挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ストレイ・ワーカー 作者:新殿 翔
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

100/179

間章 SWの夏祭り!・九


 目を開けると、そこには天利の顔があった。

 ……?

 あれ、なんだこの状況。


「起きた?」
「……ん、ああ」


 状況を確認しよう。

 目の前に天利の顔がある。

 そして俺は横になっている。

 頭の後ろの柔らかな感触。

 この三点で答えはすぐに出た。


「何で俺、お前に膝枕なんてされてるんだ?」
「なんて、とは随分な言い草ね。もっと感謝して崇め奉る勢いでありがたがりなさいよ」
「……そうだな」
「その可哀そうな子を見る目をこっちに向けないでよ……いいわよ、感謝しなくていいわよ。だからその目、止めなさいよ」


 ふざけるのはこのくらいにして、身体を起こす。

 そうしているうちに、段々と記憶がはっきりしてきた。

 俺は、そうだ。天利達と夏祭りに来て……それで……ああ、ミスコンだ。

 ミスコンで……あれ?

 なんだっけ?

 まあそれはいい。徐々に思い出して行こう。

 今俺達がいるのは、どうやら休憩用の広場のようだった。そこには、ベンチが所せましと並べられていて、そのベンチのほとんどに誰かしら座っていた。休憩だけでこれだけの人数がいるのだから、やっぱりこの祭りの参加者はとんでもないんだな。

《門》を使って世界中から集まって来るわけだから、当然と言えば当然なわけだが。

 と、閑話休題にして。

 ベンチは三人が座れるくらいの大きさで、天利と、そして横になっていた俺で一つのベンチを占領していた。


「……で、俺、どうしてこんなところで寝てたんだ?」
「馬鹿、気絶してたのよ、あんた」
「気絶?」
「ええ」


 また、どうして俺が……。

 あ、いや、待てよ……。


「覚えてないの? ミスコンで、最後の方いきなりあんたが倒れたのよ。こう、バタンキューってな感じに。多分、会場の異様な雰囲気に当てられたんでしょうね」


 ……あー。

 思い出した。

 そうだそうだ。

 俺……正気を失ってたんだよな。

 ぶっちゃけ、どんなことを考えてあのミスコンを見ていたか、今となっては思い出せない。天利達のコスプレした姿とかははっきり覚えてるんだけど……何故だ?

 ……まあ、今となっては考えても意味のないことだな。


「ふうん……そうか」
「まったく、あんなの参加するんじゃなかったわ」
「自分から参加しておいてそれかよ」
「あれは……皆見にたぶらかされたのよ。騙されたのよ。詐欺られたのよ」
「なんだそれ」


 天利の変な言い分に、苦笑がもれた。


「それで、結果はどうなったんだよ?」


 気絶していたせいで俺はミスコンの結果を知らない。

 少なくとも最後の五人が上位五名だということくらいは分かっているけどな。言っちゃなんだが、他と天利達じゃレベルが違いすぎる。他がレベル低いんじゃなくて、こいつらがレベル高すぎるって話だけどな。


「……まあ、妥協するにしては、それなりのとこだったかなあ」
「妥協?」


 どういうことだ?

 天利は一位ではなかったのだろうか。


「いや……最終的に観客から気絶者が九割強も出ちゃって……あれって順位は観客の投票で決まるから、その投票が不可能な状況になっちゃったのよ」


 ということは……、


「まさか、勝者なし、か?」
「いや、それはさすがにマズいでしょ。参加者に対して。というかそんなことになったら今頃主催者は私達が血祭りに上げているわ」


 それもそうか。


「じゃあ、どうなったんだ?」
「賞品は上位五名まで用意してあったのよ。それで、上位五名は確実に決まっているから、って……私達に賞品だけ渡されて賞品は誰がどれをとるか、自分達で決めてくれ……だってさ。他の参加者もそれで文句ないみたい」
「……あー」


 それなら、まあ確かに妥当っちゃ妥当か。

 一応は、賞品も貰えたわけだし。


「じゃあ、どうやって分配したんだ?」
「とりあえず、私は優勝賞品以外興味なかったから、二位以下の賞品は他の四人に渡したわ。誰がどれを貰ったかは知らない」
「ん? じゃあお前が優勝賞品貰ったのか? 確か、ブラックスペースへの渡航許可証だろ?」
「……それがねー、麻述もすごい欲しがっててさあ……」


 少し落胆した様子を天利が見せる。


「あれ、全員で使うことにしたわ」
「全員?」
「そ。あっちのメンバー全員と、私達側のメンバー全員。これだけ言えば分かるでしょ?」


 ……つまり、仲良く遠足気分でブラックスペースに行く、と。

 それはまた……まあ、連中なら足手まといにはならないだろうけど……。


「ちなみに勝手にあんたの参加も決めたけど、よかったわよね?」
「まあ、ブラックスペースってなら喜んでついていくけどな」


 ブラックスペースは、面白いし。重力がなかったり、溶岩の雨が降ったり、すぐ発火する気体が空気中に多く含まれてたり……。

 この間いけるはずだったのも、許可証を天利にやっちまって、行けなかったしなあ。

 ……ん?

