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VS
作:F



彼の逃走と彼女の追撃(1)


「ちょ、ちょっと落ち着きましょう奈々先輩っ」

「これが落ち着いていられるかーっ!!」

 昼休みという貴重な休み時間、僕は愛しの先輩から追われています。
 あっれーいつもと逆パターンだぞやっほい。
 いっそ先輩に飛びついちゃ…えるわけないじゃないですか!!今マジで怖いんですよ先輩。何片手にヤカン持ってるんですか殴る気まんまんですかちょっと!

 …あれ。
 そもそも、どうして僕は追われてるんだっけ?


-5分前-
 決戦の時が、きた。
 僕は、今まで背いてきたことを、真正面から向き合おうと決意したのです。

「…とかなんとか言っちゃって、さっさとお姉ちゃんを落としてくれればこんな面倒くさいことになんかなんなかったわけなの。わかる、天使くん?」

「…ちょ、ちょっと今かっこよく決めようとしていたのに実々ちゃん!」

「なぁにがかっこよくよ。
 30数回も告白し続けて振られてる男に言われたくないわ」

「…おいおい実々ちゃん、そりゃあコウちゃんが可哀相だぜ。
 あんなにも情熱的な告白を俺は見たことがないね!」

「うっさいわね、ボンクラ。
 そもそもなんであんたがここにいるのかが意味不明で理解不能なのだけど、オーケー?」

「それはホラ、俺はコウちゃんの親友だし当たり前だろ?…っていうか!実々ちゃん俺はボンクラじゃなくてたっつんだよ!?」

「フッ」

「…え、なに、今なんか俺笑われた?
 というか、なにその侮蔑入った笑いは!?」

「え、必死な姿がちょこっと哀れに思えただけだよ?」

「そこだけ疑問系かよ!!気になるじゃねえかー!ああでもその笑顔が可愛いぜこんちくしょー!!」

「ちょ、ちょっと落ち着こうよ二人ともっ、ね…って、あ!先輩」

 6月1日の昼休みの噴水前、の脇の茂みの中。
 どうしてこんなところにいるのかと言うと…。
 いつも通りに先輩へ愛の告白をしようと待ち構えていたら、やけにテンションの高い先輩の妹兼クラスメイトの実々ちゃんとたっつんに両脇から捕まえられ、気づいたらここにいた、のかな?…思いっきり引き摺られたので記憶が曖昧です。。

 と、ともかく、せっかくの先輩への告白タイムが失われると半ば怒って二人に抗議しようとしたら、実々ちゃんの「今日こそはお姉ちゃんのハートをがっちりつかめるいい案があるんだけどな〜」の一言で居座ることに。

「……でも本当なの実々ちゃん。
 先輩もうこっちに近づいて来てるよ!?ぼ、僕普通に告白すればいいの!?」

「落ち着け天使くん。
 まだ我々の姿は見えてないはずなのだよ。」

「…なんかのってきてるなぁ」

「おだまりボンクラ。
 …いい、天使くん。今は12時50分。
 お姉ちゃんには13時に噴水前で待っててって言ってあるからまだ時間はあるのよ。
 で、ココからが本題。
 …その前に、あなたホントにお姉ちゃんのことが好き?」

「好きです」

「どんなことがあっても?」

「どんなことがあっても」

「どんな困難が待ち受けようとも?」

「ど、どんとこいです」

「ホントに?」

「はい」

 ……え、な、なんですかこの問答は。
 僕、本当に実々ちゃん信じてもいい、んだよ、ね……?

「…まあ、今までのキミの実績を見てればわかるんだけどね。一応よ。
 今からやることは、天使くん崇拝者がいなくなるようなものだし。
 …この案をやれば、もうチヤホヤされなくなっちゃうかもよ」

「実々ちゃん。
 僕は、先輩の心さえ僕に向いてくれるなら、悪いけど他の女の子たちは眼中ないんだ。
 だから…だから、」

「あーっ!!
 もうわかったよコウちゃん。どんなことが起こっても俺はお前の味方だ、親友だ!!」

「たっつん……」

「はいはい、三文芝居は置いといて」

「ひでえ……」

「うっさい。
 ま、案って言っても簡単なことよ。いつもの告白をちょこっとアレンジするだけだし。
 天使くん、キミいつも告白するとき『好きです』って言ってプレゼントの類を渡すわよね」

「う、うん」

「その台詞を言い終わった後の”プレゼント”をキスにすればイチコロだよ、きっと」

「は」

「え」

「え、えええええぇぇぇぇぇえええ!?」

 あっバカってたっつんの焦った声が聞こえたような気がしたけど、それどころじゃなかった。叫びましたよ、思い切り。
 だだだだって、いきなりちゅ、ちゅーですかっ!?ちょ、ちょっとまって僕と先輩はまだ付き合ってないわけで、でも一番いい案って実々ちゃん言ってるけどでも僕まだ心の準備がというよりまだ僕付き合ってないわけで……。

 ……はっ。
 し、しまった。大声で叫んでしまいました。と、いうことは。

 思わず噴水を見やる。
 せ、せせせ先輩こっち見てるーーー!!ちょ、こ、こっち来ちゃいますよ!!

「あわてないの天使くん。
 いい、公衆の面前で堂々とべろちゅーでもかましてやれば、さすがの取り巻きたちも自然と離れていくって。それにお姉ちゃんはああ見えてロマンチストだから、キスが一番弱いのよっ」

「ちょっとまって、さっきまでキスって…べろ?」

「とりあえずキスよキス!!
 あっもうお姉ちゃん来ちゃったからあたしらは退散するわ。アディオス!」

 そんな大胆なことを言って去らないでくださいー!!
 たっつんも、置いていかないでー!!走っていかないでー!!
 …あ、先輩が目の前に。


…お久しぶりの投稿です。
少し長くなったのでひとまず区切ります。






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