

 三半規管が軽くふっとぶ。

 そんな中。

 業火の斧が、目の前で振りあげられた。



 巨人の手から放たれる揺らめきを全力で避ける。

 はるか後方で、いくつかのビルが崩れ落ちる音が聞こえた。

 あの攻撃には、絶対に中ることは出来ない。

 とにかく、回避。

 その中で、巨人を倒す術を見つけなくてはいけない。

 だが、どうする?

 自分の最大の攻撃を無力化された上で、どんな手を打てばいいのだろうか。

 なかなか絶望的な状況だ。

 だが……決して、諦めの影は私の内にはない。

 何故なら……、


「もう、潰すと決めたのよ」


 そう。

 佳耶を傷つけた全てを、私は許さない。

 どろりとした怒りが、胸の奥で流動している。

 巨人の守りは堅い。

 ならばどうするか。

 ……答えは、簡単だった。

 つまり、シンプルなこと。

 堅いなら、砕けるまで攻撃し続ければいい。

 他に手段があるわけでもないし。

 刀に魔力を集める。

 さて……やろう。


「――天地悉く、――」


 加速魔術で、巨人の目の前に移動する。

 そうして、その腕の一本に向かって刀を振るった。


「――切り裂け!――」


 魔力刃が巨人の腕の根元を切りつける。

 が、あっさりと霧散させられた。

 それがどうした。

 大したことではない。

 そんなふうに自分を鼓舞して、私はさらに巨人に近づいた。

 危険ということは分かっている。

 だが、危険を冒すべき場面というものはある。

 巨人の首に、手を伸ばせば届くくらいの至近。

 私は、巨大な氷の塊を生み出すと、それを巨人の首へと叩きつけた。

 ばりん、と。

 氷が砕け散る。降り注ぐ砕氷の中、巨人は……首の筋一本すら傷つけた様子もなく、私を見下ろした。

 続けざまに、巨人の周囲に巨大な竜巻を発生させる。

 その竜巻から、無数の風の刃が撃ち出された。

 それもまた、やはり届かない。

 炎で拳を包んで、思いきり咽喉を殴りつけた。

 拳の炎は咽喉に触れる前にかき消えてしまったが、拳そのものは、しっかりと巨人の咽喉に当たった。

 魔術で威力のあがった拳は……巨人にとっては、蚊の一刺程度のものなのだろう。効果は見られない。

 この調子じゃ、巨人の守りを貫けるのは、いつになるのかしらね。

 それを考えると、深い溜息が零れた。

 巨人の手に魔力が集まり始めたのを感じて、私は即座に距離をとる。

 再三放たれた揺らめきを避ける。

 ジャケットの裾が少しだけ攻撃を掠めて、消し飛んだ。


「っ……」


 これは、もしかしたら何より私にあの攻撃が命中するほうが先にくるかもしれない。

 なんて不安が生まれる。



 その不安を打ち消すように。



 轟音。

 何事か、と。

 見れば、巨人の左肩になにかが当たっていた。

 弾丸だ。

 それも、生半可な大きさのものではない。

 その弾丸に、見覚えがある。

 あれは……。

 眼下に視線を向けた。

 私と巨人から少し離れた場所。

 そこに止まっていた。

 葬列車。

 能村姉弟だ。






うう、眠い。
どうして人間に睡眠が必要なのかしらねえ!
寝ないで生きていけたらなあ……いや無理だけどさ。
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