 天利、優勝賞品意外は興味なかった、って言ったよな。

 渡航許可証狙いだったのか?

 ということは……もしかして……。


「なあ、天利」
「なによ?」
「もしかして、渡航許可証を俺に返そうとか思ってなかったか?」
「――っ!」


 図星か。分かりやすい奴め。


「……ごめん。結局、とれなかった」
「馬鹿なやつ」


 謝る天利に、思わずそんな言葉が出た。


「馬鹿とまで言わなくたっていいじゃない」
「違う。そういう意味じゃない……許可証を貰ったとか、そんなつまらないことをいつまでも気にしてるな」
「は……?」
「あれは別に貸しでもなんでもない。くれてやったんだ。なんでそれを気にしてるんだ。本当に、馬鹿かお前は」


 ため息交じりに言うと、天利が不機嫌そうな顔をした。


「分かってるわよ、あんたがそう思ってることくらい。でも、私がなんだか嫌なんだもの」
「……だったら、もういい」
「え……?」
「今回のこの件でチャラにしてやるって言ってるんだ」


 一応、ブラックスペースにはいけるみたいだしな。


「……でも、他の人だってついてくるのよ?」
「気にしない」


 それに、天利が頑張ったのはよく分かっている。

 普通なら、こいつがあんなイベントに参加するわけがないんだ。

 それでも無理をして参加したんだ。十分すぎる。


「だから、これで今度こそ気にするな」
「……うん。ありがと」
「なんでお礼なんだよ……」
「いや、一応」
「意味がわからん」


 まったく……。


「そういえば、他の連中はどうしたんだ?」
「ああ、それなら、どっかそこら辺のベンチにいると思う。これだけ人がいるから、皆バラバラに席を探すしかなかったのよ」


 なるほどね。


「それじゃ、合流するか。いつまでも二人でいたって仕方がない」
「なにそれ。私と一緒にいるのが嫌みたいに聞こえるんだけど」
「そういうつもりじゃないさ」
「分かってるわよ。でも、そういう気遣いはしなさい、って言ってるの」
「俺に気遣いなんて向いてないことくらい知ってるだろ」
「それも分かってるわよ」


 天利が微苦笑する。


「そうかい」


 そんな軽口を交わしながら、立ち上がる。

 さて……他の連中はどこにいるか、これだけ人がいると探すのも面倒だな。


「ねえ、嶋搗?」
「ん?」


 ふと、天利が俺の前に立った。


「一つ訊きたいんだけどさ……」


 ちらちらと、視線を逸らしては合わせ、また逸らし、そして合わせ、そんなおかしな態度で、天利が俺を見る。


「ミスコン、もし票を入れるとしたら、誰にした?」


 ……なんでそんなことを聞くんだ。

 思ったが、なんとなくそれは言わなかった。

 でも、誰に、か……。


「お前だろ」


 小さく言う。

 ……ま、本人に直接「入れろ」とも言われてたしな。やっぱり、投票があったら天利に入れてたと思う。


「え……?」
「ほら、行くぞ」
「え、え? あ……ちょ、え? 嶋搗? 今、もう一度! ワンモア!」
「なんなんだよ……置いてくぞ」
「あ、待って! 嶋搗! 待ちなさいよ!」


 こうして。

 SWの夏祭りは、しばらく騒がしく続いた。



「なあなあ、シーマン」
「なんだよ?」
「これ見てこれ」
「……っ!!」
「この間の夏祭り時のミスコンでのアマリンのコスプレ写真セット」
「……隠し撮りか? あのイベント、撮影禁止だったろ」
「そこはほら、司会者の特権ですよ」
「……なにが目的だ」
「もちろん、旦那にこれをね、お譲りしようかと。もっとも、タダ、とはいきませんが……」
「言い値で買おう」
「まいどー!」

間章なのにメチャクチャ長かったな……。
とりあえず、これで今回の間章は終わりっ!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